「使いこなせる単語」を増やそう! 語彙力の高め方
大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は2025 年1 月から新しい学習指導要領に対応した内容に改められます。
「外国語(英語)」は、どんなふうに変わるのか、気になっている中高生の皆さんも多いはず! そこで、大手進学予備校で英語を教える大岩秀樹先生に共通テストで出題される英語リーディングの特徴と、今日から取り入れたい学習法を解説してもらいます。いま求められている英語の力とは何か、どうすればその力が磨かれるのか。受験を考えている人はもちろん、英語を読む力を上げたいと思っている皆さんにも役立つノウハウをお届けします!
前回は、共通テストの英語リーディングを攻略するには、何をおいても「英語の基礎を身につける」。つまり語彙力を高め、文法の知識を深めることが大切とお話ししました。
というのも、英語リーディングの過去3年間の出題傾向を見ると、使用語数は6000語を超えました。これを80分で読みこなし、設問に答えなければいけません。かなりの読解スピードが求められますし、語彙力や文法の理解があやふやだと誤読を招きます。
さらに、2025年1月から実施される新学習指導要領に対応した共通テストの英語リーディングでは、メールやレビュー、プレゼンテーション用の資料など、さまざまな媒体やシチュエーションをテーマに多種多様な形式で出題されるため、過去問題での対策だけでは対応できません。語彙と文法、この当たり前の学習を積んでいくことが、一番の対策! 今回は、まず語彙力の高め方について考えていきましょう。
英作文で語彙力アップ
いきなりですが、問題です。中学校で学ぶ基本動詞の一つである「look(見る)」を使って、下の三つの日本語を英語で書いてみましょう。
1. 彼は私を見た。
2. 彼はトイレを探している。
3. 彼は猫のように見える。
早速、解答例を発表します。
1. He looked at me.
2. He is looking for the rest room.
3. He looks like a cat.
いかがでしたか。 at やfor、 like が抜けていませんでしたか。atを組み合わせる「見る」だけではなく、for やlike などの前置詞と組み合わせることで「~を探している」や「~のように見える」などの意味になります。「look= 見る」とだけ覚えていると、適切な英文を正しく書けませんし、リーディングでも正しく読み解けません。
私はリーディングが苦手な生徒には、「英語で作文する」ことを勧めています。一つの単語でも、さまざまな意味や使い方があることを実感しやすいのが英作文です。単語の意味を理解し、自分で作文できるまで使いこなせるようになった単語は、確実に身についたと言え、リーディングでも素早く正確に意味をつかめます。これが語彙力を高めることを勧める理由です。
まずは、英検3級レベルの単語から取り組んでみてください。英検3級は中学卒業レベルとされ、ライティングテストがあります。まずはこのライティングテストの英文をスラスラ書けるようになることを目標としましょう。
黙読と音読を繰り返してリーディングが上達
作文と併せてぜひ行ってほしいのが「黙読から音読」です。これを続けると、同じ単語や似たような文体の英文は、英語から日本語に訳さなくても理解できるようになり、読むスピードが格段に上がります。
お勧めなのは、英文に音声がついている教材。音読でつかえたり、読みづらい箇所があったりすれば、構文や単語を理解できていないのかもしれません。まずは英検3級レベル、もしくは中学生用の英単語教材や教科書からはじめましょう。
私の生徒にもこの方法を勧めています。効果が実感でき、リーディングも得意になるので、生徒たちは「すごい! 」と感激します。英検3級より難しい単語は、まずは見て意味がわかる程度で大丈夫です。
「黙読」は日本語で理解する。「音読」は英語で理解する。この二つを繰り返し行うことで、リーディングが上達します。1日3分でもいいので続けてみてください。
わからない単語があってもあせらないために
このようにコツコツと語彙力を高めても、試験ではわからない単語が出てきます。そんなときの対処法をお伝えします。大学入試センターが公表している試作問題を例に説明しましょう。
下の第A問では、高校の授業で生徒がスマートフォンを使うことの是非について、Teacher(先生)、Psychologist(心理学者)、Parent(親)、High school student(高校生)、School principal(校長)の5人の意見文を読み解き、設問に答えます。この中で、心理学者の意見文に使われている語彙は特に難しく、distraction(気が散ること)やinterference(干渉)などの単語が出てきます。
もしわからない単語が出てきても、ほかの英文を読み解けていれば、全体の構成を理解できます。この問題だと心理学者の意見文の最初の2文は前置きで、3文目で「スマートフォンの使用は生徒の集中力を阻そ害がいする研究結果が出ている」と否定的な考えが述べられていて、この人はどうやら授業でのスマートフォンの使用に反対なのだと読み取れます。
それを踏まえると、たとえば distraction や interference の意味を正確に知らなくても、それぞれ肯定的な意味では使われていないと推測できます。テスト本番で自分が覚えていない単語が出てきても、文全体の主張や意味が読み取れていれば対応できることもあるでしょう。
次回は、「文法の学び方」について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
令和7年度共通テストの試作問題はこちらから
大学入試センターホームページ(https://www.dnc.ac.jp/)内に掲載
大岩秀樹
東進ハイスクール・東進衛星予備校の英語科講師。基礎講座から難関大向け講座まで多数担当し、応用問題にもしっかり対応できる「本物の基礎力」にこだわる授業を行う。中学生・大学生向けの講座も多数担当しており、大学入試にとどまらない未来へつながる英語指導を心がけている。著書は50 冊以上。
■「NHKテキスト 中高生の基礎英語 in English 2024年11月号」より
■構成:稲田砂知子
■イラスト:柿崎こうこ