1週間分のトイレ備蓄がたった330円! 100均アイテム3点セットでできる簡易トイレの作り方
「もしもに備えた災害備蓄」といわれたら、まず飲料水や食料を頭に思い浮かべる方が多いでしょう。確かに、いずれも生き延びるために必要不可欠な備蓄ですが、これらと並んで非常に重要といえるのが「トイレ」です。地震や水害などで水道が止まってしまうと、自宅や会社に備え付けの水洗トイレは使えません。もちろん、くみ置きしておいた水を一気に流し込んで、汚物を押し流す方法もありますね。ですが、災害時には排水管が壊れている可能性も高く、その場合は汚水が逆流したり、あふれ出したりする危険性があります。水道が復旧するまで、いつものようにトイレが使えない……。そんなとき、あなたならどうしますか? 今回は、断水時のトイレ対策の重要性や、安価で簡単にできる簡易トイレの作り方を防災士がお伝えします。
「トイレに行きたい」……我慢をすれば健康被害や災害関連死につながる恐れも
災害時の避難生活において、必ずといっていいほど上位に上がってくる困りごとの一つが、トイレ問題です。
東日本大震災後に仙台市が市民を対象に行ったアンケート調査では、「在宅避難をする中で特に不自由に感じたこと」として、約半数にあたる49.9%の方が「断水でトイレ・風呂などの生活用水の確保が困難」を挙げ、最多の回答数となりました。
図表1:3月11日以降、自宅で生活する中で特に不自由に感じたこと(複数回答)
出所:仙台市「東日本大震災に関する市民アンケート調査」
このように聞くと、「避難所に行けば仮設トイレがある」と思われる方もいるかもしれません。しかし、特定非営利活動法人日本トイレ研究所の調査によれば、同じく東日本大震災において、発災から3日以内に仮設トイレが設置された自治体は、わずか34%。14%の自治体では、仮設トイレが到着するまでに1か月以上もの期間を要したことがわかっています。また、東日本大震災では、バキュームカー不足で使用できなくなり、仮設トイレが封鎖されたところもありました。仮設トイレが設置されても、必ず使えるとは限らないのです。
トイレを無理に我慢しようとすると、ぼうこう炎や感染症のリスクが高まります。また、トイレの回数を減らそうと水分を控えることで、暑さが厳しくなってくるこれからの季節は特に、災害関連死の一因でもある熱中症のリスクを高めます。
したいと思ったら後回しにはできないのがトイレです。飲料水や食料と同様にトイレも、行政や自治体にばかり頼るのではなく、各企業で、各家庭で、もしもに備えてきちんと備蓄しておく必要があります。
携帯トイレはどれくらいの備えが必要か?
飲料水や食料などは、「最低でも3日分、できれば1週間分」の備えが必要といわれることが多いと思います。一方、携帯トイレに関しては、「最低でも1週間分」と考えて備蓄しておくのが望ましいです。
というのも、過去の災害経験から、電気・ガス・水道のうち、最も復旧に時間がかかるのが水道だといわれているためです。基本的に、水道が復旧しない限り水洗トイレは使えませんので、断水が長期化することを考慮し、多めに備蓄しておきましょう。
成人の1日当たりのトイレの回数は、4~7回程度といわれています。1週間分備蓄するなら、1人当たり約28~49回分の携帯トイレが必要です。
小さな子供はぼうこうが小さいので、1日当たりのトイレの回数は大人よりも多くなります。下記の表を参考に、水道が止まってしまっても家族全員が、最低1週間は問題なくトイレができるだけの携帯トイレを備えておくようにしましょう。
図表2:年齢別1日当たりのトイレの回数と、携帯トイレの必要個数
年齢トイレの回数
(1日当たり)携帯トイレの必要個数
(1人当たり・1週間分)1~2歳8~12回84回分3~4歳5~9回63回分4歳以降4~7回49回分
100円均一ショップの商品で作れる簡易トイレ
このように見ていくと、意外と備えておくべき携帯トイレの数は多いですよね。どの商品を選択するかにもよるでしょうが、子供がいる家庭では、携帯トイレの備蓄だけで1万円を超えてしまう場合もあると思います。
そこでここでは、100円均一ショップで手に入るアイテムを使って、簡単に安く簡易トイレを作る方法をご紹介します。使うアイテムは次の3つです(いずれも100円均一ショップのダイソーで購入できます)。
<用意するもの>
・A 猫砂
・B 45L以上のごみ袋(45Lより小さいサイズのごみ袋は便器に取り付けられません)
・C 消臭機能付きポリ袋
最低限これだけあれば十分だが、使い捨て手袋、バケツ、スコップもあるとより便利
簡易トイレを作る手順
(1)備え付けの洋式便器の便座の下に、45L以上のごみ袋を1枚かぶせます(写真左)。
写真右は、ごみ袋を設置したあと便座を下ろした状態
(2)便座の上にもう1枚ごみ袋をかぶせ、ティッシュペーパーや新聞紙などと、少量の猫砂を敷きます(写真左)。
猫砂は多めにかぶせた方がにおいが気にならない
(3)そのままいつも通りに排せつをしたら、上から猫砂をかぶせていきます(写真右は、「200mLの水を注ぐ→猫砂をかぶせる」を4回繰り返し、4回分のトイレを終えた状態を再現)。使用済みのトイレットペーパーも、そのまま中に捨てていってOK。
断水時にはバケツに入れた猫砂にスコップを添えてトイレ脇に置いておくと、使いやすい(写真右)
(4)汚物がたまってきたら、上のごみ袋だけ外して口をしっかり縛り、小さくまとめて消臭機能付きポリ袋の中へ(写真左)。そのままごみとして捨てます。ごみ収集が遅れがちな災害時は、自宅で長期間ごみを保管しなければならない可能性大。におい対策はしっかりと行っておきましょう。なお、感染症対策・衛生管理のため、汚物の処理は素手でやらないようにしてください。備蓄品の中に使い捨て手袋も備えておくのが◎。
自作簡易トイレを使用する際の注意点は、小便は何度か繰り返し使ってかまいません(ごみ袋1枚につき、5~7回以上使えます)が、大便のあとは必ずごみ袋を替えることです。便を介して感染症にかかるリスクを避けるためですので、徹底してください。
ごみ袋1枚につき5~7回以上使えると考えると、100円均一ショップで手に入る「猫砂・ごみ袋・消臭袋」の3点セット、つまりわずか330円で、成人1人の1週間分のトイレ備蓄が備えられることになります(※)。しかも、自宅のトイレで誰でも簡単に作れるとなれば、試さない手はありません。
※成人の1回当たりの尿量は150~400mLと幅があり、個人差があるため一概にはいえません。常に多めの備えを心掛けておきましょう。
災害時のトイレ問題を考える際、備えを徹底しておくと同時に重要なことがもう一つあります。それは、「水が使えない状態でのトイレに慣れておく」ことです。簡易トイレをきちんと備えていても、いざというときに使えなかった、という話をよく耳にします。普段と異なる環境では、したくなってもなかなかできないものなのです。ぜひ一度実際に試してみて、においの出方や、汚物の管理方法なども同時にチェックしておくことをおすすめします。