【愛すべき福岡の名店】つくねをつまみに明るいうちから熱燗をやる、昼飲みストの聖地
地下鉄藤崎駅から歩いて5分ほどの場所にある「捏製作所」。住宅街の中にありながら、朝11時に白い暖簾が掲げられると、近隣はもとより遠方からも日本酒好きが集まってくる"昼飲みスト”たちの聖地です。
店主の菅原淳思さん夫妻は、2008年に京都で同店を創業。珍しいつくね料理の専門店として人気を博します。しかし、「いつか故郷の福岡で店を開きたい」という思いから京都の店を譲って福岡に移転し、2015年に現在の場所でオープンしました。当初は16時開店の夜営業でしたがコロナ禍などもあり、4年前から昼飲み酒場に業態を変更。基本は11時から19時30分まで(最終入店17時30分)の完全予約制で営業しています。
いまだ残暑厳しい折、ジリジリと陽射しが照りつける真っ昼間から多少の罪悪感を感じつつ店に入ると、カウンターには一升瓶がズラリ。すべて米、米麹、水だけで造られた純米酒で、菅原さん自ら蔵元に足を運んで厳選した銘柄だけを置いています。「なかには酒造りをお手伝いしている蔵もあります」というように、蔵元との信頼関係があってこそのセレクトで、飲み方は70度近くまで熱した燗酒がオススメ。まだ汗が引かぬうちから熱々をクイッと飲るのも、なかなか乙なものです。
店名が示すようにつくね料理が名物ですが、まずは前菜的に酒のアテになる一品料理から注文しました。1品目は「オムレツ成清海苔のソース」(710円)で、ふんわりと円形に焼いたオムレツに、有明海産秋芽一番摘みの成清海苔を佃煮風にしたソースをかけたもの。鼻孔にプウンと磯の香りが漂い、純米酒の旨味をより引き立ててくれるようです。
お次は「海老油の蒸し麻婆春雨」(860円)で、これまた干しエビを使った自家製海老油の香りが堪りません。中央に振りかけられた七味唐辛子が味変のアクセントになり、ピリッといい仕事をしてくれています。
そして、いよいよ主役の登場です。つくねは週替わりで毎日5種類が用意されており、この日は写真左から「かぼすとチーズ」「空心菜とザーサイ」「むかごと自家製辣油」「玉葱鞠と生姜」「成清海苔とケイパー」というラインアップ。3種盛り合わせ(1人前540円)、5種盛り合わせ(1人前890円)のいずれかでオーダーできます。
基本は鶏モモの挽肉に2種類の食材を合わせて蒸したもので、秀逸なのはその組み合わせの妙。それぞれの食材の持ち味、食感、香りの相乗効果で、1+1=2以上の旨さにアップグレードしています。蒸したてをハフハフいいながら口にすれば、酒が進んで仕方ありません。
さらにシメには、菅原さんが毎日手打ちしている細麺、太麺の自家製麺メニューが、汁なし、汁あり合わせて10種類以上用意されています。写真は「生からすみ和え麺」(1,300円)で、フレッシュな長崎産ボラの卵と太麺をシンプルに和えた一皿。一般的な干しからすみよりも香りが鮮烈で、シメといいながらさらに酒が飲みたくなるのは反則ですね。
定休日の木曜以外は毎朝11時からのオープンですが、毎週金曜日は「夜つくねの日」と題して、17時から21時までの夜営業を行っています(最終入店19時)。昼飲みしたくてもなかなか都合がつかないという人は、狙い目ですよ。
捏製作所(つくねせいさくしょ)
福岡市早良区藤崎1-14-5 大産藤崎コーポ1F
092-833-5666(完全予約制)
11:00〜最終入店17:30(水曜は〜最終入店16:00、金曜は17:00〜最終入店19:00)