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四星球2枚組コンセプトフルアルバム『音時計』完成ーー結成20年を経ても尖り続けるというライブバンドの矜持が見事に現れた最新作

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四星球 撮影=河上良

四星球がバンド結成20周年を経て、メジャーからもリリースし続けて、遂に2枚組フルアルバム『音時計』を10月30日(水)に配信とCDでリリースする。それも単なる2枚組ではない。AMPM24時間というコンセプトで12曲ずつ収録というスタイルも画期的である。が、何がすごいって、それだけのバンドキャリアを築いても、それだけのコンセプトスタイルを築いても、尖り続ける破壊衝動を持ち合わせていること。このバランスの奇跡を自然に保ち続けて、自然に爆発し続けているのは、決して容易いことではない。でも、容易くみせてしまうのが、四星球の凄みなのだと想う。

四星球

――ニューアルバム『音時計』を聴きましたが、ほとんどライブで既に聴いた事がある曲ばかりで驚きました。

北島康雄(シンガー):そこには、めっちゃこだわりありました。レコーディングの前にライブでやっていきたい。良いか悪いかは置いといて、そこが強みかなと。そうするとライブを想定したアルバムにもなる。それが2枚組で出来たのはデカい。いっぱい曲を作って、すぐにライブでやって、だからライブとレコーディングを並行してやっていました。ライブで全然やっていない曲は、1、2曲くらいですかね。スケジュールも、レコーディングをするからライブを抑えるという事を意識的にしていないですから。ここのライブとここのライブの間でレコーディングが出来るなみたいな。ライブとレコーディングで、ずっと1週間歌いっぱなしもありましたね。スケジュール取れない中での2枚組です。

モリス(Dr):前回のツアーと並行してレコーディングをやっていたので、ライブとレコーディングは繋がってますね。スタジオにガガっと入って、どんどん新しい曲も出来て、むちゃくちゃ切羽詰まってましたね(笑)。

まさやん(Gt):2枚組なんで単純に曲が多いです(笑)。前にも音源化した曲に手を加えるというのもありましたけど、録りおろしが多かったですから。それにギターとベースは今までにした事がない録り方をしたんです。レコーディングスタジオでドラムを録ったデータを聴きながら、自宅でギターを録ったのですが、3、4日くらいしかなくて……。ずっと家でギターを弾いてました。コロナ禍以降、自宅でパソコンで曲を作ったりしていて、それが活かされましたね。コロナ禍前ならば、ノウハウが無いから無理でしたよ。まぁ、でも自宅でむっちゃ疲れている奴みたいになってましたけど(笑)。いい経験ではありましたね。

U太(Ba):追われはしましたね。じっくり家でやっていたら、ベース下手だなと思って(笑)。1曲に4時間とかかかりましたし、アルバムの〆切は事前に決まっていて、最初は余裕があったんです。でも、いざ、ふたを開けたら18曲録らないととなって(笑)。途中から2枚組の話が出たので。それだったら、同じような曲を作っても仕方ないので、細分化して曲を作っていきましたね。

康雄:普通2枚組って、最初から企画するか、たくさん曲が出来たから、そうするかのどっちかですよね。こんな作り方はしないですよね、2枚組って(笑)。

U太:家でやらなしゃあないスケジュールでしたから、自分との戦いみたいでした。

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――そもそも、なぜ2枚組になったのですか?

康雄:アルバム制作の話が決まってから、途中で、どういうものに? となり、2枚組案が出てきて。ある程度は曲がたまっていたというのもあるんですが。でも、8曲8曲の2枚組とかは意味ないなとなって。ただ、ここまでの曲数とは想像していなかったですけど(笑)。『MONSTER baSH』(以下『モンバス』)で真心ブラザーズのYO-KINGさんに今後の活動を聴かれたので、「秋に2枚組を出します」と話したら、「むちゃくちゃかっけー!!」と言われて! それもAMとPMに分けて24時間として24曲収録と話したら、また「むちゃくちゃかっけー!!」と言われて(笑)。その2枚組に対しての「かっけー」の感覚を自分では忘れていましたし、2枚組文化が今ほとんど無い中で再確認が出来たので、やって良かったなと。レコードからCDへと移り変わる時代を生きて、CD文化の時代に戦いまくっていた先輩に「かっけー」と言われて、間違えてなかったなと。これがこだわってきたコンセプトの着地かなと。それと、やはりライブで試したのはデカいです。アルバム制作期間半年かけて色々想定しながら作る人は格好良いし、或る意味普通ですけど、僕らは先にライブでという指標があったので。

まさやん:昔からそうかも。毎回、新しい曲が出来たら、「まずやろう」と。本当にこの状態でやっても大丈夫?という新曲でも、その状態でライブでやっていましたから(笑)。

