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【音楽の力で心と体を元気に】 家族ではじめる高齢者の音楽療法

「みんなの介護」ニュース

藤野 雅一

高齢者の音楽療法って何?音楽の力で心と体を元気にする方法

音楽で笑顔になれる!音楽療法でできること

「最近、お母さんの表情が少し硬くなってきたな…」「お父さんとの会話が減ってきた…」 こうした高齢者のご家族の様子に心配を抱えながら、どのように接すれば良いのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 普段は短い言葉しか話さなくなってしまった方でも、思い出の曲をきっかけにすれば、自然と会話が生まれやすくなります。

音楽療法は、音楽を通じて心と体の健康をサポートする方法です。

特別な才能や音楽の知識は必要なく、普段の生活の中で音楽を楽しみながら、自然と心身をリフレッシュできることが大きな特徴です。

なつかしい曲で思い出がよみがえる!音楽療法で得られる3つの効果

音楽療法は、「回想法」(昔の思い出を振り返ることで心身の活性化を促す方法)と組み合わせることで、心身への様々な効果が期待できます。特に以下の3つの効果が注目されています。

記憶と感情の活性化
人生の重要な場面の再体験
家族との絆の深まり

まず、記憶と感情を活性化する効果です。懐かしい曲が流れると、その時代の記憶が自然とよみがえってきます。学生時代を共に過ごした友人たちとの思い出、放課後に口ずさんだ歌の数々、楽しかった学校生活の様子など。単なる出来事の記憶だけでなく、その時に感じた喜びや楽しさといった感情まで、音楽は鮮やかに呼び覚ましてくれます。

次に、人生の重要な場面を再び体験できる効果があります。人生の節目で耳にした曲には、特別な思い出が刻まれているものです。結婚式で流れた曲、大切な人との出会いの時に聴いていた曲など、その時々の輝かしい瞬間が、音楽とともによみがえってきます。このような大切な記憶の再体験は、その方の人生の充実感や自尊心を高めることにもつながります。

そして、家族との絆がより深まっていくのも、音楽の大きな効果の一つです。子育ての時期に聴いていた歌や、運動会で演奏された曲は、家族との温かな思い出を呼び起こしてくれます。「この曲、よく一緒に歌ったよね」「あの時の運動会、楽しかったわ」といった会話が自然と生まれ、それを聞いた家族から「そんな素敵な思い出があったんですね」「その話、初めて聞きました」という反応が返ってきます。このように音楽は、世代を超えた心の交流を生み出すきっかけとなるのです。

さらに、音楽には心身をリラックスさせ、ストレスを軽減する効果もあります。穏やかな曲を聴くことで、自然と肩の力が抜け、呼吸が整い、心地よい気分になれます。特に、思い出の曲は安心感をもたらし、より深いリラクゼーション効果が期待できます。

また、音楽を聴き、歌い、体を動かすことは、脳を活性化する効果があります。メロディーを追い、歌詞を思い出し、リズムを取る―これらの活動は、脳の様々な部分を刺激します。特に懐かしい曲は、記憶を呼び起こすことで、より広い範囲の脳の活性化につながります。

そして、音楽には気持ちを表現させる力もあります。好きな曲を聴いて微笑んだり、リズムに合わせて自然と体を動かしたり、歌詞に共感して涙ぐんだり。こうした素直な感情表現は、心の健康にとても大切です。

このように音楽は、記憶を呼び覚まし、感情を豊かにし、家族との絆を深めるだけでなく、心身の健康にも大きな効果をもたらします。大切なのは、急かさずゆっくりと、その方の思い出に寄り添いながら、温かな気持ちで一緒に過ごす時間を作ることです。

音楽療法を始めるために知っておきたいこと

お家で音楽療法を始めるとき、大切にしたいポイントが3つあります。

完璧を目指さない
焦らない、急がない
その日の体調に合わせる

それぞれのポイントについて詳しくご説明していきましょう。

まずは、「完璧を目指さない」ことが大切です。音楽療法は、音楽の技術を競うものではありません。「音痴だから」「楽器が弾けないから」と躊躇する必要はまったくありません。大切なのは、音楽を通じて心地よい時間を共有すること。お気に入りの曲を一緒に聴くだけでも、テレビから流れる音楽に合わせて軽く手拍子を打つだけでも、十分な効果が期待できます。

次に、「焦らない、急がない」という姿勢が重要です。「毎日30分は長続きしないかも…」「すぐに効果が出ないと困るな」そんな不安を持つ方も多いと思います。でも、音楽療法は、短い時間から始めても大丈夫。朝のラジオ体操で音楽を流す3分間、食事の準備中に一緒に歌を口ずさむ5分間。大切なのは長さではなく、続けること。1日5分でも、毎日の習慣にしていけば、自然と効果は表れてきます。

