イカメタルの釣り方【3つのスタイルを名手が解説】メタルスッテ・ドロッパー・オモリグの使い分け
積極的な誘いでケンサキイカやスルメイカを興奮させ、メタルスッテやドロッパーに触れた瞬間を掛けにいく。そんな極上の「釣った」が味わえるイカメタルゲーム。今回は釣果を左右する誘い方のコツ、3つのリグの使い分けといった実践テクニックをイカメタル伝道師の岩城透さんが解説してくれた。
写真◎伊藤巧
解説◎岩城透
イカメタルの基礎知識
5月30日、福井県美浜町早瀬漁港・新漁丸ザレイズの半夜便に乗り込んで開幕して間もないイカメタルゲームを楽しんできました。この日は立石沖の水深95mラインで流し釣り。天候が崩れる直前とあってウネリが大きく船を揺らし、ミヨシに釣り座を構えたこともあって釣りづらい状況でしたが、厳しいながらもスルメイカを数釣りつつコンスタントにケンサキイカをキャッチすることができました。当日の模様を振り返りつつ、今どきの釣り方を解説していきましょう。
イカメタルゲームとは夜焚きのツツイカ釣りです。船の上で高輝度の集魚灯を点灯して、船の下にイカを寄せながらメタルスッテやドロッパー(浮きスッテ)、エギ(ドロッパーエギ)を使って釣ります。タナを刻みつつ船の真下を縦に釣るのが基本ですが、状況を見ながらキャストして照明の外側を探ったりもします。
新漁丸ザレイズ。イカメタルは夜焚き釣り
イカメタルのターゲット
イカメタルのターゲットとして黎明期はケンサキイカとヤリイカが主役でしたが、現在はフィールドが全国に広がったことで、スルメイカも同じように人気ターゲットになりました。ケンサキイカやヤリイカを興奮させられれば何度も触ってくるところにゲーム性を見い出して盛り上がっていたのが初期のイカメタルですが、見切りが早いスルメイカも併せてねらうようになり「最初のアタリをどうやって引き出すか」にコンセプトが変わってきました。
スルメイカのアタリを引き出せるかどうかは、タックルバランスや誘いのパターンに大きく左右されます。特に麦イカ(春に釣れる小型のスルメイカ)が浅ダナで数釣れる状況下では、タックルの違いが如実に現われます。
純粋なケンサキイカに対してスルメイカは狡猾です。掛け損なっても、すかさずタナを戻してメタルスッテを激しく動かせば、警戒していたケンサキイカは興奮して我を忘れ、止めた瞬間に抱いてきます。そんなイラつかせて抱かせるテクニックが、スルメイカには通用しません。最初のアタリで乗せられなければ、どこかへ消えてしまいます。激しく動いているものにアタックしてくる獰猛なスルメイカですが、見切りは驚くほど早いのです。
取材当日もスルメイカが登場
水深は50m前後の地域が多い
釣り場について、福井に関して以前は40mより浅い場所に船をかけていましたが、最近はケンサキイカが深場に群れることが多く80mより深い場所で釣るケースも増えてきました。パラシュートアンカーを入れて流したり、潮がよければかかり釣りになったりします。
全国的には50m前後のかかり釣りが多く、アンカーを下ろして潮の利き方に合わせてメタルスッテの重さを調整します。
釣り方は3つのスタイルがある
イカメタルの釣り方には3つのスタイルがあるので紹介します。
メタルスッテの単体リグ
まずはリーダーの先にメタルスッテを結んだシンプルなスタイル。メタルスッテを激しく動かしては止めるスピーディーでダイレクトな釣りです。基本は指示ダナにメタルスッテを入れたら、ロッドのストロークを活かして激しく誘い上げます。1、2回の段をつけて鋭く誘い上げるのが秘訣です。ピッピッとメタルスッテを飛ばすように動かして、頂点からテンションフォールさせてストップ。この動と静のメリハリが極めて重要です。メリハリを効かせられるほど釣れます。
誘い上げはいかに初速を出すかがキーです。1から10に向かって加速しながら誘い上げるのではなく、最初から10のスピードで誘い上げられれば、たまらずイカが飛びついてきます。フォルムがコンパクトなタングステンのメタルスッテを使うと違いを感じるかと思います。
