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「子どもが友達に暴力を振るってしまった」“キレる子”の暴力をやめさせる3つの方法[児童精神科医が解説]

コクリコ

児童精神科医が説く「キレる子ども」の受け止め方第2回。子どもの暴力・暴言に向き合う方法について。全4回。

【イラストで見る】「次に子どもが暴力をふるったらどう対応するか」を決めておく「枠付け」とは

子どもの暴力行為はここ20年で3倍にもなっています(文部科学省調査)。注目されるのは、暴力の低年齢化。特に小学生の暴力が増加の傾向です。「子どもがすぐに“キレる”。やめさせたいけど、どうすればいいかわからない」の声も多く聞きます。

児童精神科医の原田謙先生が25年以上の臨床でつちかってきた、対応・支援法をまとめた書籍『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』(著:原田謙/講談社)から、今回は「学校でキレて暴力を振るってしまう子」を例に、子どもの暴力・暴言に向き合う方法を一部抜粋してご紹介します。

小学4年生で手加減なしの暴力

小学4年生・Aくんのエピソードです。彼はきょうだいや同級生としょっちゅうケンカをしています。

親や学校の先生によく𠮟られるのですが、注意されても話を聞こうとせず、反抗的な態度を取ることが多いため、大人から「問題のある子」とみなされてきました。学校で先生や同級生から言葉遣いを注意されたとき、イライラして教室の掲示物を破ってしまったこともあります。

同級生を蹴って大きな問題となってしまったケース。  イラスト/めやお『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より

ある日の休み時間に、Aくんはボール遊びのルールをめぐって、同級生とケンカをしてしまいました。最初は軽い口論でしたが、相手を突き飛ばして一騒動に。その後、先生が双方の言い分を聞いたのですが、Aくんは相手の話を聞いて怒り出し、その場で蹴ってしまいました。手加減をしなかったため、相手に怪我をさせ、大きな問題になりました。

学校から家庭に連絡がいき、Aくんは親にも厳しく𠮟られました。親や先生はAくんに反省を促しましたが、彼は納得せず、「自分は悪くない」と言い張りました。最初に悪いことをしたのは相手のほうだと言うのです。相手が悪いのに自分のせいにされたから蹴飛ばしたと主張します。

Aくんのような例では、最初はきょうだい、一般には下の子への暴力が出てくることが多いです。それがだいたい幼児期から小学校低学年のころです。その後、暴力が減っていけばよいのですが、キレる子どもの場合、対象が同年代の他の子に広がっていくことがあります。

Aくんの事例のように、同級生を蹴ったりするのです。それを放置していると、やがて教師にも手を上げるなど、暴力をふるう対象が拡大していきます。教師の次は母親、その次には父親にも暴力が出るというのが、悪化した場合の典型的なパターンです。大人に手を上げるようになったら、問題はかなり深刻だといえます。

きょうだいや友達とのケンカは、どの子にも多少は見られます。しかしそれが小学校中学年以降にも頻繁に起こっていて、ときには激しい暴力も発生しているのであれば、なんらかの対応が必要です。キレる行動は、放っておけば悪化する可能性があります。

暴力があるのは危機的な状況

大人は、子どもの暴力に屈してはいけません。暴力があるというのは危機的な状況です。子どもの力でも、誰かを叩けば相手に怪我をさせる可能性があります。本人が怪我をすることもあるでしょう。

また、威嚇(いかく)するような暴言を繰り返していたら、周囲の人は恐怖や不安を感じます。同級生がおびえて学校に行けなくなるかもしれません。暴力や暴言を見過ごさないでください。特に暴力への対応は重要です。

ただ、マグマがたくさんたまりすぎて限界がくると噴火します。そうなると、周辺地域に被害が出ます。それと同じように、人間も怒りの感情を内にため込むと徐々に苦しくなり、やがて限界がきてキレてしまいます。そのときには、人に怪我をさせたり、物を壊したりすることもあるのです。

毅然とした態度で対応する

子どもが暴力をふるっているときには、その子を刺激しないように、おだやかな声で話しかけてください。声をかけて落ち着かせましょう。

そうすることが難しい場合には、大人が静かに体を寄せて、子どもの暴力を止めます。それも難しければ、キレている子ども以外の全員がその場所を離れて、暴力の被害を受けないようにします。

子どもは暴力や暴言によって相手を黙らせることを経験すると、次も同じ方法を取ろうとします。暴力や暴言がまだ軽い段階から、毅然とした態度で対応していきましょう。大人も気持ちが揺れることがありますから、「いつも毅然とした態度を取るのは難しい」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、「枠付け」をすれば、子どもの言動に対してブレない姿勢を示すことができます。「枠付け」は「毅然とした態度」を貫くうえでも重要なのです。

【枠付けとは?】
家庭では家族で、学校では教師間で話し合い、「次に子どもが暴力をふるったらどう対応するか」を決めておくこと。

「枠付け」のやり方「次にキレたときの対応」の枠組みを話し合い、決めておきましょう。  『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より

ここでは、暴力を止める方法として、「クールダウン」「タイムアウト」「タイムイン」の3つを紹介したいと思います。

暴力の止め方①クールダウン
暴力がおさまっても、子どもはまだ興奮状態にあります。そこで大人が「どうしてあんなことをしたの?」などと問いただすと、子どもは責められたと感じて、また怒り出してしまうこともあります。

