物語にうねりを起こす「感謝」の感情表現をするためのコツは?【プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑】
NO.19 感謝【かんしゃ】[英:Gratitude]
【意味】
心からありがたいと思う気持ち。恩恵や利益を受けたことにお礼をいうこと。
【類語】
謝意 謝辞 謝恩 謝儀 深謝 奉謝 お礼 ありがたさなど
体(フィジカル)の反応
自然と涙が流れ出る目がキラキラと輝く温かみを含むまなざしほほ笑み、明るい表情上ずった、興奮した声色お礼の言葉をいう腰を深く曲げておじぎをする胸に手を当てる相手の手をぎゅっと握る相手の肩や腕に触れる相手にハグをする深くうなずく相手にプレゼントを用意する喉の奥で言葉が詰まる
心(メンタル)の反応
胸に何かがこみ上げてくる感覚心がいっぱいになる全身の筋肉の緊張がほぐれる顔や手足がじんわりと温かくなる痛みを感じなくなる優しい気持ちになる自己肯定感が上がる相手が喜ぶことをしたいと思う体内に熱い血がめぐる感覚溢れ出るさまざまな気持ちを抑えようとするこの気持ちをずっと忘れずにいたいと望むそれまでの辛さや苦しさが胸の内からすっと消えるまわりへの信頼や信用が大切だと感じ入る
〝悪役がじつは善人〟パターンは「感謝」の言葉で成功する
明らかに好印象を与える行為「感謝」ですが、誤った使い方に陥りがちなので注意しましょう。まず「感謝」の多用はご法度です。主人公のいい人キャラを演出したいがため、誰彼構わず「感謝」してしまうと、ただの〝軽い奴〟に成り下がってしまいます。
主人公が感謝するのは、仲間が絶体絶命の窮地から救ってくれたときや、ラストでの感動的場面といった〝ここぞ〟の一回にとどめます。 また、あからさまに「感謝」の言葉をくどくど述べると、押しつけがましい印象を与えてしまいます。さりげないひと言だけでOKです。そのほうがシャイな雰囲気や本音を押しとどめる奥ゆかしさが演出され、ナチュラルにキャラ印象がアップします。
一方で効果的なのは、ライバル的悪役キャラが、ふとしたタイミングで「感謝」するシーン。いい意味で読者の期待を裏切る、〝悪役がじつは善人〟パターンは「感謝」の言葉をいわせるだけで読者をホロリとさせ、成功する場合があります。
「感謝」は言葉にしなくてもいろいろな形で表せる
自然と涙が流れ出る/相手にハグをする/優しい気持ちになる
【出典】『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』著:秀島迅