【イラスト事例つき】介護現場で使える声かけのポイント3選!コミュニケーションで安心感を与える工夫を解説
介護の現場では、ちょっとした声かけが利用者さんの安心感を大きく左右します。「説明が長くなって伝わらない」「混乱している利用者さんにどう対応すればいいの?」そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、新人介護士のカイゴさんと、優しい先輩のうめが声かけのコツをご紹介します。NG例からOK例まで、実際の現場で起こりがちなシーンを通じて、すぐに使える技術を身につけていきましょう。
登場キャラクター
カイゴさん
現場に入って間もない新人介護士1年目。実は犬派だがうめの前では猫好きで通している。
うめ
介護に詳しくて、少しおせっかいな猫。カイゴさんの頼れる相談役。猫好きには優しい。
コツ1:内容をまとめてから声かけをする
朝の更衣介助中、カイゴさんは利用者さんに声をかけました。
カイゴさん
今日は暑いかもしれないので薄手のものを準備したんですが…あ、今日雨が降るらしいです。長袖のほうがいいですかね?シャツもありますし…それとも、いつものお気に入りの服が乾いたのでそれがいいですか?
利用者さんは怪訝な表情を浮かべ、不機嫌そうな様子になってしまいました。
NG例:内容がまとまっていない聞き方で混乱させてしまう
カイゴさん
ということがあって...僕、何かしてしまったんでしょうか…?
うめ
なるほど…。利用者さんとのコミュニケーションって難しいですよね。でも、不機嫌そうになってしまったのは、別の理由かもしれませんよ。
カイゴさん
えっ、ほんとですか?では何が原因だったんでしょうか…?
うめ
例えばカイゴさんがこのような感じで尋ねられたらどう感じるでしょうか?
「カイゴさんは動物好きですか?猫とか犬とか…あ、そういえば動物園って最近行きました?パンダとか話題ですよね。でもやっぱり実際に飼うなら猫ですかね?」
カイゴさん
うーん…。飼ってみたい動物の話をしたいのか、動物園の話をしたいのかよく分からないですね…。
うめ
それです!おそらくですが、利用者さんが不機嫌そうになってしまったのは、内容がまとまっておらず困ってしまったからではないでしょうか?
カイゴさん
確かに…。思いついたままに聞いてしまっていました。
うめ
内容が整理されていなかったり、意図がよく分からなかったりする聞き方は答えにくいことが多いので、何かを尋ねる前には聞くべき内容を整理してから聞くようにしてみましょう。
カイゴさん
なるほど、尋ねられる側の気持ちを考えて尋ねることが大事なんですね!
うめ
そうなんです!では良い例を見てみましょう。
OK例:答えやすいように選択肢を提示して尋ねる
カイゴさん
おはようございます。今日は暑いので、涼しい服を2着用意しました。こちらの半袖とこちらのシャツどちらがいいですか?
内容を整理し、選択肢を用意してから聞いたことで利用者さんの服がいつもよりスムーズに決まりました。余裕が生まれたことで、カイゴさんは普段よりも穏やかな雰囲気で会話しながらケアを進めることができました。
うめ
カイゴさん、利用者さんと良い雰囲気で会話できていましたね!素晴らしいです!
カイゴさん
ありがとうございます。相手の立場に立って聞き方を考えるとスムーズに答えてもらえるようになりました!
うめ
このコツを応用していけば、上司への相談や提案など色んな場面で活用しやすくなりますよ!
POINT
・相手の立場に立って尋ねる内容を整理する
・具体的な選択肢を提案することで判断のストレスを軽減
・意図が分かりやすい尋ね方をする
コツ2:動きの手順を先に伝える
食事の時間になり、カイゴさんは車いすが必要な利用者さんを食堂へ連れていくため、部屋へ向かいました。
カイゴさん
こんにちは。これから車いすに乗りましょう。はい、いきますよ!せーの。
そう言ってカイゴさんは利用者さんを車いすへ移乗させようとしましたが、利用者さんに「急に身体を触られると怖い」と言われ拒否されてしまいました。
NG例:これからする動きの説明が足りていない
カイゴさん
こんな感じで拒否されてしまって…どうして怖がらせてしまったんでしょうか?
うめ
そうですね…食堂に行くという目的を伝えているところは素晴らしいのですが、少し説明が足りていないかもしれませんね。
カイゴさん
えーっと、どこが足りなかったんでしょうか…?