また、活性の高いイカがフォールに反応する状況下で威力を発揮します。誘い上げからテンションをコントロールしながらフォールさせる途中で重みが一瞬でも抜けたらそれがアタリ。間髪入れずに合わせましょう。最初のタナに戻ったところで激しくスッテを動かしてピタリと止めるのも有効です。興奮したイカが抱いてきます。
キビキビ動かせられるタングステンのスッテも有効。写真はダイワのエメラルダス イカメタルスッテT
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ドロッパーの釣り
単体リグのリーダー部分に枝スを設けてドロッパー(浮きスッテ)を装着した二段式のレイアウト。単体リグよりスローなフォールや誘いの演出が可能です。仕掛けが暴れないタックルの選択が重要です。スローが基本ではありますが、誘いのアクションはキビキビ動かしたほうがイカの反応が得られます。
サオ先を下げて構えたところから、ロッドのストロークを活かして仕掛けをキビキビ動かしながら誘い上げ、サオ先でコントロールしながらテンションフォール。サオ先を下げたところでピタリと止めてアタリに備えます。仕掛けは止まっていますが、潮に乗ったドロッパーがふわふわと漂ってイカを誘います。
オモリグ
専用のオモリを使用したエギの吹き流し仕掛けです。あまり細かいアクションを必要とせず、ゆったりとした誘いでイカを釣ります。仕掛けを安定させやすいので海況が悪いときにも有効。リーダーが長くてメタルスッテよりも効率が悪いように見えますが、イカの活性が低いとき、潮が速いとき、大きいイカをねらいたいときは絶大な効果を発揮します。
オモリの重さを自由に設定できることから仕掛けのコントロールが容易で、渋い状況を打開する力に特化しています。以前は同船者との仕掛けトラブルを避けるためにオモリグ禁止の遊漁船も見受けられましたが、釣り人の知識が深まって技術が向上したので、現在はほぼ全国の遊漁船でオモリグが楽しめます。
オモリグはリーダーの長さやシンカーの重さを調整すれば、メタルスッテでは釣りにならない状況下でも安定してイカを誘える
イカメタルの釣りの流れと実践テクニック
釣り場に到着すると、最初に船長が近況や魚探に映ったベイトなどから、おおよそのタナをはじめ、メタルスッテやオモリグシンカーの重さなどを指示してくれるので、それに従ってタックルを準備します。今回お世話になった新漁丸ザレイズさんも、丁寧に釣り方や状況をアナウンスしてくれました。なお、仕掛けの重さを合わせないと同船者とオマツリするので、必ず船長の指示に従いましょう。今回は25号の指示がありました。
イカメタル船は多くの地域で半夜便と深夜便があり、半夜便の場合は夕方出船になるので、間もなく太陽が沈むタイミングでの実釣スタートとなります。明るい時間帯のイカは底に広く散らばっているので、辺りが暗くなって集魚灯の照明が効いてくるまでに釣り方の手順を練習しておきましょう。深夜便も照明が効くまでは半夜便と基本的に同じです。
明るい内は広範囲を探る
最初の数回はドロッパー仕掛けで船の真下をねらいました。まだイカを寄せてはいませんが、近くにいれば簡単に釣れます。反応がなかったので、メタルスッテをキャストしてボトムに沿ってリフト&フォールで探ってきます。最近はトラブルなく簡単に飛距離を稼げるスピニングタックルが人気です。オモリグでも同じ要領でボトムを探ることができるので好みで選んでください。そして船の下まで探ってきたらピックアップして再びキャストします。これを繰り返して広く探っていきました。
船下で反応がなく、スピニングタックルに持ち替えて底を広範囲に探った
集魚灯が効いてきたら縦の釣り
辺りが暗くなって集魚灯が効いてきたので縦の釣り、いわゆるレンジの釣りに切り替えました。レンジの釣りに関してはどのスタイルでも楽しめます。いずれかのスタイルが秀でているわけではないので、海況や自分の好みで選んでください。
