キャップクラシックの特徴と代表的な8本のワイン ~中村僚我ソムリエ×高橋佳子氏ミニセミナー「Uniquely South Africa」レポート①
WOSA JAPAN(南アフリカワイン協会)は2024年10月、東京(22日)と大阪(24日)にて南アフリカワインの試飲商談会「DISCOVER SOUTH AFRICA 2024」を開催した。
当日は、南アフリカワインをよりよく知るためのミニセミナー「Uniquely South Africa」を3回開催。東京会場では、銀座ロオジエの中村僚我ソムリエとWOSA JAPANプロジェクトマネジャーの高橋佳子氏が登壇した。
WOSA JAPANのInstagramより
今回の記事では、キャップクラシックについて解説された第1回の内容を紹介する。
キャップクラシックとは
キャップクラシックとは、南アフリカでつくられている、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵のスパークリングワインのこと。シャンパーニュとの違いとして説明されたのが、「澱(おり)熟成の期間」だ。澱との熟成は、味を決める大きなポイントになるとのこと。キャップクラシックで定められている澱熟成の期間は、2021年に最低9カ月から最低12カ月に変更された。なお、熟成12カ月目以降に、澱からくるブリオッシュやトースティな味わいが出てくると言われている。
キャップクラシックのほとんどが、規定を超えて12カ月以上熟成されている。セミナーでは、「キャップクラシック協会の会長であるグラハム・ベック・ワインズ(Graham Beck Wines)のピーター・フェレイラ氏が、さらなる上位カテゴリーの新設を考えている」という非公式情報も共有された。スペイン産のスパークリングワインであるカバ(カヴァ)などが細かく熟成期間を定めて品質を守っているように、キャップクラシックも熟成期間による品質管理を強化していく方針のようだ。
さらに、キャップクラシックの特徴として、ぶどうの品種について規定がないことが挙げられた。8~9割近くのキャップクラシックが、シャンパーニュでも使用されているシャルドネやピノ・ノワールを使っているが、シュナン・ブラン、ピノタージュが使われることもあり、自由度が高い。
キャップクラシックのワイン8本
WOSA JAPANのInstagramより
ミニセミナーでは、リーズナブルなものからプレステージなものまで、8本のキャップクラシックが紹介された。
グラハム・ベック ブリュット
高橋氏が「日本で長く愛されているキャップクラシックの代表格」と紹介した1本。
キャップクラシック協会の2代目会長であるピーター・フェレイラ氏がワインメーカーを務めている。4000円以下というコスパの良さにも驚きの声が上がっていた。
【中村ソムリエのコメント】
澱熟成期間は最低15カ月であり、香りがトースティでブリオッシュのようなイースト感ですね。カマンベールの外側にあるようなチーズの皮の香りがあります。シャンパーニュと遜色ないのですが、キャップクラシックらしい特色として果実味の凝縮感があります。スムーズできめ細やかな泡があり、ブラインドで飲んでシャンパーニュではないと答えられる人はいるのか?と思います。
Graham Beck Brut NV
品種:シャルドネ53%、ピノ・ノワール47%
生産地:ウエスタン・ケープ
参考小売価格:3650円(税別)
輸入元サイト
ヴィリエラ トラディション ブリュット
ヴィリエラ・エステート(Villiera Estate)は、ステレンボッシュにあるキャップクラシックの有名生産者の1つだ。
【中村ソムリエのコメント】
スモーキーなニュアンス。「グラハム・ベック」は黄色いフルーツ主体でしたが、こちらはかんきつをより感じます。先ほどよりもシャルドネが多く、ドザージュ(補糖)が控えめなのでよりドライであり、後味に感じる酸の塩味につながっています。
Villiera Tradition Brut
品種:シャルドネ 70%、ピノ・ノワール 30%
生産地:ステレンボッシュ
参考小売価格:3560円(税別)
輸入元サイト
ラボリー キャップクラシック ブリュット
日本で長く愛されている、南アフリカ最大のワインブランドKWVのキャップクラシック。KWVは南アフリカワインの歴史を語る上で欠かせない生産者でもある。
シャルドネとピノ・ノワールに加えてピノタージュを使用しており、高橋氏は「南アフリカらしいセパージュ」と表現。さらに「澱熟成期間が24カ月でこの価格。常に冷蔵庫に入れておきたい」とコメントしている。
【中村ソムリエのコメント】
最初のアロマでは、キャラメルのような香ばしいイメージが強いかなと思います。樽由来かもしれないし、長い熟成期間によるものかもしれませんが、よりトースティです。味わいがまろやかで、滑らかな酸味なので、濃い味付けの食事にも合わせやすいと思います。
