介護の申し送りとは?実施の目的や記載時のポイントをわかりやすく解説します!
本日のお悩み:介護の申し送りの目的やコツが知りたい!
特養で働いています。夜勤から日勤、日勤から夜勤にシフトを交換する際、次のシフトの人に申し送りをします。
ただ、申し送りはいつも何を伝えればよいのか、どのように伝えればよいのかがわからず、苦手意識があります。申し送りの目的やコツを教えてください。
介護の申し送りの目的を知ったうえでポイントを確認していきましょう!
執筆者/専門家
脇 健仁
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/22
申し送りのポイントを確認する際に知っておきたいのが、申し送りの目的です。
申し送りをなぜ行っているのかについては、私たちのケアの目的と照らし合わせてみてください。みなさんは、それぞれの職場でケアに対しての理念や目的を意識していますか? また、職業倫理として、介護福祉士やホームヘルパーなどの倫理綱領を見たことがありますか?
日々、現場で対応をしていく中で、目の前の利用者さんの課題に向き合う時間が続くと、視野が段々とミクロ化し、そもそも「なぜ、この仕事をしているのか」「持っている資格を、なぜこの職場で活用して働いているのか」というマクロな視点を忘れがちになります。
申し送りは、私たちが職業人として、専門性を発揮するために、法人理念を達成するための手段の一つです。その意識をもってぜひ読んでいただければ幸いです。
介護の申し送りの目的とは?
まず、申し送りの目的について考えていきましょう。
申し送りの目的は大きく分けて2つあります。
1.利用者さんの安全を守るため
まず、1つ目は、利用者さんの安全をまもるためです。
自分の勤務時間中に利用者さんの体調が変化した場合、その変化について次の勤務者に伝えないと、どうなるでしょうか。
例えば、勤務中に利用者さんが転倒したとします。そのことが申し送られず、2週間後に、急に片手に力が入らなくなり、意識レベルが低下したときの判断にどのような違いが出てくるでしょうか。おそらく症状などから、引継ぎがなければ脳梗塞の可能性を疑う場合が多いでしょう。しかし、転倒の引継ぎがしっかりできていれば、転倒後に遅延して発症することがある慢性硬膜下血腫かもしれないという可能性も出てきます。受診し、医師にそのことを伝えることで、迅速な診断につながる可能性があるのです。
また、何も変化が起きていないということも、とても大切な情報になります。発熱者が出た場合、昨日は異常がなかったという引継ぎがあれば、今日からの発熱だということがわかります。当たり前のことですが、利用者さんの安全を守るために申し送りは重要です。
2.チームケアのため
2つ目は、チームケアのためです。チームの定義には「役割が付与される」というものがあります。私たちは共通の目的(理念)達成のために役割があります。
服薬を確認する人、処置をする人、食事介助や入浴介助という様々なケアの中で、それぞれの業務がきちんと遂行されたかどうか、食事量はいつもと比べて変化があったか、入浴時に皮膚のトラブルがなかったなどといった情報は、利用者さんの安全にもつながることはもちろんですが、ケアの方法をそれらの情報から判断する場合もあるので、円滑なチームケアにとっても必要となります。
さらに、引継ぎがない状態で勤務に入ると大きな不安があるままになってしまいますので、この不安の解消においても申し送りは重要です。
介護の申し送りを行う際に知っておきたいこと
申し送りの目的から、申し送りの重要性はご理解いただけたと思います。それでは、実際にどのようなことを申し送り、どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。
ここからは申し送りを行うにあたって知っておきたいことを紹介します。
介護の申し送りの基本構成
まず、申し送りの基本構成は以下の通りです。
それぞれの具体例もあわせて見ていきましょう。
1.利用者さんの名前+状況変化
2.重要な出来事やケア内容
3.引き継ぐべき注意点
●1.利用者さんの名前+状況変化
「Aさんは、昨日14:00の検温で37.5度でした。現在は36.8度ですが、のどの渇きを訴えています。」
●2.重要な出来事やケア内容
「Bさんは、昨晩自室のベッド横で転倒されました。転んだときのことを覚えていなかったようです。起立性低血圧の可能性もあるので、上体を起こしたり、立位をとる際に、急な脱力などに気をつけ、声掛けや表情の観察をしてください。」
●3.引き継ぐべき注意点
「Cさんは、昨晩の夕食から、今朝の朝食にかけて、いつもより食事量が少なく、ともに3割程度摂取されています。排便が5日ないので、看護師に排便コントロールについて相談をお願いします。」
介護の申し送りのポイント
これらの構成から、申し送りを行ううえでおさえておきたいポイントは以下の通りです。
1.簡潔にわかりやすく
2.客観的な事実だけを伝える(自分の気持ちや思ったことなどの主観は入れない。)
3.申し送りミスがないように、できるだけメモを取っておき、申し送り前に要点をまとめておく
4.俗人化しないようにフォーマットなどのシステムを作成する※
そして、とても大切な点ですが、申し送りは自分が行っただけでは意味がありません。相手に伝わったかを確認することがとても重要です。
申し送りが形骸化していると、重要なことを聞き逃すこともあるため、聞いた人は復唱を必ず行うなどの工夫をすると、より正確な申し送りが行えるでしょう。
【※申し送りフォーマットの具体例】
このようなフォーマットを作っておき、「1から4までは確実に伝え、5~9は必要に応じて伝えるようにする」などチームでルールを作っておくと、経験年数などの影響が少なく、申し送りができると考えます。
また、申し送りの方法も口頭、記録(電子媒体も含む)、ホワイトボードなど様々な方法があると思いますので、職場で分かりやすく伝えやすい方法を皆さんで考えてみてください。
最後に:申し送りのポイントをおさえ、質の高い介護を提供しましょう!
介護の申し送りは、利用者さんの安心や、チームケアにおいて重要な役割を果たしています。また、介護の申し送りのポイントをおさえておくことで、どの職員にとってもわかりやすい申し送りが行えるようになるでしょう。
申し送りに苦手意識がある方も、しっかりとポイントをおさえ、利用者さんに質の高い介護を届けていきましょう。
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