しなやかな穂先が仕掛けを安定させる
ロッドに関しては、仕掛けのコントロールが容易でイカの掛かりも抜群なグラスのロングソリッドモデルが厳しい状況下での釣りを可能にしてくれました。ねらい通り船の揺れをグラスソリッドが吸収してくれたので、スルメイカやケンサキイカがコンスタントにヒットしました。
イカメタルゲームでは穂先が明暗を分けます。穂先は角のないイカ特有のアタリを察知するために繊細でなければなりません。テンションのコントロールも繊細なソリッド穂先が向いています。安定したフォールもソリッド穂先なら可能です。張りの強い穂先では、ちょっとした船の揺れで仕掛けを跳ねさせてしまうなど制御が難しく、デメリットが大きくなります。穂先はしなやかでもベリーからバットにかけてしっかりと張りを持たせているので、瞬間的なスッテの加速も問題ありませんでした。
グラスソリッドの穂先が船の揺れを吸収してくれる。重いスッテをシャクる際はバットに手を添えるのが岩城さんのスタイル
タナや活性に応じて釣り方を変える
ケンサキイカが狭いタナで釣れ続くことがあります。このようにねらうタナが決まっているときは、ロッドのストロークだけで誘います。タナから外れてしまうのでリールは使いません。ロッドのストロークだけで誘い続けます。
たまに5〜10m巻き上げて入れ直すと効果的です。たとえば30mで釣れているときに20mまで巻き上げてから30mに入れ直すパターンで釣れるときもあれば、30mを通過させて35mまで沈めることで30mラインにいたイカが追いかけて乗ってくることもあります。誘い上げたら3~5m刻みで誘いを入れながら戻したり、いろいろなパターンを試してみてください。
指示されたタナの範囲が20~40mといった感じで広かった場合は、効率を考えて上から探っていきます。この場合は20mのすぐ上から刻みながら40mまで探り、反応がなければ20mまで誘い上げるの繰り返しです。刻む幅は3~5m。誘い上げはワンピッチで、誘い下げはリールのカウンターを見ながら行ないます。どちらも必ず誘いのアクションを入れることを忘れないようにしましょう。
ロッドで大きく誘い上げたら、穂先に集中しながらテンションをコントロールしてフォール
ステイの誘いの時間
仕掛けを止める時間は、単体リグなら3秒ぐらいで充分。ドロッパーの釣りの場合は20秒ほど待つこともあります。先述したようにロングステイしていてもドロッパーがイカを誘っています。これに対して単体リグはメタルスッテが止まった直後に乗らなければ、動いていないので見切られます。
活性が高いときは上から落ちてくるものに反応するので、上から誘っていくと手返しがよく、イカの活性も高くキープしたまま釣ることができます。最初に見えたものを追いかけて乗ってくるので、ドロッパーの釣りでも活性が高いときは下のメタルスッテに乗ってくる割合が増えます。単体リグでも充分釣りになる状況です。フォールの途中で抱いてくるとラインが止まって穂先から一瞬テンションが抜けるので即アワセしてください。
活性が低い時の釣り方
活性が低いときはじっくり見せられるドロッパーの釣りやオモリグが有効です。たとえ活性が低くても、止める前にしっかりメタルスッテを動かしてイカにアピールすることが大切です。
やる気のないイカにスイッチを入れるのはメタルスッテの役割です。メタルスッテを激しく動かしてイカを興奮させて、ナチュラルなドロッパーに乗せましょう。イカメタルで重要なのはメリハリです。激しく動かしてからピタリと止めることが肝要です。この止めている間に船が揺れると仕掛けが安定しません。なるべく仕掛けを暴れさせないようにするのが腕の見せどころといえます。
ドロッパーの釣りとオモリグにダブルヒット
掛からないときは目の前で焦らすこと
