中島裕翔「それぞれのキャラクターの思いを受け取っていただけたら嬉しい」~舞台『みんな鳥になって』が開幕
2025年6月28日(土)世田谷パブリックシアターにて、舞台『みんな鳥になって』が開幕した。舞台写真とトレーラー、演出・キャストの開幕コメントが公開された。
世田谷パブリックシアターではこれまで、ワジディ・ムワワドの戯曲『炎 アンサンディ』(2014/17)、『岸 リトラル』(2017 リーディング/2018)、『森 フォレ』(2021)を、上村聡史による演出で上演を重ねてきた。本公演はその第4弾となる。
作家ワジディ・ムワワドは、1975年のレバノン内戦を逃れ、家族と共に8歳でフランスへ亡命しますが、その後、滞在許可証の更新が拒否されたため、フランスを出てカナダのケベック州へ移住。国立演劇学校卒業後はカナダ国内で創作活動を続けていたが、彼の他に類を見ない力強い作品群は徐々に世界的に注目を集めるようになり、とうとう2016年にパリの国立コリーヌ劇場の芸術監督への就任を果たす。就任した翌年に発表・上演された作品がこの『みんな鳥になって』(2017 年初演)であり、ムワワドの人生の集大成ともいうべき密度の濃い作品として高い評価を受けた公演となった。
民族や国境の高い壁に直面する人々の逃れられない辛い現実と、だからこそ抱く未来への夢が、ムワワドならではの、迫力と美しさに満ちた台詞で綴られていく本作を、前3作と同様に、国内の数々の演劇賞を受賞し、次期新国立劇場芸術監督に就任するなど、演劇界を担っていく演出者である上村聡史が手掛ける。
出演者は、ベルリン出身のユダヤ系ドイツ人の青年エイタン役を中島裕翔。エイタンの父ダヴィッド役を岡本健一。エイタンの恋人でアラブ系アメリカ人のワヒダ役を岡本玲。エイタンの母ノラ役を那須佐代子。イスラエルの兵士エデン役を松岡依都美。16世紀の外交官ワザーン役を伊達暁。エイタンの祖父エトガール役を相島一之。そして、エイタンの祖母レア役を麻実れいが務める。
本公演は7月21日(月・祝)まで世田谷パブリックシアターにて上演。その後、兵庫、愛知、岡山、福岡にて行われる。
演出・上村聡史 コメント
台詞ひとつひとつ、今の世界とここにある物語に正対し、作りました。その成果を実感できた初日でした。八人の俳優が紡ぎ、吐き出し、伝えぬく表現の余韻が、劇場全体に満ち溢れていることに、喜びを感じています。その一方で、この余韻が、観客の皆様ひとりひとりの怒りや悲しみにも繋がっていくのだろうと、作り手として、いっそうの強い責任を感じました。千穐楽までこの熱量を貫き通したいと思います。
出演者コメント
■中島裕翔
無事に初日の幕が上がったことに安堵しています。約1ヶ月半の稽古期間を経て出来上がったこのカンパニーのチームワークがあれば千穐楽まで走り抜けられる。それを実感した日でもありました。
言葉を自在に操る素晴らしい役者たちによってワジディ・ムワワドのポエティカルで美しい言葉たちが紡がれ、みなさんを劇場を超えて、思いもよらない世界へと連れていきます。
それぞれのキャラクターの思いを受け取っていただけたら嬉しいです。
私もエイタンを一生懸命に生きたいと思います。
■岡本健一
初日の上演は、劇場中が物凄く静かでいて、濃密な無音の中で、姿や声に色や言葉、音や風景に、あらゆる感情が生まれていて、真空の中で心が動き、果てしなく無限な宇宙の中で、言葉を吐き出しているような…初めての体験をしました。
そして、カーテンコールでは劇場に居るみんなが、生きていることに感動していました。
次の日の公演では、またしても初めての感情が生まれ、初めての声を聞き、初めて感じる空気の流れを体感しました。
この回も凄かったです。
これからも何が湧き上がるかわかりません。
観劇したお客様には、どんな感情が生まれているのでしょうか。
劇場は常に生きて動いています。
世界も日本も私たちも動いています。
このままでは駄目なんだということも強く感じています。
それと同時に、これからの世代、これからの社会、愛国心、希望、色んな思いや大きな愛も感じています。
この作品で、自分の中から新しく生まれる感情が沢山あることに感謝しています。
これから観劇してくだる方々のためにもスタッフ、キャスト一同、毎日を健康第一で大千穐楽まで挑んでいきますので、皆様も御自愛してお過ごし下さい。
■岡本玲
ついに幕が上がりました。
この作品をお客様に届けられることに胸がいっぱいです。ご観劇くださった皆さま、本当にありがとうございます。演じるたび、公演を重ねるたびに、この作品の凄まじさを痛感します。まだ足りない、まだ深く潜れる、と自分自身への怒りを感じるほどに。上村さんをはじめ、心震える素晴らしいカンパニーの皆さんとご一緒できていることに心から感謝しています。千穐楽まで、この作品と、役と、自分自身と向き合い続ける覚悟で挑みます。劇場でお待ちしています。
■那須佐代子
おかげ様で無事開幕いたしました!
この作品がどのようにお客様に伝わるのか初日まで不安だったのですが、終演後にはお客様の集中力を通してある手ごたえを得たように感じました。
現在進行形の民族間の問題を扱いつつも、どこか寓話的で美しい言葉が散りばめられたムワワドの劇世界は、絶望を通り越したその先にある光、力を感じさせてくれるように思います。
いま多くの方々に見ていただきたいお芝居です。ご来場を心からお待ちしております。
■松岡依都美
まずは無事に開幕いたしました事をとても嬉しく思います。この作品の緊張感は凄まじく、一瞬たりとも気が抜けません。ただ初日の客席からはその緊張感を上回るほどの、もの凄い集中力を感じました。演じる側もそうですが、観る側も真剣勝負。両方の熱が混じり合う瞬間に『演劇の力』を実感いたしました。この作品に触れることで、世界に目を向けるきっかけとなればとても嬉しいです。1人でも多くのお客様に届く事を願って明日からもキャスト、スタッフ一丸となって挑んでまいります。
■伊達暁
『みんな鳥になって』、たくさんの人たちの想いと働きによって初日の幕が開き、この世田谷パブリックシアターから飛び立つことができました。こうしている間にも彼の地では止むことのない虐殺。自分に何ができるのか。この作品に散りばめられた言葉を探り、祈り、力強く伝えていく、最後まで。今この作品に出会えたこと、そして、ご来場の皆様とひととき同じ世界を生きられることに感謝しています。
■相島一之
初日が開いて。回数を重ねれば重ねるほどこの作品のことを考えます。戦争とは何なのか。人はなぜ争うのか。民族とは何なのか。じゃあ、人間とは何なのか。この世界の中で僕らはどう生きればいいのか。どの問いもとてつもなく大きく深い。簡単に答えなど見つからない。でもそれを問い続け、考え続ける。そんな作品なんだなと思っています。そんな作品に参加できることを光栄に思います。どうか演劇の魅力、可能性がみなさまのもとに届きますように。
■麻実れい
初めてのムワワド作品との出会いは11年前の『炎 アンサンディ』でした。今回の『みんな鳥になって』は3作目の出演となります。現在でも厳しい中東の問題。今舞台は様々な矛盾をテーマとしています。御客様一人、一人が物語を通して人と人また家族のつながりを感じていただければ嬉しいです。
『みんな鳥になって』トレーラー