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【掛川市二の丸美術館の「白の細密工芸 ウニコール」展】 海獣イッカクの牙から超絶技巧が広げる「物語」

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は掛川市二の丸美術館で1月11 日から開かれている特別展「白の細密工芸 ウニコール」を題材に。

カナダ北東部やグリーンランド北部などに生息するという海獣「イッカク」の雄は、とても長い牙を持つ。体長約4.7メートルに対して、牙は長いもので約3メートル。中は空洞になっている。

イッカクの牙は「ウニコール」と言われ、17世紀の長崎・出島を拠点とした日蘭貿易で輸入されていた。金と同等の価値が認められ、さまざまな工芸品に用いられたという。

今回展はそのウニコールを使った根付(江戸時代に武士や町人が巾着やたばこ入れを帯につるす際に用いた装飾品)など約200点を、榑林美喜男さん(富士市)のコレクションから紹介する。同館ではおなじみの「木下コレクション」のたばこ道具も併せて展示している。

現在はワシントン条約に基づき、基本的に輸出入ができないウニコールの細密工芸品はたいへん貴重なものらしい。大きな牙だが中心部が空洞なので、彫刻に使える肉厚部分はほんのわずか。展示されている作品も、最大で人さし指の長さほどだろうか。

牙角彫師は、そこに超絶技巧を施す。螺旋状にトグロを巻いた「蛇」。4本の足を揃え左から後方を振り返る「馬」。尾をピンと立て前方を見据える「鶏」。19世紀に作られた根付群は月並みな言い方だが、「生きている」ようだ。

「刀鍛冶」をはじめとした人物の群像劇も描く。仙人たちのどこかユーモラスな表情も見逃せない。写実性の高い小品から物語が伝わる。

(は)

<DATA>
■掛川市二の丸美術館「榑林コレクションと木下コレクション 白の細密工芸 ウニコール その類まれなる材と巧みの技」
住所:掛川市掛川1142-1 
開館:午前9時~午後5時(月曜休館、祝日の場合は翌日休館)
観覧料(当日):大人500円、小・中学生無料
会期:3月23日(日)まで

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