触ってくるばかりで掛からないときは、その後のフォローが重要です。まずは掛け損ねたところからテンションを抜かないよう素早く元の位置に戻します。そしてメタルスッテの単体リグの場合は、激しくスッテを動かしてイカを焦らすと止めた直後に乗ってきます。ドロッパーの釣りでもスッテを激しく動かして、充分に興奮させたところで少し仕掛けを下げてドロッパーを入れてやります。これでドロッパーに乗る可能性もありますし、メタルスッテを追いかけていって抱くこともあります。
いずれもタナがズレないようリールを巻かないことが大切です。今どきのリールはハイギアなので、数回ハンドルを回すとタナから大きく外れてしまいます。ルアーマンの方の多くはリーリングする癖がついているので要注意です。ここが明暗を分けます。
こうして午後10時半までドロッパーの釣りとオモリグで満足いく釣果を上げることができたので、ラスト1時間はメタルスッテの単体リグを楽しみました。グラスソリッド穂先のお陰で、単体リグでもコンスタントにスルメイカを掛けることができ、最後まで楽しんでロッドオフとしました。イカメタルは決して難しい釣りではありませんが、ゲーム性は抜群です。ぜひ興味を持たれた方は挑戦してみてください。
イカメタルゲームの基本コンセプトはケンサキイカを興奮させること。激しくメタルスッテを動かしてピタリと止める
イカメタルを始める際のアイテムの揃え方
最後に、これからイカメタルを始める人が最初のタックルを揃える上で、最低限押さえておくべきポイントを挙げてもらった。
ロッドの最初の1本は汎用性を重視
今回の釣行で岩城さんは、あらゆる局面に対応するためダイワのエメラルダスMXシリーズを5セット用意した。K410LB-Sは、パワーを持たせつつ細かい誘いが入れられる超ショートロッド。どう動かしたらイカにスイッチが入るのかを追求して開発。短いながら深場でもきっちりメタルスッテを動かせる調子に仕上げてある。
K56ULB-GSとN65LB-GSはグラスソリッドトップの掛け調子と乗せ調子のロッド。汎用性に優れ、スッテの号数によって使い分ける。スピニングはK60LS-Sとオモリグ用のOR63MLS-S。K60LS-Sは20号までのスッテをキャストしたり、軽いスッテを使ったりするときに使用。
ただし、最初から複数のロッドを揃えるのは難しい。そのため、これからイカメタルを始めようという人には汎用性が高いモデルがおすすめだという。エメラルダスMXシリーズであれば汎用性が高く、操作性も抜群のN65LB-GSが最適だ。
エメラルダスMXイカメタル。優れた実釣性能を誇るイカメタルゲームのベーシックモデル。ベイトロッドは好みで調子を掛けと乗せから選ぶ。上からK410LB-S、K56ULB-GS、N65LB-GS
エメラルダスMXイカメタルのスピニングモデル。上が20号までのメタルスッテを照明の外側にキャストできるK60LS-S と下がオモリグ用のOR63MLS-S
メタルスッテは20号を中心に揃える
メタルスッテは10~30号を用意したい。使用頻度が高いのは20号前後。スルメイカはケイムラ、蛍光を絡めた派手なカラーを好むので、ケンサキイカをねらうときは、逆にナチュラルで地味なカラーを選ぶ。
水深にもよるが、ナチュラルに見える代表格が赤緑と全赤。どこの釣り場でも安定して釣れるので絶対に持っておきたいカラーだ。また、明るい黄色オレンジやピンクなどを使えばスルメイカの確率が上がる。ドロッパーはジョイントがよく釣れるとのことだが、小振りのエギも用意しておきたい。
エメラルダス イカメタルスッテ。赤緑などの地味なカラーと、真逆のケイムラクレイジーグリーンなどの派手なカラーをそれぞれ持参したい。実釣では10 号から25号の使用頻度が高い
エメラルダス イカメタルドロッパーエギタイプとエメラルダス イカメタルドロッパージョイント。イカの活性を見ながらローテーションさせる
エメラルダス イカメタルリグSS は、ドロッパー仕掛け。枝スの直結仕掛けやキャスト用のショート仕掛け、ダブルドロッパー仕掛けなど、ドロッパー仕掛けだけでもバリエーションに富んでいる
※このページは『つり人 2025年8月号』を再編集したものです。