県高校総体前特集 バスケットボール女子(3)藤蔭 信じる力が導く、変革と成長の道 【大分県】
県高校総体の前哨戦となる南九州四県対抗バスケットボール選手権(南九対抗)の女子県予選は明豊が優勝した。1月の県新人大会を制した大分との2校が優勝候補の筆頭だが、虎視眈々(たんたん)とタイトルを狙うライバル校も力を付けている。県総体を前に実力校の現在地を探った。第3回は指導体制の変化を乗り越えた藤蔭を紹介する。
【チームパラメーター】( )は昨年の数値
オフェンス 7(5)
ディフェンス 6(10)
リバウンド 7(7)
シュート 8(5)
スタミナ 6(8)
高さ 5(5)
南九対抗の県予選で3位に入った藤蔭。県新人大会では4位だったチームが一歩前進を遂げた背景には、選手たちの主体性と、チームを率いる平川あいか監督との間に築かれた信頼があった。
昨年度までは芦川尚子、西山泰加の両コーチが指導してきたが、今春から正式にチームの指揮を執ることになったのが平川監督。アシスタントコーチとして昨年から練習に関わっていたとはいえ、ベンチでの采配は今大会が本格的なスタートだった。「引き継ぐものは引き継ぎつつ、でも、選手たちの成長を止めることなくチームを再構築していく必要があった。私が主役じゃない。選手が主役のチームをつくりたかった」
そう語る平川監督の姿勢は、選手との対話に現れている。練習メニューに限らず、寮生活なども含めて「どうしたい?」と問いかけ、まずは選手の声を引き出す。そして、その言葉をベースにチームづくりを進めてきた。
今春から指揮を執っている平川あいか監督
その中で、着実に存在感を増してきたのがポイントガード豊田めい(3年)だ。これまではゲームコントロールに徹する場面が多かったが、今大会では得点力にも磨きをかけた。
「リバウンドが課題だったが、今回はそこを徹底して戦えた。3ポイントも試合で自信を持って打てるようになってきた」と豊田。準決勝では大分と対戦した。第3クオーターまでは接戦に持ち込むも、終盤に相手の得点を止められず、惜しくも敗戦。それでも、かつては苦しんだリバウンド争いやフィジカルでの競り合いにおいても、今大会では互角以上に渡り合った。
犬塚美桜や石崎好美といった新たな得点源が育ってきたことも今大会の収穫だった。特に犬塚は、朝6時からシューティングに取り組み、試合後も夜の門限ギリギリまで練習を続ける努力家だ。平川監督は「やっぱり、そういう選手が結果を出すとベンチも盛り上がるし、チームにいい空気が流れる。だからこそ目立つ選手になれと厳しく言ってきた」と話す。
平川監督の理想とする「堅守速攻」スタイルへと徐々に近づいている。高さのない藤蔭にとって、40分間走り続けるスタミナとハードワークは必要不可欠だ。県高校総体まで残された時間は多くはない。それでも、平川監督と選手たちは「勝てるチーム」を目指して、日々の練習に向き合っている。
得点力が増した豊田めい
(柚野真也)