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【福山市】福山自動車時計博物館 35周年 ~ ヒトとモノが共鳴していたあの頃へ!国内外から注目を浴びるホンモノ志向の文化施設

備後とことこ

福山自動車時計博物館 35周年 ~ ヒトとモノが共鳴していたあの頃へ!国内外から注目を浴びるホンモノ志向の文化施設

福山駅の北口(福山城口)直近の、博物館や美術館、文学館などが集まった文化ゾーンから北東方向に進むと、それら公立の文化施設とはおもむきを異にする民間の登録博物館が見えてきます。

今年(2024年)、開館35周年を迎えた福山自動車時計博物館です。

(文化ゾーン内の)広島県立歴史博物館と同じ35年という歴史をもちながら、所蔵品の増加とともに施設を拡張させている点でもユニーク。

とりわけ、全国に約20館あるとされる自動車関連の展示施設のなかで、ここだけの特別な展示方法が話題を呼び、国内外から来館者が訪れています。

多様で希少な展示物から“備後のスミソニアン(博物館)”と呼びたくなる博物館の特徴やなりたち、現在の状況について、館長の能宗孝(のうそう たかし)さん、副館長兼主任学芸員の宮本一輝(みやもと いつき)さんにお話を聞きました。

福山自動車時計博物館とは?

「福山自動車時計博物館(Fukuyama Auto & Clock Museum)」(以下、「FACM」と記載)はJR福山駅から北東方向、徒歩約15分の距離にあります。

「のれ・みれ・さわれ・写真撮れ」をモットーとするユニークな博物館は、クラシックカーやバイク、時計などを圧倒的なボリュームで展示。

現時点で200台余りの古い車、約1,000点超の機械式時計・和時計などを所蔵し、さらに近年移築された2棟の戦前木造建造物も見学できます。

公益財団法人 能宗文化財団が運営する登録博物館であり、文部科学大臣から「私立博物館における青少年に対する学習機会の充実に関する基準」を満たしていることの認定も受けた文化施設なのです。

広島県立歴史博物館の展示テーマが「中世の生活史」とすれば、FACMは「近代以降の生活文化に起きた多様な技術革新」がテーマと見ることもできます。

「のれ・みれ・さわれ・写真撮れ」が博物館の信条

「のれ・みれ・さわれ・写真撮れ」のモットーは、直接経験したことが自信をはぐくむという、館長自身の信念から考え出された試み。

博物館の果たすべき役割に立ち返り、五感をはたらかせる体験を優先的に考えた上での信条です。

とくに子どもたちは、ふだん見慣れないものが目の前にあると、触れてみたいという衝動にかられます。FACMはそれを否定すべき感情ではなく、探求心を伸ばすチャンスととらえています。

前向きな子どものエネルギーは、目標へ向かって行動する原動力になりえますが、禁句や命令形でおさえれば、挑戦する姿勢すら封じ込めてしまうかもしれません。

来館者本位のモットーは平成元年の開館当初から案内書にしるされ、いまもFACMの運営全般に貫かれています。

思い立ったらすぐ行ける博物館

福山市においては、美術館や博物館といった公共の文化施設は月曜日休館というのが通例。

出張ついでに、以前から気になっていた博物館に行ってみようと関心を寄せてみたものの、当日が月曜日ならあきらめるほかありません。しかしこの博物館ではそうした心配とは無縁です。

もちろん従業員は交代で休みを取りながら、今日も午前9時から午後6時まで年中無休で開館しつづけています。

土曜日は高校生以下が入館無料

FACMが使命と考えていることのひとつに、古い時代の文化や生活を次世代へ伝えるということがあります。

未来をになう若者にはオープンな受け入れ態勢をととのえ、通年で毎週土曜日は高校生以下の入館は無料です。

土曜日の休みを利用して、学校や家庭ではない自由な発見の場として気軽に立ち寄ってみるのも良いかもしれません。

入館者との対話を心がける学芸員

乗り物だけでも、古い自動車や三輪車、スクーター、各種時計にろう人形、その他楽器や玩具(がんぐ)まで数多のバリエーション。

どのような仕組みで動くのかわからないけれど、普段の生活ではまず出会うことのない魅力的なモノたちがそろった謎多きワンダーガレージ。

それらに抱いた驚きの気持ちや率直な疑問を学芸員のかたに話してみてください。きっと、より興味が高まるような話をしてくださるでしょう。

館長の能宗孝さん

取材時にも、次々と訪れる来館者に積極的に声をかけ、興味の対象や年齢層や国籍に見当を付けつつ、館長は時にフランクな英語を交えながら対応されていました。

型破りな館長・能宗孝さんの人物像

FACMの創設と後の発展には、そこに至るまでの能宗さん自身の希有なバックグラウンドがあります。

バイタリティに富んだ行動力と継続力が切り開いてきた館長の半生から、とくに転機になったと思われる、印象深いエピソードを挙げましょう。

能宗館長と副館長の宮本一輝さん

米スミソニアンに博物館の理想をみる

能宗館長は20代の留学時、アメリカ・ワシントンのスミソニアン博物館に、江戸時代の枕時計が展示してあること、なにより庶民の生活用品を展示していることにいたく驚いたのだそう。

当時、日本の博物館や美術館は施設自体がまだ地方では珍しく、大都市でも高価な美術品・工芸品のたぐいしか展示の対象にならない前時代的な状況でした。

しかし欧米の博物館では、生活文化の歴史的変遷が一望でき、自国だけでなく、他国との比較のなかで展示物を眺められるのです。

そののち40代になった能宗館長は、失われた道具を集めて、昔の生活を記録する博物館をつくろうと思い立ちます。

スミソニアン博物館で受けた衝撃は、そう決意させるのに十分な体験でした。

展示物から社会の変化が見えてくる


FACMでは、それぞれの展示物から人類の英知の結晶が見て取れ、社会のなかで重要な役割を果たしてきたことがしのばれます。当時の時代背景に想いを馳せながら、密かな時間旅行にでてみるのも一興です。

たとえばタワークロックは、日本国内ではかなりレアな欧州製の古い塔時計で、FACMでは40台を所蔵しています。

この特殊な時計を所蔵するようになったのは、ドイツから来られたお客さんに、時計博物館の看板を上げながらそれが一台も見当たらないことを指摘されたのがきっかけと館長は回顧します。


西洋において、タワークロックは時間を知るための役割だけでなく、正確に動くことで地域の統制力を視覚的に示す社会的な重要なアイテムと目されていたのです。


FACMの本格志向は、国内ではなかなか気づきにくいカルチャーギャップを埋めようとする姿勢にも、表れているのではないでしょうか。


「過去の知識を有する者は将来への鍵を握る」といわれるように、当博物館の展示物から未来を占うヒントを見つけられるかもしれません。

おわりに

開館から35周年を迎え、いまや地域一体が「福山自動車時計博物館通り」といった様相を見せているのに、まず驚かされました。

資本主義の際限のない生産と消費のなかで、古くなったモノを一律に捨てるのは容易く、なにをどのように残すかという「保存と活用」が地域の個性とつながっている点も興味深い特徴。

とくにコロナ禍の収束後は、活用の「のれ・みれ・さわれ・写真撮れ」は、多くの人に響いている展示方法のように思われます。

実際にこの取材でも、体験型の観光を求めて訪れたという外国人や、デザイン性豊かな古いモノに触れたいという若者を見かけました。

現在のようにテクノロジーの進化が早い時代にあって、古いモノに触れて往時のすがたを想像し、その背景の生活や文化を間近に体感できる、FACMでの観覧に対する需要がいっそう高まっているのではないでしょうか。

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