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「ウナギの蒲焼」約4割が北中米産<アメリカウナギ> DNA分析で明らかに

サカナト

ウナギ(提供:PhotoAC)

古くから日本で親しまれている「ウナギ」。

ウナギの仲間はニホンウナギ Anguilla japonica のほか複数種が知られており、世界各地で消費されています。

しかし、ウナギの多くが資源を減少させており、特にニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギは絶滅危惧種であるにもかかわらず、違法な漁業や取引が後を絶ちません。ウナギ資源の持続的な利用のため、関連国・地域による連携が求められています。

そのような中、公益財団法人世界自然保護基金ジャパンと中央大学は、ウナギの取引・流通に関する最新データをまとめたファクトシートを発表。DNA分析では使用したサンプルの約4割がアメリカウナギであることが判明しています。

世界各地で消費されるウナギ

ウナギは日本だけではなく、世界各地で広く消費されています。

普段、我々が食べているウナギの多くは稚魚(シラスウナギ)を漁獲し養殖したものであり、完全養殖が商業化されていない現在、すべてのウナギが天然由来の個体です。

また、日本では養殖に必要なシラスウナギを賄うことができないため、毎年、シラスウナギを輸入しています。

ウナギ(提供:PhotoAC)

現在、世界で知られるウナギ属16種のうち、多くの種で資源量が減少。特にヨーロッパウナギはIUCNレッドリストでは「近絶滅種」、ニホンウナギとアメリカウナギは「絶滅種危惧種」に指定されています。

ウナギの持続的な利用には、日本はもちろんのこと、ウナギの生息国・地域の協力が欠かせません。

蒲焼の約4割がアメリカウナギ

そうした中、公益財団法人世界自然保護基金ジャパンと中央大学は、ウナギの取引・流通に関する最新データをまとめたファクトシートを発表しました。

ウナギ類の資源管理・流通の現状について(提供:公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)

中央大学が行った調査では、2024年に日本の小売店で販売されているウナギの蒲焼133点をDNAを用いて種判別。61.7%がニホンウナギ、36.8%がアメリカウナギ、1.5%がヨーロッパウナギであることが判明しました。

また、調査対象のうち、国産ウナギ51点はすべてニホンウナギであったものの、中国産輸入ウナギ82点の半分以上がアメリカウナギで、残りはニホンウナギ、僅かにヨーロッパウナギが含まれている結果となっています。

不明瞭なアメリカウナギの取引

アメリカウナギは、カナダからカリブ海にかけて生息するウナギで、大西洋のサルガッソー海で生まれます。

本種は、北米で先住民による伝統的な利用が行われるほか、黄ウナギや銀ウナギがヨーロッパへ輸出されていたそうです。2010年代前半には、ニホンウナギのシラスウナギの採捕量減少やワシントン条約によるヨーロッパウナギの規制によりアメリカウナギの需要が高まりました。

香港へのウナギの稚魚の輸入元(2022年)(提供:公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)

需要が高まれば価格も高騰し、違法漁業が増加。2020年頃からはカナダで違法漁業が急増し、社会問題になっています。

実際、カナダで許可されているシラスウナギの採捕量は約10トンにもかかわらず、2022年には約43トンのシラスウナギが香港に輸入されているのです。

需要が高まり他国も参入

アメリカウナギの採捕はカナダだけにとどまりません。

養殖需要が拡大したことにより、従来、ウナギの採捕が行われてこなかったハイチ、ドミニカ共和国、キューバなどカリブ海諸国でも、シラスウナギの採捕・輸出が行われるようになりました。

採捕されたシラスウナギは北米を経由して輸出されますが、一部はアメリカ・カナダ原産として香港を経由し東アジアに再輸出されていることから、実際の取引状況が不明瞭だといいます。

蒲焼から種を判別することは困難

これらの北中米諸国で採捕されたアメリカウナギの稚魚はほとんどが香港を経由し、中国で養殖されていると考えられています。

日本の小売店で販売されているアメリカウナギも、北中米から東アジアへ輸入された後、中国で養殖されたものが活魚や加工品(蒲焼など)で日本の市場に届けられています。

蒲焼の状態でウナギがどの種なのか判別することは難しく、知らずのうちにニホンウナギ以外の種を食べている可能性があるのです。

ウナギを持続的に利用するためには

発表されたファクトシートでは、ウナギの保全・持続的な利用の解決案として、国際資源管理の実現やウナギ類の流通の透明化、IUU(違法・無報告・無規制)漁業の廃絶が有効とされています。

日本を含む東アジアに消費の中心があるウナギは、消費国だけではなく輸出入により様々な国が関わっていることは明らかです。ウナギを持続的に利用していくためにも、関連する国々の連携が不可欠であり、国際的な法的管理が求められています。

ファクトシートはWWFジャパンの公式WEBサイトからダウンロードすることができます。

(サカナト編集部)

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