そして、「その日の体調に合わせる」ことも忘れずに。お年寄りの方は、日によって体調や気分の変化が大きいものです。「今日は元気だから、少し長めに音楽を楽しもう」「今日は疲れているみたいだから、静かな曲を短めに」というように、柔軟に対応していくことが大切です。その日の様子を見ながら、楽しめる範囲で進めていきましょう。

初めは週に2-3回、5分程度から始めるのがおすすめです。「今日はうまくいかなかった」「反応が薄かった」と落ち込むこともあるかもしれません。でも、そんな日があっても大丈夫。肩の力を抜いて、気軽な気持ちで始められることが、長く続けられるコツです。

はじめての音楽療法!準備と基本的な進め方

音楽療法を始める前の準備と環境づくり

音楽療法は、身近なスマートフォンやタブレットを活用することで、ご家庭でも気軽に始めることができます。快適に音楽を楽しむための環境づくりについて、いくつかのポイントをご紹介しましょう。

まずは機器の準備から始めましょう。スマートフォンやタブレットを使う際は、専用のスタンドを用意すると画面が見やすく、操作もしやすくなります。特にタブレットは画面が大きいため、写真や動画も見やすく、より豊かな音楽体験を提供してくれます。また、小さなワイヤレススピーカーを接続することで、よりクリアな音質で音楽を楽しむことができます。

音楽を楽しむ場所選びも重要な要素です。リビングのソファやダイニングテーブルの椅子など、普段からくつろいで過ごせる場所を選びましょう。背もたれのある安定した椅子に、座り心地の良いクッションを組み合わせることで、より快適な空間が生まれます。お部屋の明るさは、まぶしすぎない程度の自然光が理想的ですが、カーテンやブラインドで光を調整したり、穏やかな間接照明を活用したりすることで、より落ち着いた雰囲気を作ることができます。

また、音楽を楽しむ時間をより豊かなものにするために、お茶やお水などを手の届く場所に用意しておくと良いでしょう。音楽を聴きながらゆっくりとお茶を飲む時間は、心が自然と和むひとときとなります。

基本的な音楽の楽しみ方

音楽療法の基本的な進め方をご紹介します。はじめは気負わず、お気に入りの曲や懐かしい曲を選んで、ただ一緒に聴くところから始めましょう。曲の選び方に悩んだときは、その日の天気や気分、思い出の季節などから選んでみるのも良いでしょう。

例えば、テーブルの上で指先がそっとリズムを刻んだり、椅子に座ったまま足でテンポを取ったり、曲調に合わせて自然と手拍子が出たり。体を大きく動かすことが難しい方でも、指先や手首の穏やかな動きだけで十分に音楽を感じることができます。

より音楽を身近に感じていただくために、歌詞カードを用意するのも効果的です。お気に入りの曲の歌詞を大きな文字で印刷しておくと、目で追いながら自然と口ずさむことができます。歌詞を見ることで、懐かしい情景が思い浮かんだり、当時の思い出が蘇ったり。声を出して歌うのが難しい場合でも、歌詞を目で追いながらハミングをしたり、メロディーに合わせて小さく手拍子を打ったりするだけでも、音楽を楽しむことができます。

身近な道具で楽しむ音楽のひととき

座ったままでできる音楽レクリエーションには、様々なバリエーションがあります。

例えば、柔らかな手編みのショールを肩に掛け、音楽に合わせてゆったりと肩を動かすのも心地よい方法です。ショールの端を持って、ゆるやかな8の字を描くように動かすと、肩周りの血行が促されます。

お手持ちのストールやマフラーを使って、波のような動きを作るのも心地よい方法です。膝の上で生地を広げ、端を持って小さな波を作ったり、手首を使って風になびくような動きを楽しんだりできます。これは、手首や指先の細かな動きを促す効果もあります。

身近な日用品として、ハンカチを音楽療法で活用することも効果的です。四隅をそれぞれ持ち、音楽に合わせて優しく折ったり広げたりします。まるで花が開くような動きを楽しむことができ、指先の繊細な動きにも良い刺激となります。

静かな音楽とともに、ゆったりとした時間を過ごすことで、心身ともにリラックスする効果が期待できます。

野球やゴルフなど、かつての趣味に関連した動作を取り入れるのも良いでしょう。お気に入りの曲を聴きながら、バットやクラブを握っていた時の感覚を思い出すような軽いストレッチを行ったり、また、新聞を広げて音楽を聴きながら、興味のある記事をゆっくりとチェックする時間を持ったりするのも、落ち着いた活動となります。

