気候変動を見据えた「ドメーヌ シャンソン」の“ダイナミックな取り組み”
「ドメーヌ シャンソン」は、ブルゴーニュ地方で最も古いファミリー経営のメゾンの一つである。1750年にヴェリー家が興したメゾンは、1847年シャンソン家に委ねられ、1999年からボランジェグループの傘下になった。6年ぶりに来日したヴァンサン・アヴネル社長は、気候変動の影響下にあるブルゴーニュでメゾンを存続させていくためのビジョンについて熱く語った。
自社畑を拡大
大手ネゴシアンのドメーヌ シャンソンは、ドメーヌワイン25パーセント、買いブドウから造るネゴシアンワイン75パーセントの比率でワイン事業を展開してきたが、雹害で2016年と21年はマイナス50パーセント、長雨とベト病で24年もマイナス50パーセントとなった。社長に就任してから、収穫時期も1週間程度早まっていると実感していたアヴネル氏は現状を憂い、ブドウの安定的な確保を優先事項にして、自社畑の拡大を目論んできた。折しも、23年にコート・シャロネーズに45ヘクタールの畑を入手できるチャンスを得て、所有するコート・ド・ボーヌ43ヘクタールと合わせて、自社畑を88ヘクタールまで広げることができた。これにより、ドメーヌワインとネゴシアンワインは各50パーセントになった。コート・ド・ボーヌに所有する畑は14年ヴィンテージからビオロジック認証、コート・シャロネーズは現在転換中なので3年後くらいに取得予定。
アヴネル社長が気候変動対策として取り組んできた事柄は、①全房発酵の比率を2020年からヴィンテージやアペラシオンによって対応し、平均50パーセントにとどめる。②収穫時期の見直しを行い、20年から収穫を早めに実施。③樽業者に関して、白はフランソワ・フレール、赤はダミーだけだったが、22年ヴィンテージからトレモー、カデュス、タランソー、ルソーを導入。新樽比率も白は25パーセント以下、赤は最大で15~25パーセント。④熟成期間を再考し、白は約11~17カ月、赤は約14~20カ月に変更。⑤エチケットは読みやすいゴチック体に変え、メゾンのロゴも丸みを持たせ、ドメーヌワインは「DOMAINE CHANSON」、ネゴシアンワインは「DEPUIS 1750 CHANSON」と記載。ワイン愛好家への情報公開(土壌構成や畑の向き、樽での育成期間など)にも配慮。新エチケットは24年の出荷分から対応。
GREAT PLACE TO WORK®
ドメーヌ シャンソンは2024年にフランスの生産者第1号として“グレート プレイス トゥ ワーク/働きがいのある会社”の認定を受けた。現在、コート・ド・ボーヌとコート・シャロネーズで総勢55人のメンバーが働いており、男女の比率は約半々である。21年から23年の間にブドウ畑や貯蔵庫の作業に関する団結やサービスの強化に特化した日(植え替えの日、収穫の日、整枝の日)が内部で組織され、これにより、従業員全員がメゾンをあらためて見直し、チームの連帯感を強化した。けん引役は2019年から栽培責任者を務めるジュスティーヌ・サヴォワさんと、20年から醸造責任者のリュシー・オージェさん、そこにアヴネル社長が加わった3本の矢だ。25年にはユネスコ遺産の一部“クロ(石垣)”の修復に専念する日を実施する予定である。なお、このプロジェクトには、親会社のボランジェグループが関与している。
ちなみに、フランス以外で認証を取得しているのは、米国の「オーパス・ワン」や豪州の「トレジャリー・ワイン・エステ―ツ」など。日本語のサイトもあり、大小の企業が認証を取得している。
text & photographs by Fumiko AOKI
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