空から見るニッポン。ただいま、埼玉県戸田市の上空です!
戸田市は、東京都板橋区から荒川を挟んで北側に位置する。上空からひときわ目を引くのは荒川治水のために造られた調節池、彩湖(さいこ) だ。湖の北岸には「彩湖・道満(どうまん)グリーンパーク」が広がる。この施設は1979年から10 年の月日をかけて整備、1989 年に「道満グリーンパーク」としてオープン、1997 年に彩湖が完成して「彩湖・道満グリーンパーク」となった。週末ともなると、野球場やサッカー場で試合をする子どもたちや、デイキャンプに興じる人たちでにぎわう。その南側には、1964年の東京オリンピックでボート競技会場となった戸田漕艇場と、戸田ボートレース場がある。
かつて住んでいた身近な町を空から眺める不思議
作品撮りや仕事でモーターパラグライダーで飛行をするときは、自宅から何時間もかけて車で移動をし、基本的には自然の中で空撮する。
しかし、エンジンやグライダーなど機材のチェックや、飛行練習をするために飛ぶ場合は、埼玉の荒川河川敷にあるモーターパラグライダー専用のエリアから飛ぶことが多い。そのエリアは以前住んでいた埼玉県戸田市から直線距離で10㎞ほどの場所にある。
身近な市街地である戸田を被写体として考えたことはなかったのだが、引っ越して戸田を離れてから、かつて住んでいた場所を空から眺めてみようと思った。
河川敷から離陸して川沿いに飛んでいくと、『彩湖・道満グリーンパーク』が見えてきた。家族でよく遊びに来た場所で、自宅からは自転車でも来られる距離だった。
さらに進んでいくと戸田ボートレース場が見える。このあたりはランニングコースとしていつも走っていたあたり。
東側に目を向けると、普段買い物に行っていたスーパーや、最寄り駅だった戸田駅のほうまで見える。
子どもが通った保育園や小学校、よく遊びに行った近所の公園なども空から探してみよう。あとから家族と一緒に写真を見ながら懐かしむのもおもしろいな、と思いながら空撮飛行をする。
雄大な自然を相手に撮影を続けている身としては、自分の生活圏だった場所を空から見るのはちょっと不思議な感覚だった。いつもと違う視点で景色を見るフライトもいい。
取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年7月号より
山本直洋
空飛ぶ写真家
1978年、東京生まれ。モーターパラグライダーによる空撮を得意とする”空飛ぶ写真家”。現在、世界七大陸最高峰を空撮する、成功すれば世界初のプロジェクト「Above the Seven Summits Project」を計画中。