カスハラ防止、4割の企業が対策強化 一方で被害を受けた社員のケアなど課題山積 経団連調査
日本経済団体連合会(経団連)は1月21日、同団体会員企業を対象に、ハラスメント防止対策に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表した。
調査は2024年8月7日から9月6日までの期間、1621社を対象に実施し、222社から回答を得た。調査では、カスタマーハラスメント(カスハラ)や就活時のハラスメント(就ハラ)防止対策、自爆営業防止に関する取り組み状況などを聞いた。
相談窓口の設置など4割の企業がカスハラ対策を実施
顧客・取引先などからのカスハラ防止対策では、24.3%の企業が「対策を取りまとめて実施している」と回答。「現在、対策を取りまとめるべく検討している」(18.9%)と合わせると、43.2%の企業が積極的に対策していることがわかった。
一方で、「対策が必要である」と認識していながら、特に対応をしていない企業が3割弱(27.5%)いることが判明した。
具体的な対策としては、「従業員を対象とした相談窓口の設置」(73.3%)が最も多く、次いで、「社内向けの対応マニュアルの策定」(61.7%)、「顧問弁護士や警察等との連携」(60.0%)、「カスハラ発生時の社内体制の構築」(58.3%)と続いた。
カスハラ対応で苦労している点では、以下のような回答が得られた。
・カスハラと一般的なクレームの線引きや判断基準の策定・運用することが困難
・2024年問題により人手不足が深刻な課題となり、顧客(取引先)からの過剰な要求や無理な納期の押し付けが増加し、精神不調に陥る事態が発生している
・マニュアルの策定や研修を実施しているもののカスハラの態様はさまざまで、現場の対応力に依拠せざるを得ない
・カスハラに対する対応者が能力のある一部の社員に偏ってしまう
・カスハラに対し 毅然 ( きぜん ) とした対応を行う基準を策定した場合、場合によっては「自身の行為の正当化」「カスハラ撲滅ムードへ悪質な便乗」などが発生する危険性がある
中には、実際にカスハラを受けた社員が退職したという企業もあり、カスハラを受けた従業員のケアや従業員のカスハラへの対応認識と正しい理解の浸透を求める意見が寄せられた。
こうした声を踏まえ、経団連は今回、カスハラ防止策に関して、カスハラに関する法制面の整備やカスハラの定義および判断基準の明確化、BtoB型カスハラの事例や判断基準の策定、事業者向けの勉強会や担当官庁主催のセミナーの開催、企業側が毅然とした態度が可能な仕組みづくりなどを、政府に対して要望した。
就ハラや自爆営業防止に関する調査結果も公表
就ハラに関しては、59.9%の企業(「対策を取りまとめて実施している」と「現在、対策を取りまとめるべく検討している」の合計)が積極的に推進していると回答し、取り組みの広がりが見られた。
また、営業活動において従業員が自分で商品を購入し売上高を上げる行為、いわゆる「自爆営業」の防止については、19.8%と約2割の企業(営業推進に関する方針・規定や研修などに自爆営業を行ってはならない旨の内容を「盛り込んでいる」または「盛り込むべく検討している」の合計)が積極的な姿勢を示した。
調査の詳細は同団体の公式リリースで確認できる。