103万円の壁は「お父さんの壁」?
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、11月25日の放送で「103万円の壁、落としどころは?」というテーマを特集。解説をジャーナリスト二木啓孝が務めた。
鈴木純子(文化放送アナウンサー)「年収が103万円を超えると所得税が発生する『年収の壁』に関して様々な議論がされていますが落としどころはどこになりそうなのか、解説していただきます」
二木啓孝「少数与党になって国民民主党が『103万円の壁、手取りを増やせ』。さすがに政府与党も応えなければいけない、ということで。議論って壁だらけですよね(笑)。103万円の壁、106万円、130万円、150万円、178万円……何がなんだかわからない。全体でいうとそもそも、控除やそういう社会保障をいつからやるか、など原則論からどんどん離れた議論になっているね、という話です」
長野智子「はい」
二木「落としどころ、じつはいま財務省が自民党、公明党の政策担当者のところにまわって、熱心に説明しているわけ。ぶ厚い資料を持って。国民民主党さんが言うようなことでいうと1.7倍も物価は上がっていなくて『じつは95年と比較して1.1倍です』『103万円の壁は113万円まで引き上げる』なんとかそのぐらいで、と言って、ずっと財務省はまわっている」
長野「あら……」
二木「たぶん113万円ぐらいの落としどころになるだろうと思います。減税したら財源は減るわけで。国民民主党が言うようパンパンにやるとだいたい7.6兆円ぐらいがかかる。税金をどうする、という話になって、今度は所得税、税収が減ることによって地方分の住民税、地方交付税が4兆から5兆減る。財政の人から言うと、現在でも地方交付税が足りない。地方が臨時財政対策費といって借金でやっている。それに全国の都道府県の自治体、1741自治体ありますけどこれが4兆ぐらい減ったらどうするの、という話になる。当初、国民民主党は『そんなことは政府が地方に迷惑がかからないよう考えることだ』『そっちの問題だ』と突っぱねた。さらに国民民主は『7兆円の今年度予算が余っているじゃないか』と言うけど、それは見かけ上の問題で。年度の予算を組むとき、多めに組むわけ。7兆円は国債発行分の予定がなかっただけで、国の金庫に7兆円入っているわけじゃない」
長野「うん」
二木「あと地方財政の問題で言うと相変わらず『足りない』。財務省のお役人たちが国会議員の議員会館をまわって『なんとか113万円で落としてもらえませんか』と。所得の低い人からすると103万円の壁を突破してほしい、というのはあるんですが、所得税控除というのはじつはお金持ちに有利なんですね」
長野「そうなりますね」
二木「所得200万円の人は9万円の減税になりますが、所得500万円の人は13万円の減税。2000万円の人は38万円減税」
長野「学生にとっては親のほうの問題なんですね」
二木「そう。103万円の壁とはお父さん(親)の壁なんです。というのは、103万円で手取りが減ることはなくて配偶者控除があるし、じつは特定扶養控除で学生はサポートされる。段階を見るとお父さんの壁のほうが大きい、ということ。リスナーの人、イメージ湧かないと思うんですが『お父さんの壁』というのは憶えておいてください」