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【野球ごはん⑤】朝食の重要性について≪令和版≫

ラブすぽ

【野球ごはん⑤】朝食の重要性について≪令和版≫

なぜ、選手にとって朝食は重要なのか
朝食を英語にすると、「breakfast」。breakは破る、fastは断食という意味があります。つまり、breakfastは、前日の夕食から翌日の朝食をとるまで長い間、食事をとってない「断食」を「破る」、「その日の最初の食事」という意味になりますね。
寝ている間は食事をとっていませんので、朝起きたとき、脳や体はエネルギーを欲します。このまま朝食を食べずに学校や練習に行くと、エネルギー不足によって集中力が落ちたり、体の動きが鈍くなったりするかもしれません。
 
朝食と、脳と体の関係
朝食は、ごはんやパンだけでなく、目玉焼き、焼魚などのおかずも一緒に食べて欲しいです。朝食は、脳と体に大切な役割を果たしています。
ごはんやパン、めん類などの主食は、炭水化物を含んでいます。体を動かすエネルギー源には炭水化物だけでなく、たんぱく質、脂質がありますが、脳のエネルギー源は、基本的には炭水化物のみです。脳は、全体重の約2%の重さだといわれています。この小さな脳ですが、その消費エネルギー量は、なんと全消費エネルギー量の約20%も占め、たくさんのエネルギー量を必要としています。
卵や肉、魚などのメインのおかずとなる主菜は、体の材料となるたんぱく質を含んでいます。ヒトはたんぱく質を消化吸収するときに体温を上げる作用があります。これを『食事誘発性熱産生』と呼びます。体温と運動の関係について研究した論文があり、体温が高い方が、運動パフォーマンスが高いと書かれていました。練習前にウォーミングアップを行いますね。これは体を温めて、これから行う練習をしっかり行うための準備運動です。体を温められる朝食は、1日の生活のウォーミングアップになりますね。
野菜やきのこ、果物、乳製品などの副菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含んでいます。これらの栄養素は食事の消化吸収を助けたり、体の調子を整えたりします。私は、朝食に具だくさんの汁物をお勧めしています。具だくさんの汁物なら、手軽に野菜やきのこを食べられ、体を温めることができるからです。
 
朝食と体力、学力の関係

図1、図2は、文部科学省が発表した平成19年度及び20年度のデータです。朝食を食べる習慣がついている児童・生徒は、食べていない児童・生徒に比べて、学力や体力が高い傾向がみられます。

誤解しないでいただきたいのは、朝食を食べられたから学力、体力が向上したのではありません。朝食を食べたことにより、脳や体にエネルギーが補給され、体温が上がる。集中して授業を受けられる、練習ができる。その結果、学力、体力向上につながると考えられます。

朝食が苦手な場合の工夫
朝食の量を増やせない・食べづらい、朝食を食べる習慣がないなど、朝食が苦手な選手は、いきなり食事量を増やそうとしても難しいと思います。
そこで、朝食を食べやすくする工夫をご紹介します。

① 起床後、軽く体を動かす
朝、起きてすぐに食欲が出にくい場合は、起きる時間を5~10分早め、体全体を目覚めさせて食事をとるようにしましょう。起床後にストレッチやラジオ体操、お茶碗をテーブルに並べるなどのお手伝いすると、食欲が出やすくなります。スポーツニュースでプロ野球選手が、朝に散歩をする姿がみられますね。体をしっかり起こして朝食を食べる工夫の一つだと思います。

② 水分を補給する
起床後すぐは、まだ内臓の活動が鈍っていることがあります。この状態では、ごはんなどの固形物がとりづらいです。水や茶、オレンジジュース、ホットミルクココアなど、水分を補給すると胃に刺激を与えられ、食欲が出やすくなります。

③ 消化のよいものを食べる
朝食を苦手にしている選手は、たくさんの量を食べることは難しいと思います。先述の水やホットミルクなどの飲料や汁物だけでもいいので、胃に「朝に何かが入ってくる」ことを感覚として慣れさせます。飲料、汁物に慣れてきたら、汁物の具を増やしたり、バナナやミニうどん、パンを追加したりし、少しずつ量を増やしていくと、時間はかかりますが、食べられるようになります。以前、朝食をまったく食べられなかった高校野球選手が、1年間少しずつ食品を替えたり、食事量を増やしたりした結果、食べられるようになりました。選手が食べやすいものからとるようにし、徐々に体に慣れさせていくと時間はかかりますが、食べられるようになります。

④ 補食を利用する
朝練などがあり、朝食の量を増やせられない場合、高校生、大学生は、授業の合間の休憩時間を利用して、おにぎりやバナナ、カステラなどの補食をとりましょう。小学生、中学生は、学校で補食をとることは禁止されていると思います。給食でお代わりができるときは、お代わりしましょう。また、帰宅後に練習を行うときは、練習に行く前に補食をとりましょう。

私は、スポーツ合宿に帯同することがあります。選手の朝食をみますと、選手の調子が大よそわかります。また、これから強くなりそうな選手も朝食をみるとわかります。私の持論ですが、「強い選手は、朝から強い」です。

上村香久子


(うえむら・かくこ)

管理栄養士、調理師。1974年、京都府生まれ。中学生の頃にプロ野球ファンになり、スポーツ現場で働く栄養士を目指す。現在、中学、高校、大学野球をはじめ、サッカー、バスケットボール、バレーボール、駅伝チームなど全国各地のスポーツ選手たちへ栄養指導、レシピ提供などを行っている。また、公益財団法人全日本柔道連盟科学研究部員として合宿、オリンピックに帯同し、柔道選手をサポートしている。神奈川工科大学客員教授。

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