【介護のピンチを解決】仕事と介護を両立させるために知っておきたい「SOSの出し方」
ご自身やご家族の介護について、不安を感じることはありませんか? もしそうなら、この一冊があなたの心強い味方になるかもしれません。予約が取れないと話題の介護施設「くろまめさん」を運営する稲葉耕太さんの著書(KADOKAWA)。この本では、介護の中で直面する予期せぬ「大ピンチ」に、どのように向き合い、乗り越えていくかのヒントが具体的に紹介されています。稲葉さんのユニークな「めっちゃ笑える介護!」という視点を取り入れることで、日々の介護が、きっと今よりもっと心穏やかで、笑顔の多い時間へと変わっていくはずです。
※本記事は稲葉耕太(くろまめさん) 著の書籍『介護の大ピンチ解決します』から一部抜粋・編集しました。
仕事と介護の両立は厳しい
仕事を辞めずに介護を続ける方法を探しませんか?
何度でも言いますが、どうかひとりで抱え込まないで
親の介護をするというのは、掛け値なしにいいことではあるのですが、がんばりすぎて燃え尽きてしまう人もいます。くろまめさんの利用者にもこんな方がいました。
認知症の和子さん(88歳)を介護している、ひとり娘の早紀子さん(61歳)。それまで和子さんを介護していたお父さんが心不全で急死して、早紀子さんは介護のため実家へ帰ってきたのです。
傍目にも早紀子さんは、すごく一生懸命に介護をしていました。自分のことは後まわしで、なにをするにも母親優先。次第に介護と仕事の両立が難しくなってきたので、仕事を辞めたと聞いたとき、僕はちょっと「あやういな」と感じたのです。
仕事は社会との接点でもあります。その仕事を辞めて介護に専念するというのは、一歩間違えたら社会との接点を失うことにもなりかねません。できれば仕事を辞める決断をする前に、くろまめさんや担当のケアマネジャーに相談してほしかったという言葉はのみ込んで、和子さん親子をサポートしていこうと気持ちを改めました。
それから2年後。和子さんの認知症はだんだん進行し、健康状態も悪化してきました。このままくろまめさんに通って在宅介護を続けるか、それとも病院へ入院してもらうほうがいいか、早紀子さんは悩みます。
ある日、早紀子さんから話があると電話が来て、僕はご自宅へ伺いました。
「どうしたらいいのか私にはわかりません。稲葉さんが決めてください」
そう言うなり、わあっと泣きじゃくってしまいました。そんな娘の姿に、和子さんも不安そうにおどおどしています。ふたりをこのままにはしておけないと思い、僕はケアマネさんと相談し、和子さんが入院する手はずを整えました。そして早紀子さんには、趣味でも友だちと会うことでもいいから介護から離れる時間を作るようアドバイスしました。
そして現在。早紀子さんは好きなアイドルの推し活を楽しみながら、和子さんを介護しています。あのときSOSの電話をかけてくれて、本当によかった。
ピンチを分解
「介護共依存」という言葉をご存じですか?介護する人が、介護することそのものに精神面でも生活面でも囚とらわれてしまう状態のことです。まじめな人ほどそうなりやすく、特に娘と母親の間でそうなりやすいと言われています。
今現在、親や近親者を介護している人たちに、どうしても伝えたいことがあります。それは、介護をひとりで抱え込まず、介護事業所やケアマネさん、それに家族や親戚などたくさんの仲間を見つけて、適切に頼り、利用してください。どうかひとりで抱え込まないでくださいね。
※本記事に掲載されている情報は2025年4月時点のものです。掲載の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一本記事の内容で不測の事故等が起こった場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。