生活に音楽を取り入れるコツとアイデア

1日の生活リズムに合わせた音楽の取り入れ方

音楽療法を毎日の生活に取り入れるコツは、日常の動作や時間帯と結びつけることです。

朝は、朝食の準備をしながら、あるいは着替えをする時間に、軽やかなメロディーを流すと、自然と体が目覚めていきます。ラジオ体操の時間に合わせて音楽を取り入れるのも良いでしょう。

午前中の活動時間には、適度なテンポの曲を選び、掃除や洗濯といった家事の時間に心地よい音楽を流すと、作業が楽しくなります。リズミカルな曲調は、体を自然に動かす後押しをしてくれます。

お昼時は、食欲を促すような明るい曲調の音楽を。食事の準備をしながら、あるいは食後のティータイムに、ゆったりとした音楽を楽しむのも素敵です。

午後の時間帯は、その日の体調や予定に合わせて選曲しましょう。買い物に出かける前には軽やかな曲を、お昼寝の前にはゆったりとした曲を、というように場面に応じて使い分けます。

夕方から夜にかけては、徐々に落ち着いた曲調の音楽を選びます。夕食の支度をしながら、一日の疲れを癒すような穏やかな曲を。入浴前後には、リラックスできる静かな曲を流すと、心身ともにゆったりとした時間が過ごせます。

季節の行事や思い出と結びつける音楽の選び方

季節の移り変わりと音楽を結びつけることで、より豊かな時間を過ごすことができます。

季節ごとのおすすめの曲リスト

春の小川
朧月夜
長崎は今日も雨だった
春が来た
さくら貝の歌
古都の春

春は、桜や新生活をテーマにした明るい曲が心を和ませてくれます。新緑の季節には、爽やかな曲調の音楽が心地よく感じられます。特に、入学や卒業シーズンの思い出の曲は、新たな門出の記憶と共に心に残っているものです。

ふるさと
海の見える街
真夏の果実
波止場町
北国の春
浜辺の歌

夏には、風鈴や波の音を想起させるような涼やかな曲を選びましょう。夏祭りの季節には、お祭りの賑わいを感じられる伝統的な音楽も楽しいものです。七夕や海、ふるさとを題材にした曲は、夏の思い出を優しく呼び覚ましてくれます。

村祭り
通りゃんせ
秋冷
秋の雨
長良川艶歌

秋は、収穫や実りをテーマにした曲、紅葉や澄んだ空を連想させる楽曲を楽しみましょう。運動会のシーズンには、思い出の行進曲を聴くのもいいでしょう。秋の風物詩を歌った曲は、懐かしい情景を鮮やかに思い起こさせてくれます。

冬景色
北国の冬
冬の花火
おんな雪
津軽海峡冬景色

冬は、静けさや温もりを感じられる曲を選びましょう。クリスマスや年末年始には、それぞれの行事にまつわる思い出の曲を。冬の夜長には、しっとりとした曲調の音楽とともに、ゆっくりとした時間を過ごすのも素敵です。

また、唱歌や演歌以外にも、クラシックやジャズなど、様々なジャンルの音楽を取り入れてみるのも素敵です。春にはモーツァルトの明るく軽やかな曲を、夏の午後にはジャズの爽やかな調べを、秋の夕暮れにはショパンの叙情的な曲を、冬の夜にはバッハの荘厳な音楽を―季節や時間帯に合わせて、様々な音楽との出会いを楽しんでみましょう。

クラシック音楽は、歌詞がないものが多いため、会話を楽しみながらBGMとして取り入れやすいのも特徴です。また、ジャズのスタンダードナンバーには、青春時代に一世を風靡した曲のアレンジも多く、新鮮な気持ちで懐かしい曲に出会えるかもしれません。

音楽療法を続けるためのヒントとコツ

音楽療法を続けていく中で、時には「今日は興味を示してくれない」「疲れているみたい」といった場面に出会うこともあります。そんなときは、ゆっくりと様子を見ながら、その日の体調や気分に合わせて柔軟に対応することが大切です。

気持ちが乗り気でないときは、好きな話題から会話を始めてみましょう。テレビの音楽番組や新聞の芸能欄を一緒にご覧になるのもよいきっかけとなります。そこから自然に「そういえば、あの頃よく聴いた曲があったわね」といった流れで音楽を取り入れると、スムーズです。

疲れているときは、音楽を聴くだけにとどめるのも一つの方法です。また、短い時間でも継続することが大切です。5分でも10分でも、毎日少しずつ続けることで、徐々に効果が表れてきます。

音楽には言葉以上に心に響く力があります。歌声に耳を傾け、リズムを共有する時間は、きっとかけがえのない思い出となっていくはずです。音楽のある暮らしを楽しんでみましょう。

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