うめ
そんなときは利用者さんの立場に立って考えてみましょう。「車いすに乗ります」とだけ伝えられたら、どこにどう手を貸してくれるのか、どうやって持ち上げてくれるのか、それとも自分で立ち上がればよいか分からないですよね。
カイゴさん
確かに…。そんなふうに何をすればよく分からない状況だと、身体を預けるのも怖いですよね。
うめ
そうなんです!「これからこういう動作をするので私はここを支えますね」、「せーので立ち上がりますね」と先に伝えることで利用者さんの安心感がアップしますよ。
OK例:これから何をするか先に説明する
カイゴさん
お昼ご飯の時間になったので、食堂まで車椅子で移動しましょう。これから私が腰のあたりを支えますので、せーのでゆっくり立ち上がりましょう。
利用者さんは「わかりました」と頷き、リラックスした状態で介助を受けてくれました。
うめ
素晴らしいです!利用者さん、落ち着いた様子でしたね。
カイゴさん
細かく行動の見通しを伝えるだけで、こんなに利用者さんの反応が違うんですね…!
うめ
そうなんです。このテクニックは車椅子への移乗の際だけでなく、食事介助や入浴介助など色々な状況に活かせるんですよ!
POINT
・「これから何をするか」先に伝える
・相手が安心できる「見通し」を詳細に説明する
コツ3:相手の感情に共感して寄り添う
ある日、カイゴさんが認知症の症状がある利用者さんのお部屋に行くと、利用者さんが「部屋の中に知らない人がいるので助けてほしい」とひどく怖がっている様子で声をかけてきました。
カイゴさん
えっ、知らない人…?えっと…この部屋に知らない人なんていませんよ。落ち着いてください。
カイゴさんはそう声をかけましたが、利用者さんは、「本当にいるんだ!」と言って怒りはじめてしまいました。
NG例:気持ちに寄り添わず、とにかく落ち着かせようとする
カイゴさん
ということがあって、結局先輩に助けてもらったんですが…。どう声をかけたら安心してもらえるのか分からないです。
うめ
そういうときは相手の見えている世界を否定せず、「怖かったんですね」などと気持ちに共感する声かけを心がけましょう。
カイゴさん
うーん、さっきは発言に戸惑ってしまって共感ができていませんでした…。
うめ
慣れないうちは対応方法に悩みますよね。「部屋に人がいて怖いんですね」と相手の発言を繰り返すと、相手は「気持ちが伝わった」と感じて落ち着くこともあります。
カイゴさん
なるほど、利用者さんに寄り添う姿勢が大切なんですね!
うめ
そうです!相手の気持ちを受け止め、言葉にして伝えることが大事ですよ。では、よい例を見てみましょう!
OK例:相手の発言を否定せず、繰り返して受け止める
カイゴさん
どこにいらっしゃいますか?知らない人がいると怖いですよね。すぐに出て行ってもらうよう伝えますね。
相手の見えている世界を否定せずに受け止めたことで、利用者さんは先ほどより落ち着いた様子になりました。その後、「頼りになるね、ありがとう」と感謝の言葉をいただくことができました。
うめ
今のやりとり、とても丁寧でしたね。怖がっている原因への解消にもつなげていて素晴らしいです!
カイゴさん
ありがとうございます。感情に共感を示して言葉を繰り返すことで、こんなに落ち着いて利用者さんとお話ができるようになるんですね...!
うめ
これは利用者さんに対してだけではなく、自分の気持ちに対しても使えるテクニックなので、いろいろな場面で試してみてくださいね。
POINT
・相手の発言から今の気持ちを端的に受け止め、繰り返す
・「怒っているんですね」「不安なんですね」など寄り添う言葉を意識
・相手の見えている世界を否定せず受け止め共感することで信頼関係を構築
まとめ:今日から3つのコツを実践して"声かけの迷い"ゼロへ!
カイゴさん
コミュニケーションのテクニックを実践したら、いつもより柔らかい雰囲気で利用者さんと話せることが増えました!
うめ
素晴らしいですね!信頼関係を構築することによって円滑なケアに繋がりますよ!
カイゴさん
確かに、余裕を持ってケアを進められている気がします…。これからも利用者さんからもっと信頼してもらえるよう頑張ります!
うめ
やる気満々ですね!利用者さんだけでなく、利用者さんのご家族や職場のスタッフ同士でも活用できるのでいろいろな場面で試してみてくださいね。
声かけは介護の基本というだけでなく、信頼関係構築においても重要なスキルです。人によってコミュニケーションに有効な手段は違いますが、どんな場面でも相手の立場に立って考える姿勢が大切になってきます。今回の3つのコツを使って、周囲の人からさらに信頼を得られるよう自分なりに実践していきましょう。
うめ
次回は『メモを活用したメンタルケアのコツ』について一緒に学びましょう!
カイゴさん
次も必ずチェックしてくださいね!