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山口市駅通りに誕生!本とアートが織りなす大人の隠れ家 山口市「文鳥堂」

山口さん

山口市駅通り、中心商店街から一本裏の通りにひっそりとたたずむ「文鳥堂」(山口県山口市駅通り2-1-3)。2025年4月25日にオープンしたばかりのこの書店は、一般的な本屋さんとは一味違います。山口市内でもここ5年の間に多くの書店が姿を消していく中、新たに誕生したこの個人セレクト書店は、地域の文化を守る灯火のような存在です。

取り扱うのは新書や古本はもちろん、個人が制作するZINE(ジン)やリトルプレス、さらには新品の本が半額で購入できる自由価格本まで。写真集やデザイン系の本が多く、思わず手に取りたくなる珍しい本との出会いが待っています。店主・藤田良三さん(67歳)の趣味とセンスが光る、本とアートが共存する空間をご紹介します。

呉服屋だった建物に本とギャラリー空間

夕方になるとオープンする「文鳥堂」。扉を開くとそこは新たな出会いに満ちています。

店内のあちこちに据え付けられた本棚にはさまざまな本、そして、絵画や工芸品などのアート作品が共存しています。窓際にはサボテンなどの多肉植物もずらり。

特筆すべきは、店の奥にある靴を脱いで上がる畳の広いスペース。元々呉服屋だった建物のつくりをそのまま活かしているそうで、どこか懐かしさを感じさせます。ここにも本や美術品が並び、ソファも設置されているので、ゆっくりと読書を楽しむことができます。

「ここで本を読むのも自由ですよ」と藤田さん。本屋でありながらギャラリーとしての魅力も兼ね備えた空間は、ゆったりとした時間を過ごすのにぴったりです。

「面白い本」との出会いを求めて

「どこでもある本屋についポンと置いてあるような本では面白くない。自分が見て面白いと思う本じゃないとやっぱり嫌だから。」

そう話す藤田さん。大手出版社の本よりも、小さな出版社や「ZINE(ジン)」「リトルプレス」と呼ばれる個人や小規模団体が制作する本を中心に、ジャンルを問わず3,000冊ほどを取り揃えています。

なかでも「アートとか美術がやっぱり好きなんです」と話す通り、江戸時代の絵画や写真集などデザイン系の本が多く並びます。

また、新品の本が半額で購入できる自由価格本のコーナーもあり、掘り出し物を見つける楽しみも。

藤田さんにお気に入りの本を聞いてみると紹介してくれたのがこちら。

『写真で見る小さな生きものの不思議』皆越ようせい著(平凡社) 税別2,400円(自由価格本のため店頭では税別1,200円) 

「小さな生きものの形はどれも面白く見飽きないですよ。」とその魅力を教えてくれました。

本の仕入れは、インターネットで調べ、出版社などと直接契約を結んで行っているそう。また、「ZINE」の作者にメールで連絡を取り、直接仕入れることもあるといいます。

「昔は本屋が出版社の言いなりでした。出版社が無理やり本を送りつけて、売れなかったらまた送り返す。出版社の奴隷みたいなものでした」と藤田さん。しかし今は状況が一変。「書店が減りに減っているから、大きな出版社でも代理店でも、僕みたいにぽっと始めたようなところでも大事にしますよ」と語ります。

そんな事情もあり、「書店を始めるのは簡単だった」と話す藤田さん。「今年中に5000冊を目指したい」と意気込みます。

科捜研から本屋へ—異色の経歴を持つ店主

藤田さんは長門市出身。山口県警察の科学捜査研究所で39歳まで勤務した後、「人に使われるのが嫌だった」という理由で退職し、社会保険労務士として独立されました。

「大学には4年間でほとんど行かなかった」と笑いながら話す姿からは、自由な発想と行動力が感じられます。

社労士としての仕事を続けながら、67歳という年で新たな挑戦として始めた「文鳥堂」。毎日、夕方まで社労士として働き、その後お店をオープンするという一見ハードな生活ですが、藤田さんに聞くと「楽しいですよ。」と即答。詳しく聞くと、その背景には藤田さんの長年の趣味があったのです。

ギャラリーの夢から本屋の実現へ

「元々はギャラリーをやろうと思っていたんです。」

と藤田さん。実は10年ほど前から美術品の収集を始め、特に北九州市の「門司美術工芸研究所」の作品に魅せられていたそうです。

「若手芸術家の育成のためにある研究所で、そこの所長の作品がすごく好きで」と目を輝かせます。

転機が訪れたのは昨年12月のこと。井筒屋小倉店を訪れた際、生活用品売り場にある本コーナーを見て、「自分でも本屋をやりたい」と思いついたのだそう。

そこからの展開は驚くほどスピーディ。12月上旬に現在の店舗を見つけ、12月半ばには購入を完了。年末から内装工事に入り、出版社などと連絡を取って本を仕入れ、わずか4ヶ月後の2025年4月25日に「文鳥堂」をオープンさせました。

ふらりと立ち寄る楽しさ

取材中にはたまたま近くを通った大学生がふらりとお店に立ち寄りました。彼女は藤田さんと楽しく会話しながら、店内の本を物色。「見たことのない本ばかり!」と目を輝かせていました。

「買わなくても全然いいですから、気楽にふらっと立ち寄ってほしいんです」と藤田さん。お店を「たまり場」のような場所にしたいという想いを持っています。土日には、7〜8人が同時に訪れることもあるそうです。

店内ではコーヒーやハーブティーも250円という手頃な価格で提供されており、ゆっくりと本を読みながら過ごすことができます。

「遊び」から生まれる、新しい文化の発信地

藤田さんにとって「文鳥堂」は商売というよりも「遊び」だといいます。

「本1冊で何百円、200円、300円の世界ですから、話にならないですよ」と笑う藤田さん。社会保険労務士として安定した収入があるからこそ、利益にこだわらず自分の好きな本だけを置く書店を経営できるのです。それでも「売れたらやっぱり嬉しい」とも語ります。

店名の「文鳥堂」は、藤田さんが文鳥を好きだからというシンプルな理由から。ロゴも自分で考えたものだといいます。

「文鳥堂」は単なる本屋ではありません。藤田さんの個性と美意識が詰まった、山口市の新しい文化スポットです。ユニークな本との出会いを求める方、アートに触れたい方、そしてちょっとした寄り道や新しいカルチャースポットを探している方にぜひ訪れてほしい場所。きっと「ここでしか出会えない一冊」や、ちょっと嬉しい発見が待っています。

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