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【ミリオンヒッツ1995】L⇔R「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」黒沢健一&黒沢秀樹の兄弟バンド

Re:minder

1995年05月03日 L⇔Rのシングル「Knockin‘on your door」発売日

リレー連載【ミリオンヒッツ1995】vol.4
KNOCKIN' ON YOUR DOOR / L⇔R
▶ 発売:1995年5月3日
▶ 売上枚数:134.5万枚

チャートにおいても存在感を見せていたL⇔R


気分爽快になる楽曲を上げてくださいと訊かれたら、頭に浮かぶ楽曲のひとつーー それがL⇔Rの「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」である。

1995年。年明け間もない1月17日に阪神淡路大震災が起き、3月にはオウム真理教の地下鉄サリン事件が発生した。昼間のテレビはほぼ1日中この話題を流し、世相はどこかどんよりとした雲が垂れ込めていた。その頃の日本の音楽、J-POPの世界では、ビーイング系や小室哲哉作品を中心とした、派手めで音がみっちりと詰まった隙のないサウンドのヒット曲がテレビ、ラジオから流れ、オリコンチャートの頂上はそういった楽曲による椅子取りゲームの様相を見せていた。

一方で、小沢健二や奥田民生といったアコースティックな響きや隙間のある音像が印象に残る職人たちも活躍。また、前年にブレイクしたMr.Childrenやブレイクを待つスピッツ等のロックバンド、本コラムの主役であるL⇔Rもその一角で「Hello, It’s me」でスマッシュヒットを放ち、チャートにおいても存在感を示してていた。そんな中でリリースされたのが、この「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」。1995年5月3日発売、5月15日付のオリコンチャート初登場1位を飾った。それはまるで雲の隙間からスカッとした青空と風が通り抜けていく瞬間のようだった。

初登場で1位をもぎ取った「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」


1991年にポリスターレコードからデビューしたL⇔Rのプロデューサーである岡井大二は黒沢健一のことを “大滝詠一や山下達郎の系譜を継ぐポップスおたく” と称していた。デビュー当時から、いわゆる音楽通といわれるリスナーから注目されていた黒沢健一が “アタマからガツン!とくる売れる曲を” と言われ勢いで作ったのが「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」。1995年に放送されたフジテレビ系ドラマ『僕らに愛を!』のタイアップで書かれた曲だった。

タイアップの助けはあったとしても、初登場1位をもぎ取った楽曲の魅力は、なんといってもスカッとした明るさにある。以前、スピッツの草野マサムネが自身のラジオ番組『ロック大陸漫遊記』でL⇔R特集を組んだとき(TOKYO FM系 / 2024年9月1日O.A.)、“パッとしてる。聞いたらスカッとする” “当時L⇔Rが羨ましかった” と語っていた。

タイトル通りドアをノックするような、ステレオの左(L)チャンネルから右(R)チャンネルにかけてドカン!と破裂するようなドラムはまさに “L⇔R”。自己紹介のようなこのドラムの直後、黒沢健一が歌う、
「♪I’m Knockin‘ on your door」はまさにドアを開ける瞬間。ド頭からメロディでもドアを叩き、聴く人の心の扉を開かせる。

黒沢健一が書いた爽快なサビで始まる、この人懐っこくキャッチーなメロディは、歌のどこを聴いても親しみやすく、どこか懐かしい60’sの香りを纏っている。それはビートルズだったり、モータウンだったり、1995年当時は既に年を重ねていた大人であっても、青春時代の郷愁を覚えるものだったのではないだろうか。加えて、楽曲の調性がやわらかいF(ヘ長調)であることで、より親しみやすさが増している。

洗練された華のあるボーカリスト、黒沢健一


もうひとつ魅力的なのは、作詞・作曲を担当しリードボーカルをとる黒沢健一の歌声だ。黒沢の声は、甘く、艶があり、みずみずしい透明感を持ち、爽やか。優しい中にほのかな少年性まで併せ持っている。​​加えて高音域も広い。男性にキュートという言葉を使うのはちょっと変かもしれないが、藤井フミヤにも通じる、洗練された華のあるボーカリストだと思うのだ。この多彩な魅力を持った声で言葉を感情豊かに届ける。特に “い” の音が耳についてゾクゾクしてたまらない。

そして、そのキャッチーなメロディを支えるサウンドも、演奏、殊に見事なリズム隊が飽きさせない。変化に富んだソウルフルなベースは、その音を追いかけているだけでも楽しい。存在感の強いドラムスはどこから何が出てくるのだろうというワクワク感があるし、華やかなベルといい、あちこちでいろんな音が聴こえてくるのが楽しい楽曲だ。ドアを開けるドラムスの音が毎回違うように聴こえて、3分18秒はあっという間に終わってしまう。シンプルゆえに多くの人に受け入れられた作品なのだろう。リリースから30年経っても、時代性を感じさせない。

黒沢健一は2016年に48歳の若さで亡くなってしまったが、近年は弟の黒沢秀樹が歌い継いでいる。YouTubeで観た、町田まほろ座でのライブでは、黒沢秀樹が成瀬英樹と一緒にアコースティックギターを “コンコン” と叩きつつ優しい声で唄っている。黒沢秀樹のバージョンも、シンプルさが際立っており、優しく励ましてくれるような味わいを感じさせていて、激動の2020年代にフィットした楽曲になっている。

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