『パラサイト 半地下の家族』にも出演した亡きイ・ソンギュン主演、橋上のパニック映画『プロジェクト・ サイレンス』の大迫力に圧倒される
まったく個人的感想だが、韓国映画に圧倒されている。サスペンス・ミステリーという分類ではあっても、記憶に残っている作品のほとんどが政治的背景をベースにした社会派サスペンス、民主化に向かう国内の騒乱など惜しげもなく国家の恥部をさらけ出して余りある。それだけにリアルなアクションに凄みがあり、ひと時も目が離せないのだ。
『ソウルの春』(2023年)、『モガディシュ 脱出までの14日間』(2021年)、『KCIA 南山の部長たち』(2019年)、『パラサイト 半地下の家族』(2019年)、『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年)、『グエムル 漢江の怪物』(2006年)…どれも期待を裏切らない作品だった。
本作『プロジェクト・サイレンス』もまた〝ディザスター・パニック〟の大迫力をリアルに描いて観る者を圧倒する。その陰で国家の陰謀も臭わせながら、いかにも韓国映画の臨場感溢れる大作を楽しんだ。
360°海に囲まれた濃霧の空港大橋で災厄の連鎖は起こった。国家安保室の行政官ジョンウォン(イ・ソンギュン)は留学する娘を空港へ送る途中だった。橋上で激しい玉突き事故が発生したのだ。有毒ガスを運搬中のタンカーが横転し、辺りに蔓延する有毒ガスの中にもかかわらず、救助のヘリコプターも墜落。時を経ずして電波も喪失し通信障害まで発生する。このパニックに巻き込まれたジョンウォンは娘の生命とともに次々と起こる災厄の連鎖にさらされる。橋は爆発による崩壊の危機寸前となり、取り残された生存者116人。
逃げ場のない絶望的な状況の中、移送されていた軍事用に特殊な能力を詰め込まれた実験体「エコー」(獰猛犬)が壊れた運搬車から脱走する。政府の機密計画「プロジェクト・サイレンス」とは、軍事実験体エコーのことだった。エコーは人間の音と声を聞き分け、匂いと体温を察知することができ、標的を確実に仕留めることができる。一寸先も見えない霧闇の中、「プロジェクト・サイレンス」責任研究員ヤン博士の制御も不能になったエコーが標的とするのは、橋上で右往左往するばかりの生存者だった……。
地獄絵図と化した橋上で巡り合わせたレッカー車の運転手チョパクとその愛犬ジョディ、海外旅行から帰国したばかりの老夫婦ビョンハクとスノク、海外遠征に向かおうとしていた女子プロゴルファーのユラとマネージャーの姉ミラン、そしてエコーを密かに開発し移送責任者であったヤン博士たち。極限状況に置かれた彼らは、この絶体絶命の危機から脱出できるのか。
大迫力の映像によるディザスター・パニック、一瞬の油断が命取りとなる緊迫のスリラー、胸を打つエモーショナルな人間ドラマ、そして国家の陰謀うごめくサスペンス。あらゆるジャンルを融合して、かつてないストーリーを創り出したのは、韓国映画界の次代を担う気鋭の監督キム・テゴン。製作費185億ウォンを投じた超大作に挑んだ。
主人公のジョンウォン役は、『パラサイト 半地下の家族』や『最後まで行く』などのイ・ソンギュン。2023年12月に惜しまれながらこの世を去った名優にとって、本作は生前に撮影を終えていた作品のひとつ。
共同脚本には『新感染 ファイナル・エクスプレス』のパク・ジュスク、『神と共に』シリーズ監督のキム・ヨンファという超強力タッグ。ほぼ全編が橋上で展開するというストイックな構成に緻密な伏線を張りめぐらせ、極限下の人間心理をじっくりと描き込んだ。また、撮影監督は 『パラサイト 半地下の家族』のホン・ギョンピョ。登場人物とともにカメラも疾走し、観客も橋上の混沌に放り込まれるかのごとく臨場感あふれる映像体験を実現した。さらに『神と共に』シリーズなどで知られる韓国No.lのVFX制作会社デクスタースタジオが、目を見張るパニックシーンから、軍事実験体・エコーの繊細な質感までをリアリティたっぷりに描き出している。
第76回カンヌ国際映画祭ではミッドナイトスクリーニング部門へ正式出品され、韓国では初登場No.lの大ヒット。数々の話題作が続く韓国映画界から、衝撃の〈ブリッジ・パニック・スリラー〉が日本にやって来る。
『プロジェクト・ サイレンス』
2025年2月28日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ/ショウゲート
◎2024 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED
https://projectsilence.jp/