KWV Laborie Cap Classique Brut NV
品種:シャルドネ61%、ピノ・ノワール31%、ピノタージュ8%
生産地:ウエスタン・ケープ
参考小売価格:2600円(税別)
輸入元サイト
ヴァン・ハンクス メソッド・キャップ・クラシック ブリュット
2021年が初リリースであるヴァン・ハンクスは、今回が日本初のお披露目となった。マシュー・クローヌ氏の個人ブランドでもある。
【中村ソムリエのコメント】
少しの揮発酸がチャーミングな印象を与えます。洋ナシキャンディのような、イヤではない甘さがあり、スパークリングの品質を決定づける酸が濃いです。
Van Hunks Method Cap Classique Brut NV
品種:シャルドネ70%、ピノ・ノワール30%
生産地:ステレンボッシュ
参考小売価格:4500円(税別)
※2024年11月23日時点では日本未発売。今後発売の予定あり
シモンシッヒ キュヴェロワイヤル ブランドブラン2017
シモンシッヒ(Simonsig)創業者のフラン・マラン氏は、南アフリカで最初に瓶内二次発酵のスパークリングワインを生み出したつくり手だ。ドザージュが3gであり、シャンパーニュのエクストラ・ブリュットに当たる。澱熟成期間は最低3年。高橋氏は、「唾液が出てきて、食欲をそそるようなワインです」とコメントしていた。
【中村ソムリエのコメント】
キャップクラシックらしい、フルーツの凝縮した香りやフレーバーがあります。最後に感じる塩味が、シャルドネ主体のポイントです。ブラン・ド・ブラン(白ワイン用ぶどうのみを使用したスパークリングワイン)のお手本のような1本。
Simonsig Cuvee Royale Blanc de Blanc 2017
品種:シャルドネ100%
生産地:ステレンボッシュ
参考小売価格:6000円(税別)
輸入元サイト
※限定輸入したヴィンテージ品のため、2025年2月末で在庫終了見込みとのこと
アスリナ メソッド・キャップ・クラシック 2016
アスリナ(Aslina)は、南アフリカで初めての黒人女性ワインメーカーが手掛けるワインだ。少量生産であり、貴重なワインと言える。
【中村ソムリエのコメント】
第一印象として、華やかなマッシュルームを感じる、秋にぴったりな香りです。ドザージュが1gでほぼなく、フィニッシュが完全にドライです。
Aslina Méthode Cap Classique 2016
品種:シャルドネ100%
生産地:フランシュフック(ウエスタン・ケープ)
参考小売価格:6300円(税別)
アスリナが飲める飲食店
アスリナを購入可能な酒販店など
マシュー・クローヌ アレクサンドラ キャップ・クラシック 2017
「ヴァン・ハンクス」と同様に、マシュー・クローヌ氏が手掛けるワイン。生産量も入荷量も少なく、4年に1度しかつくられない貴重なワインだ。
【中村ソムリエのコメント】
27カ月熟成と長いので、熟成香がかなり感じられます。シェリーのような香りや味わいがあり、しょうゆと相性が良いですね。アミノ酸などのうま味が含まれるので、うま味のある日本料理にマッチすると思います。
Matthew Krone Alexandra Cap Classique 2017
品種:シャルドネ76%、ピノ・ノワール24%
生産地:ウエスタン・ケープ
参考小売価格:6500円(税別)
輸入元サイト
シモンシッヒ サテン ネクター ロゼ 2022
シモンシッヒによる、美しいボトルのキャップクラシック。ネクターは、シャンパーニュでのセック(残糖が17~32g/L)や、ドゥミ・セック(残糖が32~50g/L)に当たるカテゴリーだ。中村ソムリエは、「近年のシャンパーニュではセックをあまり見ませんが、南アフリカではネクターは人気があります。日本にはネクターはあまり輸入されていませんが、もっと飲まれるといいな」と解説していた。
【中村ソムリエのコメント】
甘さのあるタイプ。甘口のイメージがあるかもしれませんが、高い酸がキープされているので、飲み続けられる心地よい甘さでバランスが良いです。デザートワインとしても楽しめますが、現地では甘じょっぱい味付けにスパイスを加えたような料理に合わせられています。カレーでもいいですね。
Simonsig Satin Nectar Rose 2022
品種:ピノ・ノワール77%、ピノタージュ23%
生産地:ウエスタン・ケープ
参考小売価格:4200円(税別)
輸入元サイト
※売り切れ中(2024年11月30日現在)。次回入荷は2025年4月を予定しているとのこと
同セミナーは、WOSA JAPANのインスタグラムにて閲覧が可能だ。