子どもが興奮しているときには、大人が声のトーンを落として話しかけ、クールダウンを促しましょう。興奮している子は、自分がカーッとなっていることを自覚していない場合があります。大人が「頭にきているみたいだね」と声をかけて、子どもに自分はいま興奮しているということを意識させましょう。

「クールダウン」大人が声をかけてきっかけをつくろう。  イラスト/めやお『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より

子どもが自分の興奮状態に気づき、音楽を聴くことなどができれば、熱くなっていた気持ちはクールダウンしていきます。

・場所や活動を切り替えると、やりやすい
子どもは、怒りを感じた相手がいる部屋では、クールダウンできないものです。クールダウンをするときには「場所」や「活動」を切り替えましょう。例えば、リビングルームで家族と話しているときにキレてしまったら、子どもは自分の部屋に移動して、別の活動でクールダウンをします。「どこに移動して何をするのか」も、事前に話し合って決めておくとよいでしょう。

暴力の止め方②タイムアウト
「ちょっと部屋で落ち着いておいで」と声をかけても、子どもがひどく興奮していて反発することもあります。子どもがクールダウンできそうにないときは、大人のほうが切り替えて「タイムアウト」を行いましょう。

「タイムアウト」というのは、一時中断を意味する言葉です。スポーツで、試合を止めるために「タイム」と言うことがあります。スポーツでは試合を中断して、戦術を確認したり水分補給を行ったりするわけですが、それと同じように、子どもが興奮していて暴れ出しそうなときには、タイムアウトを取って状況を変えるのです。

「タイムアウト」大人が子どもを別の場所につれていこう。  イラスト/めやお『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より

子どもが母親と言い争いをしたときには、父親が別の場所へ連れていきます。第三者が対応したほうが、子どもも気持ちを切り替えやすくなります。学校で子どもが担任の先生にキレた場合には、他の先生が対応したほうがよいでしょう。

小学校中学年くらいまでは子どもを大人一人で他の場所へ連れていけますが、それ以上の年代では、抵抗された場合に一人では対応できないかもしれません。家庭では両親、学校では複数の先生が協力しながら対応するのが現実的です。事前に大人どうしで、そのような話し合いをしておくとよいでしょう。

暴力の止め方③タイムイン
子どもが一人で気分を切り替えられればよいのですが、誰かが近くにいたほうが落ち着きやすい場合もあります。本人に一人でいたいか、それとも一緒にいたほうがよいかを聞いてみてください。子どもが誰かと一緒に過ごしながら落ち着く方法を「タイムイン」といいます。他の人から強制的に離すタイムアウトに対して、人と一緒にいることがポイントです。

「タイムイン」一人でいたいか、誰かと一緒にいたいか、は本人に決めさせよう。 イラスト/めやお 『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より

例えば子どもが父親とケンカをしたのなら、母親が子どもを連れ出して一緒に他の部屋に行き、気分転換をします。お茶を飲んだり、おやつを食べるのもよいでしょう。おしゃべりをしてもよいのですが、キレたことを話題にするのは避けてください。

「さっきはどうしたの?」などと質問すると、子どもを興奮させてしまう可能性があります。問題を振り返るのは後回しにして、まずは緊張をやわらげることを心がけましょう。

子育ての問題として相談してみよう

子どものキレる行動に困ったときには、家族だけで抱え込まず、第三者に相談しましょう。主な相談先は子どもの通っている学校や、市町村の子育て・教育関係の窓口、児童相談所です。

「子どもがキレやすくて、接し方に困っている」「暴力や暴言を防ぎたい」といった悩みを子育ての問題として相談し、助言を受けることができます。学校や地域での対応例を聞いて、参考にすることもできます。困ったときにはぜひ相談してみてください。学校や市町村、児童相談所に相談するなかで、病院につながる場合もあります。

決定的な問題が起きてからではなく、少しでも悩んだら早いうちに相談を。  イラスト/めやお『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より

病院にはさまざまな診療科がありますが、子どものキレる行動を相談しやすいのは児童精神科です。一般の小児科や、発達障害の診療を行っている「発達外来」なども、相談を受け付けている場合があります。生活面の悩みを相談したり、発達障害の可能性を聞いたりすることができます。

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次回は、〈衝動的にキレる我が子 これって発達障害なの?〉についてご紹介します。

構成/佐々木奈々子

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■今回ご紹介の書籍はこちら
キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』(著:原田謙/講談社)
児童精神科医の著者が25年以上の臨床で培ってきた、キレる子どもへの対応・支援法を、マンガを交えて解説します。

「暴力の止め方」「話の聞き方」「ほめ方・𠮟り方」「発達障害の場合」など、ノウハウ的な接し方だけでなく、子どもと向き合うときに意識したい大人側の心構えも重要。ブレない姿勢で、子どものこころに寄り添いながら対応をしていくことで、キレる行動は減っていくでしょう。本書では事例をマンガで紹介しながら対応のしかたを解説。子どものこころに寄り添う対応法がわかります。

『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』(著:原田謙/講談社)

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