ピックアッププレーヤー ソフトテニス男子 エースとして自覚が芽生えた山田卓弥(大分2年) 【大分県】
全国高校選抜大会の男子団体戦に出場する大分の2年生・山田卓弥。静かな闘志を胸に秘めたこの選手は、今、確実にチームの中心へと成長を遂げつつある。
ソフトテニスを始めたのは小学4年生の頃。きっかけはチームメートである坂口竣亮(2年)の誘いだった。ラケットを握ったその日から、軟らかいボールが描く独特の軌道、瞬時の判断力を求められる多彩な戦術、そしてポイントを奪った瞬間の快感に夢中になった。硬式テニスにはないプレーの幅に、山田はたちまち魅了された。
しかし中学時代、山田は「一度ラケットを置こう」と考えていたという。「やめようかと悩んでいたとき、平原(滉太郎)監督に『うちに来ないか』と声をかけてもらった。それが大きかった」と振り返る。小・中学校では県大会で好成績を収めていたが、九州や全国といったより高いステージでは結果を残せていなかった。その悔しさが「もっと上を目指したい」という強い意志を芽生えさせた。
山田のプレーは、巧みなポジショニングと後衛との距離感の取り方にセンスが光る。理屈ではなく感覚でプレーするスタイルで、教わらずともやってのける器用さがある。平原監督は「1年生の頃からチームの中心になる存在として見ていた。レギュラー組に同行させ、経験を積ませてきた」と信頼を寄せる。
理屈ではなく感覚でプレーを理解できる山田卓弥
ただ、課題もあった。高いポテンシャルを持ちながらも、気持ちの弱さや闘争心の欠如が壁となり、前に進めない時期が続いた。それを打ち破るきっかけとなったのが、昨年の県高校総体での敗戦だった。「先輩とペアを組んで挑んだ大会だったが、連覇を止めてしまった。申し訳なさと悔しさが今も忘れられない」と語る。その苦い経験が山田の心に火を付けた。
以降、勝利への意識が一層強まった。全国トップレベルの高校との練習試合や、九州高校新人大会での強豪選手との対戦も、山田にとっては大きな刺激となった。周囲からは「おとなしく真面目」と評されるが、実は誰よりも負けず嫌い。その内に秘めた感情を力に変え、今やチームを勝利に導く「キーマン」としての地位を確立しつつある。
目標は全国選抜での初戦突破。そしてその先も、一戦一戦に全力を尽くし、「大分高校」の名を全国に知らしめる覚悟だ。「自分は団体戦の3番手。大事な場面での試合になるからこそ、攻めの姿勢で勝利に貢献したい。いいボールはすべて自分で決めるつもりで臨む」と力強く語る。今後チームを背負っていくエースとして、大会中も大きな成長を見せてくれるに違いない。
全国選抜での目標は初戦突破
(甲斐理恵)