ミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』が開幕へ 北川拓実、東島京ら登壇の囲み会見とゲネプロレポートが公開
2025年6月5日(木)よみうり大手町ホールにて、ミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』が開幕する。その前日に囲み会見とゲネプロが行われ、舞台写真とレポートが公開された。
6月4日(水)、ミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』の囲み会見とゲネプロが東京・よみうり大手町ホールで行われた。
囲み会見には、主人公スマッジャー役の北川拓実、その親友ハントリー役の東島京、彼らと敵対するフランキー役の木村来士、チョコレートガール*であるモファット役の平野綾、古本屋の主人ブレイズ役の岡田浩暉、菓子屋のバビおばさん役の土居裕子、そして演出家の石丸さち子が登場。それぞれ熱く意気込みを語った。
北川は「僕としては一つ自分の殻を破って、この作品では男らしさと意地をお見せします。稽古する中で、人の心を動かすには、自分自身がものすごいエネルギーを生み出さないといけないことに気づきました。この作品を届けたい、作り上げたいという気持ちは誰にも負けません。スマッジャーみたいに積極的にグイグイ行けたら成功!という気持ちで頑張ります」と胸を張った。東島は「まるで修学旅行の前日のような、そわそわした感覚です。どう受け取ってくださるかという不安、だけどどこか大丈夫だという自信もあります。 何より役者の北川拓実が見られます!僕が演じるハントリーは繊細で、一歩引いて周りの人のために動くような男の子。好きなものは好きというまっすぐさ、無限に湧き出るエネルギーを大切に演じたいです」、木村は「ミュージカルは2作目。ファミリーのように仲の良いカンパニーで、きっとステージ上でもその空気感が現れると思います。 最初、フランキーは強くて芯のある男らしい人だとイメージしていましたが、石丸さんに自分の魅力を生かしていいんだとご指導いただいて、10代ならではのフレッシュなフランキーをお見せします」、平野は「お稽古は毎日、発見と変化の連続でした。良い意味で影響を及ぼし合うカンパニーで、本当に楽しかったです。モファットは持っていたもの全てを失い、ホームレスになってしまう役。どんなに辛い時でも全部受け止めて笑顔でいる、諦めない強さが魅力だと思います。 理想の自分を投影、追求していきたい」、岡田は「思い切って伸び伸びと、『チョコレート・アンダーグラウンド』の世界にダイブしていきたいです。ブレイズは二人の少年に背中を押されて、革命へと進み出すわけですが。僕も今の社会に対して、また未来の人たちに対して、自分ができることはないのかと考えたりもします。そして若手の3人とお芝居をする中で、彼らの純粋で繊細なエネルギーを感じ、僕もエネルギーをもらっている。そこはブレイズと同じですね」、土居は「私はチョコレートを売っているお菓子屋さんのおばちゃん役。 遊びに来る子供たちが無邪気に立ち上がり、何か変えようとする。そのエネルギーを私達大人が受け止めて拡大させていく、まっすぐ前を向いたお話です。私はスマッジャーとハントリーと共に遊びまくってはっちゃけていますので、楽しんでいただけたら嬉しいです」とそれぞれ熱く語った。
演出の石丸は、「高橋亜子さんの書いてくださった胸打つ歌詞の数々と、オリジナリティーあふれるオレノグラフィティさんの音楽、それを表現する俳優たちが本当に素敵です。大好き(笑)!仲の良いチームで、お互いが高め合い、次の日にはまた芝居が良くなっている。とても素敵な進歩をし続けて、ようやく初日を迎えることができます。どんな生き様を見せてくれるのか、彼らの活躍を楽しみにしていただきたい」と自信を見せた。 石丸はストーリーについても「食べることだけでなく、チョコレートという言葉を口にしただけで逮捕される、異常な世界。そこで少年たちが、好きなものは好き、おかしいことはおかしいって言おうと、まっすぐな気持ちで立ち上がる。そんな少年たちを見て、大人たちが力を貸し世界を変えていく。大人の方たちは自分たちが若かった頃を思い出すでしょうし、若い方たちは北川さん、東島さん、木村さんが走り回り、心を揺らして演じることで自分たちの物語だと受け止めていただけるのでは」と言及。
最後に北川がカンパニーを代表して「僕も自信を持って言えるくらい、面白い作品になっています。ご覧いただいた皆さまに、勇気や心で燃えている炎をお届けしたい。東京、大阪、富山と駆け抜けてまいりますので、ぜひ劇場まで足を運んでいただけると嬉しいです」と挨拶した。
*(チョコレートを宣伝している女優)
ゲネプロレポート
小説『青空のむこう』でもお馴染みの人気作家アレックス・シアラー。彼の小説『チョコレート・アンダーグラウンド(原題:Bootleg)』が待望のミュージカル化!それもこの日本で、オリジナルで作られたことに驚きを隠せない。演出の石丸をはじめ、日本の演劇を担う、そうそうたるクリエイターたちが参加。キャストもフレッシュな綺羅星3人に加え、ミュージカル界で活躍する実力派が顔を揃えた。
幕開きはポップでキャッチー、華やかさたっぷりのナンバーから。チョコレートと共に幸せな毎日を過ごす人々の様子に、ウキウキが伝わってくる!ところが曲が終わるにつれ不穏な空気に。健全健康党がお菓子やチョコレートを全面禁止にしてしまい、人々の暮らしは一変する。街にはチョコレートの探知車が行き交い、学校のランチタイムにはお弁当の検閲まで。チョコバーを持っていた少年は矯正施設へと連れ去られてしまう。そこで少年スマッジャーとハントリーが、チョコレート大好き! というひたむきな気持ちをパワーに、古本屋のブレイズ、菓子屋のバビおばさんの協力を得て、チョコレートの密造、密売に乗り出す。地下組織のチョコレートバーは大盛況。トントン拍子だったところ、旧友のフランキーに暴かれてしまう…。
チョコレート、お菓子という甘いモチーフから、もっとファンタジー色の強いエンタメかと思いきや、ガッツリ骨太なミュージカルだ。人々が投票に行かなかったことで、偏り過ぎた法律が施行され、予想もしなかった社会へと変貌してしまう。これは現実社会でもあり得る話。人ごとではないな…とヒリヒリすること間違いなしだ。
主演の北川は普段のおとなしさを封印、スマッジャーとして内なるエネルギーを熱く放出する。矯正施設でのソロナンバー〈不滅の炎〉は壮絶のひと言。今までにない北川の一面を垣間見ることができる。東島は繊細で優しいハントリーとして、美しい歌声とともに存在する。スマッジャーとハントリーのコンビ感も絶妙で、その無邪気さにキュンとすること請け合いだ。木村は敵対するフランキーとして見事な存在感を見せた。後半の変化が素晴らしく、演技力をしっかり見せつけた。彼らを抱える大人キャストも素晴らしく、それぞれの人物がしっかり際立っている。それぞれの人物に感情移入してしまうくらいだ。
ブレヒト幕を使ったスピーディーな展開とアナログな装置。俳優が肉体をもって汗をかき魂を燃やす演劇!という感じで好印象だ。
さまざまなテーマを内包した話だが、最後には観客が参加する場面もある。「あなたはどうですか?」と問いかけられたような、もしくは「あなたにもできるんですよ」とひとかけらの勇気をもらったような。帰り道、無性にチョコレートが食べたくなる作品だ!
文:三浦真紀 写真:田中亜紀