【チェ・ジウ インタビュー】『冬のソナタ』のチェ・ジウが教えてくれたKホラーの魅力
韓流ブームの先駆け『冬のソナタ』(02)のユジン役をはじめ、『天国の階段』『美しき日々』など数々の人気ドラマに出演、長きにわたって韓流ブームを牽引してきたトップスター、チェ・ジウ。
7月にはTBSドラマ『ブラックペア シーズン2』に出演してサプライズ来日も果たし、変わらない美しさを見せてくれた彼女が、今回は主演映画『ニューノーマル』のプロモーションのために来日、インタビューに答えてくれた。
久々の映画出演に加え、しかもジャンルはホラー! “メロの女王”から一転、イメージ・チェンジを果たした心境の変化を語る。
新たな姿に観客の反応が気になる
――『ニューノーマル』は身近なところに潜んでいる日常を一転させるような恐怖を描いています。ご自身が日常で感じる恐怖の瞬間、また、逆に幸せを感じる瞬間はいつですか?
映画の冒頭部分で流れるいろいろなニュースは、実際に韓国で起こった事件を監督が編集して入れたものなんです。
それくらい最近はニュースを見るのが怖くなるほど、あり得ない事件が起こっていますよね。
そういうのを見るとゾッとします。自分たちはこういう世界に生きているんだなと思いますし、にもかかわらず、この世界で生きていかなければならない。
なので、毎瞬間を幸せに過ごせるように努力しています。
最近は子どもが成長していく姿を見るのが私にとって一番の幸せですし、今こうして、映画の公開をドキドキして待っている瞬間が私をときめかせてくれています。
――久々の映画出演でしたが、映画に入る前と後で何か心境の変化はありましたか?
入る前は、私がうまくやれるだろうか、どう表現すればいいのかと心配もしましたが、不安な部分は監督と充分に対話を重ねました。
撮影現場に入ってからは、相手役の方と二人きりのシーンを狭い空間で撮っていましたので、ほどよい緊張感の中で自然にリアルな感じをいかせたのではないかと思います。
撮影が終わってからは、自分自身、うまく新しい挑戦ができたんじゃないかと思いましたし、私の新しい姿をどう受け止めてもらえるのか観客の皆さんの反応が気になりますね。
――チェ・ジウさんが演じたヒョンジョンはどんな人物なのかあまり背景が描かれていなかったのですが、キャラクター作りはどのようにされたのでしょうか?
最初にこの役をやることになった時、ヒョンジョンについての説明があまり描かれてなかったのですが、監督がある映画を見るように勧めてくれたんです。
フリッツ・ラング監督の『M』(1931)というクラシック映画なんですが、映画を見て監督の考えが少し理解できるようになりました。
そして、映画ではヒョンジョンの過去や、現在に至るまでの過程は出てこないのですが、
幼いころはこんな子どもだっただろう、何かの事件があったかもしれないし、なかったかもしれない、
そうやって今のヒョンジョンになっていったと想像をしながら演じていきました。
監督を信じて新たな役柄に挑戦
――目の前のチェ・ジウさんからは想像できないホラーものですが、最初にオファーされた時はどう思いましたか?
まず、シナリオがとても面白かったです。スリラーものとはいえ、とにかくびっくりさせて驚かせるような恐怖だけではなく、何かとてもユニークでウィットに富んでいて、それぞれのキャラクターをどの俳優が演じるのだろうという期待がありました。
最初は私がやるとは思っていなかったんです。
シナリオは面白かったんですが、私がこれまで演じてきたキャラクターとはあまりにも違ったので慎重になった部分もあり、監督に“私にはできそうにありません、自信がないです”とお伝えしました。
監督は、シナリオを書いている段階から私が演じることを念頭に置いて書いたので、ぜひやってほしいとおっしゃってくださって。
私の新しい一面を見せたいと思ってくださったようで、それは私も同じでした。何より、監督は『1942奇談』『コンジアム』といった作品でホラー界では人気の方なので、監督を信じてやってみようと思いました。
――個人的にホラー映画はお好きですか?
怖いのは嫌いなんです。怖いです〜(笑)。
普通に怖いくらいまでは見ることができますが、急に何かが飛び出してくるとか、消えてしまうとか、そういうのが怖くて心臓が飛び出しそうになります(笑)。
実は、監督の『コンジアム』は何度も見たんですが、最後までは見ることができていないんです。
とても怖すぎて……。映画は、日本のアニメ映画がとても好きですし、ヒーローもの、恋愛もの、コメディ、子ども向けのものまで、ホラー以外のジャンルは全部好きです。
――チョン・ボムシク監督は世界から注目される“Kホラー”ムービーを代表する監督ですが、チェ・ジウさんから見た“Kホラー”の魅力は?
難しい質問ですが、アイディアの豊富さじゃないですかね。
分かりやすい幽霊ものだけでなく、幽霊が出なくてもゾッとする映画とか、多彩でいろんな種類があるところ。迷信的な話も韓国映画には多いですよね。そんな部分だと思います。
――『ニューノーマル』はオムニバス映画で、出演俳優たちはほかのエピソードとどうつながるのか聞かされていなかったそうですが、映画の完成版を見ていかがでしたか?
この映画の一番大きなテーマが“孤立”なんです。なので、どんな俳優たちがキャスティングされたのかは知っていましたが、どの役を誰がやって、話がどう展開していくのかについては全く知らされていなかったんです。
私も完成した映画を見てやっと、こういうふうに話が繋がっていて、次の展開になっていくんだなと分かりました。
俳優も知らないうちに自然に演じながら一つの連結した話が完成していたので、私自身、そういう部分がとても面白かったです。
今回、ほかのエピソードの撮影は見ることができなかったですし、ほかの人が現場に入れないように監督が徹底させていました。珍しいことに台本読み合わせもなかったんです。
私のことを覚えていてくれてうれしい
――私たちはコロナ禍の3年を過ごしましたが、21世紀を生きる私たちにこんなことが起きるなんて想像もできなかったじゃないですか。
それに、最近はニュースを見るのが怖くなるほど、私たちの想像を超える事件が起こって、それが日常の恐怖になっている。
インターネットで殺人予告をしたり、突然、何の関係もない通りがかりの人に切りかかったり、銃を向けたり、以前にはなかった事件が最近起こっていることが怖いですね。
――久しぶりの演技でしたが、演じるためのウォーミングアップは何かされましたか?
日本ではこの映画でとても久しぶりにご挨拶することになりましたが、韓国では特に休むことなくずっとバラエティ番組やドラマ、CMなどにも出ていました。
先日、『ブラックペアン シーズン2』というドラマに出て、日本にもご挨拶に来たのですが、変わらず私のことを覚えていてくださって、歓迎してくださって、とても感動しました。
作品については常に心を開いていますし、やるからには一生懸命やらなければいけないといつも思っています。
――『ブラックペアン シーズン2』では、インターンドクターの息子がいる役柄でしたが、若々しいチェ・ジウさんにはちょっと息子が大きすぎると思いませんでしたか?
息子がたぶん20代ぐらい?の設定だったと思いますが、そこまで考えてなかったですね。
私自身、そんなにもう若くないので(笑)、実際、早く結婚した私の友人たちは高校生の子どもがいたりもします。
私にももう子どもがいますので、時の流れとともに役柄も変わって当然。
若い時に溌剌とさわやかな初恋を純粋に演じていたとすれば、今はもう母親役を演じるのが自然なことだと思います。
身近な出会いの裏に潜む予測不可能な恐怖を綴った新時代の体験型スリラー『ニューノーマル』は全国大ヒット上映中。
(韓流ぴあ/大森 美紀)