康雄:TOMOVSKYさんが出来た新曲をライブでバンバンやっていて仕上げていっていて。何なら、「ここまでしか出来てない」と言って、ライブでやったりもしていて。

U太:もっと時間をかけたら、良くなる場合もありますけど、これがその時、必死に作ったリアルというか。

康雄:アルバムって本来そういう意味ですもんね。その時を刻むという。

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――それこそ今年の『モンバス』でもリハから新曲をやってましたし、本番が暴風雨になったら用意していたバラードを止めて別の新曲をやったし、リハでやっていた新曲も本番でやったし。その臨機応変な対応力はライブバンドならではで、強さを感じたんですよ。

康雄:『モンバス』は僕らの現在地という区切りでもあるので、新曲をやろうとは思ってました。

――リハでの新曲も含めて、このアルバムに収録されている短い曲が好きで、短いからこその瞬発力や強度があるんですよ。

康雄:短い曲は好きですね。好きな理由も色々あって。やった曲数を増やせるというのもあるし、これだけ色々作っているとキレイにまとまってくるので、壊す一個の作用として捉えているのかも知れない。

U太:例えば「DON DON BOWLING」は完全に作っていって、そしたら丸々採用になって。僕的には青春パンクとして作っていって、破壊衝動じゃないですけど、ライブでテンションがあがる曲ですね。

康雄:「DON DON BOWLING」では新しい事が出来たと思っていて。青春パンクをどうするかと考えた時に、全部喋りにしようと。途中で歌もと考えましたけど、より振り切って遊べました。

まさやん:僕も短い曲はすごく好きですね。例えばギターリフが特徴的なものだと、3、4分の曲だと起承転結で構成を考えてしまいますけど、短い曲だと投げっぱなしで良くて、それが気持ち良いので。キレイにやらなくていいというか。

U太:小手先でどうにもならないので、短い曲だと。人間を出すしか無いので振り切れる。

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――AMPM24時間というコンセプトの2枚組なのに、短い曲たちがある事でグチャグチャ感がすごく感じられるんですよ。

康雄:それが伝わっていたならば嬉しいですね。

モリス:短い曲は主役にもなるし、フックにもなるので魅力的ですよね。始まった瞬間にスイッチ押されるというか、全力でいけるから好きですね。

康雄:短い曲という点では「ふざけてナイト」が去年に出来ていたのがデカかったですね。

――さっき少し『モンバス』の話をしましたけど、終盤に暴風雨が凄すぎて、康雄君は小道具全てを観客エリアに向けて投げているし、まさやんはバク転しているし、U太君もベースを弾かずに暴れているし、それをモリスが観ながらドラムを叩いている瞬間があって、本来のライブとしては無茶苦茶なんですけど、それが何だかバンドとして美しかったんですよね。その感じが、このアルバムからはちゃんと感じられて。

康雄:『モンバス』は、そこに存在してるというか……。今のフェスの流れからいって、色々禁止になっている事も多いので、それでライブまでもがヌルくなっていると見られがちですけど、そこで理屈を超えた……、でも伝わる範囲内での『モンバス』的パンチを見せられたらなとは思っていましたね。一回壊れた瞬間というか……。人がやっている感じはありましたね。人間を見られているというか。対バンでバンドとやる時は普通に音楽をやるけど、HIPOHOPの人とやる時は人で勝負しに行く時があるんですよ。まぁ、気を抜いたら(ライブを)止められる感じはありましたね、あの時は。

――しっかりと尖りを持っているんですよね。

康雄:それはマジで大事だと思います。普段は優しいけど、キレる時はキレるみたいな。まだ、錆びてないですよ。

――そして去年に鳴門競艇場(BOATRACE鳴門)で開催した『ふざけてナイト』を、今年は11月23日(土)・24日(日)と2日間やりますが、今年の集大成にもなるなと楽しみにしています。

U太:同じ場所で2年連続では初めてなので、モチベーションキープは大変とは思っています。今までは一度きりの鮮度でやれていたけど、2年目ですから、どう鮮度を保とうかなと。でも、楽しみですよ。

まさやん:ここで単純に来年もやりたいと。メンバーみんな去年に思ったのですごく楽しみです。去年、環境も特殊なので出演してくれる皆さんもお客さんも楽しそうだったので、また、みんなに今年も喜んでほしいですね。

モリス:ライブハウスから今は離れてしまったこどもがいる友達とかからも「鳴門のは行ってみたい!」と言ってもらったりしたんです。規模がデカい場所は他にもありましたけど、鳴門のは違う広がり方をしているし、期待してもらっているのは感じましたね。

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――まさに、この場所は子供が遊べるスペースもありますし、実際にサイエンスショーといった出し物もあったりと、お子様から大人まで楽しめるのに、さっき話した様な尖りもしっかりと感じられたんですよ、去年。40歳を超えて大人な感じを持ちつつも、康雄君言うところの錆びて無さをすごく感じたんです。

康雄:錆びて無さは、わりかし自然に出る感じなんですよ。そうじゃないと嘘くさくなるし、そういう人たちが僕も好きですからね。

取材・文=鈴木淳史 撮影=河上良

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