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国立西洋美術館が題材の絵本『森のはずれの美術館の話』刊行。子どもも大人も美術館が好きになる物語

イロハニアート

はじめて美術館を訪れた日のことを、覚えていますか?

『森のはずれの美術館の話』

窓口で学生証を見せて、ドキドキしながらチケットを買った、あの日。図書館よりも静かな展示室で、パンプスの足音をできる限り小さくしようと、足首に力を入れて一歩ごとにそっと着地した。館内を満たす独特なにおいの正体はわからないけれど、年月を経た絵具が醸す何かだろうと、勝手に結論づけて心の中で頷く。

大小さまざまな絵画が等間隔に並ぶ壁。その中に、どうしても目が離せない一枚の絵画を見つけてしまい……。

美術館が好きな人には、懐かしい記憶を。美術館に行ったことがない人には、甘美な体験の想像を。

贈り物のように届けてくれる絵本が誕生しました。

“東”と“西”が見つめ合う特別な場所を描いた絵本


『森のはずれの美術館の話』

2025年8月刊行の『森のはずれの美術館の話』は、国立西洋美術館を題材にした絵本。

小説『西の魔女が死んだ』などで知られる作家・梨木香歩さんによる文章と、絵本『リサとガスパール』シリーズを手がける画家・ゲオルグ・ハレンスレーベンさんのぬくもりのある絵によって、時空を超えた西洋と東洋の心の交流が描かれます。

『森のはずれの美術館の話』

国立西洋美術館は、1959年、上野の森のはずれに開館した西洋美術に特化した美術館です。現在は、絵画や彫刻をはじめとする約6000点の美術品を収蔵。ル・コルビュジエが設計した建物(本館)は、2016年に世界遺産にも登録され話題となりました。

東洋に現れた「西洋への窓」と言える国立西洋美術館で、コレクションの数々は「西洋のかけら」としてきらめいています。つまり絵本の舞台は、“東”と“西”が見つめ合う特別な場所。人が絵と結ばれることの喜びと、大切なものを見出すことの幸せが、丁寧に紡がれています。

第1部「電車に乗って美術館にきた ある母子の話」


『森のはずれの美術館の話』

絵本は2部構成で、第1部は「電車に乗って美術館にきた ある母子の話」。ある日、美術館を訪れた男の子が、お母さんとはぐれてしまうところから始まります。

男の子が出会ったのは、あひるの親子と瞳が印象的な女の子、そして謎めいた紳士。彼らに導かれて美術館をめぐるうちに、静かにじっと絵を見つめている人々が本当は何をしているのかを知ることになります。

『森のはずれの美術館の話』

「ひとが 絵と ふかく むすばれる ここには そういう ねがい が こめられている」

主人公の男の子の目を通して、美術館に満ち満ちているロマンに触れられる本作。美術館がどういうものか知らない人にはファンタジーを、よく訪れる人には在りし日に味わった初めての記憶を連れてきてくれるのではないでしょうか。

平易な文章ですがハッとする語彙もあるので、小さい子の読みやすさと学びを両立しようと追求している作品だと感じました。

第2部「西洋美術館クロニクル」


『森のはずれの美術館の話』

第2部「西洋美術館クロニクル」は、第1部から数年後の未来を舞台にした物語。語彙がレベルアップするので、小学校高学年から中高生、そして大人の皆さまに読んでほしいエピローグです。

作中で描かれるのは、美術館が生まれるまでの歴史。建築家の矜持、西洋の誇りと脅威を象徴する“竜”の存在、絵を見る人、絵を守る人々……。ファンタジーと現実が交錯する物語が詩的に語られます。

本書の刊行に際し、文章を手がけた梨木香歩さんは以下のコメントを寄せています。

この物語創りに着手する前に考えていたことは、収蔵作品の最初のコレクターや戦時中それを守り通した人、さらに確固たる伝統芸術がすでに根付いているこの国に、西洋美術の殿堂となる建物を依頼された建築家の意気込みと自負……多くの人びとの思いが畳み込まれた美術館の物語であるとともに、絵を見るためにやってきた、たった一人の物語でもなくてはならない、ということでした。

『森のはずれの美術館の話』

本作は、美術館に関わる多くの人々の物語でもあり、美術館を訪れたたった一人の「私」の物語でもあります。魅了される絵画も人それぞれで、絵画と私、絵画とあなたの間にはさまざまなストーリーがあるはず。

絵本の向こうには夜空にまたたく星の数ほどの絵画があって、人と出会って物語が始まるのを待っている…。そんな風に思える、大切な絵本が誕生しました。

書誌情報


◆森のはずれの美術館の話

価格:税込2,200円(本体2,000円+10%)
文:梨木香歩 
絵:ゲオルグ・ハレンスレーベン
編集:永岡綾 装幀:名久井直子 写真:木村和平
協力:国立西洋美術館
印刷・製本:TOPPANクロレ株式会社
仕様:B5変型、上製、50ページ
ISBN:978-4-908356–70-4

●販売スケジュール
2025年8月5日(火)国立西洋美術館ミュージアムショップにて先行販売
2025年8月20日(水)全国の一般書店で発売開始

●取扱店
全国の書店
国立西洋美術館ミュージアムショップ
オンライン販売

国立西洋美術館では限定特典として、表紙「夜」版に加え、特別仕様の「昼」版も販売中です。

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