【静岡県知事選挙】候補者6人乱立 300万円没収のリスク以上に出馬するメリット
■5月26日投票 静岡県知事選に過去最多6人立候補
川勝平太知事の辞職に伴う静岡県知事選挙は5月26日が投票日となっている。告示日直前に立候補者が相次ぎ、候補者は過去最多の6人と乱立。得票が一定数に届かなければ供託金の300万円が没収されるリスクがあっても、出馬するメリットを指摘する声もある。
静岡県知事選挙には、いずれも新人で届け出順に以下の6人が立候補している。これまで最多だった2001年の5人を上回った。
・諸派/横山正文さん(56)
・共産党/森大介さん(55)
・無所属/鈴木康友さん(66)立憲・国民推薦
・無所属/大村慎一さん(60)自民推薦
・無所属/村上猛さん(73)
・無所属/濱中都己さん(62)
選挙に立候補するためには、法務局に納める現金「供託金」が必要になる。金額は選挙によって異なり、衆院選や参院選の選挙区は300万円、比例は600万円。政令市長選は240万円、県議選は60万円、町村議選は15万円などとなっている。
■知事選挙の供託金は300万円 有効得票の10分の1未満で没収
供託金には選挙で当選する意思がなく、名前を売るために出馬する人を防ぐ目的がある。一定の得票数に届かなかった場合、全額が没収されて国や都道府県、市区町村に納められる。没収を回避できる得票数は選挙によって決まっている。
県知事選の供託金は300万円と決して安い金額ではない。有効投票総数を10で割った数より得票が少なかった場合、300万円の供託金は没収される。知名度の高くない候補者にとっては高いハードルとなる。
選挙では各所に掲示板が設置され、候補者のポスターが貼られる。ただ、今回の知事選では候補者6人全員のポスターがそろっていない掲示板ばかり。ポスターは各陣営が手作業で貼るため、人手が足りなければ、静岡県内全域を選挙区とする知事選で全ての掲示板にポスターを貼るのは難しい。
その他にも、選挙カーでの遊説やビラの配布など、選挙には人手が必要になる。最近はSNSでの情報発信が増えているものの、投票率の高い高齢世代に訴えを届けるには人の数がものを言う面もある。
■選挙での訴えがきっかけ 落選後ビジネスにつながった例も
人手不足で満足な選挙活動ができず、供託金を没収されるリスクがあっても、なぜ立候補するのか。お金の問題ではなく、地域や社会の仕組みを変えたい思いがあるのは前提だが、長年選挙に関わっている県内関係者は「落選してもメリットがある」と指摘する。
「誤解を恐れずに言えば、本気で当選したいのであれば選挙はお金がかかります。ただ、選挙運動用のビラやポスターは公費を活用できるため、最小限の活動で済ませて自己負担を抑えることもできます。立候補すればマスコミが取り上げてくれるので、お金をかけずにPRできます。顔や名前、自身の考えを広めてもらうにはそれなりの金額がかかりますが、選挙なら広告宣伝費をかけずに新聞やテレビで流れますから」
静岡県内全域に情報発信して知名度を上げるには、手間も費用もかかる。本来はマスコミに取り上げてもらえないような立場や主張であっても、選挙になれば話は別。前出の関係者は「考え方次第では、供託金が没収されてもお釣りがくるくらいのメリットがある」と話す。
実際、過去には地方議員の選挙に立候補して落選した経営者が供託金以上の収穫を得た事例を明かす。この候補者は浜岡原発の再稼働反対を声高に訴えた。資金が潤沢ではなかったため、選挙活動に派手さはなかった。結果的に議員にはなれなかったが、選挙後、原発に対する考え方に賛同した経営者の1人からビジネスの話を持ち掛けられた。候補者は落選後に経営者に戻り、供託金の何倍もの金額の利益を得る事業を進めたという。
この候補者は売名で選挙に立候補したわけではないだろう。選挙後もにらんで出馬していたのかは本人しか分からない。ただ、通常では得られないチャンスが選挙にあることも否定できない。
(SHIZUOKA Life編集部)