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介護タクシーを利用するには?初めての方向けに料金・手続き・保険適用を徹底解説

「みんなの介護」ニュース

藤野 雅一

通院や外出に不安を抱える高齢者や要介護者にとって、介護タクシーは心強い味方となります。しかし、「介護タクシーは高額なのではないか」「介護保険は使えるのか」「家族の付き添いは必要なのか」など、初めて利用する方には不安な点も多いでしょう。

この記事では、介護タクシーの基本的な知識から利用方法、料金体系まで、初めて利用する方向けにわかりやすく解説していきます。

介護タクシーの基礎知識と利用できる条件

介護タクシーとは何か:一般タクシーとの違いを解説

介護タクシーとは、要介護者や身体が不自由な方の移動をサポートする特別なタクシーサービスです。実は「介護タクシー」という名称は通称で、正式には介護保険制度における訪問介護サービスの一つである「通院等乗降介助」に該当します。

一般のタクシーと大きく異なる点は、主に以下の3つです。

第一に、特殊な車両設備を備えていることです。多くの介護タクシーでは、車椅子のまま乗車できるリフトやスロープ付きのワンボックスカーを使用しています。また、寝たきりの方のための専用ストレッチャー(移動式担架)を搭載した車両や、高齢者の乗り降りをサポートする90度回転シート付きの車両など、利用者の身体状況に応じた様々な福祉車両が用意されています。酸素ボンベなどの医療機器にも対応できる設備を備えた車両もあり、状況に応じて選択することができます。

第二に、運転手が専門的な資格を持っているという点です。介護タクシーのドライバーは、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)以上の資格を必ず持っています。これは単なる資格要件ではなく、移乗介助の技術や高齢者・障害者とのコミュニケーション能力、緊急時の対応力など、実践的な介護の知識と技術を持っているということです。そのため、乗車前の着替えの介助から、通院先での受付介助まで、移動に関わる一連の介助を安心して任せることができます。

第三に、介護保険制度の対象となる場合があるという点です。一般のタクシーとの大きな違いは、単なる移動手段ではなく、介護保険制度に基づく訪問介護サービスの一つとして位置づけられていることです。そのため、要介護1以上の認定を受けており、ケアプランに組み込まれている場合は、介助料金の部分に介護保険が適用され、原則1割の自己負担で利用できます。ただし、タクシーの運賃や介護機器の使用料は保険適用外となりますので、この点は注意が必要です。

介護タクシーの利用実態と主な利用目的

全国移動サービスネットワークが実施した調査をもとに、介護タクシーの利用実態を見ていきましょう。

まず、利用者の属性を見ていきましょう。調査では身体障がい者手帳を保持している方が51%を占めており、年齢層では75歳以上の方が44%(75~84歳が29%、85歳以上が15%)と、後期高齢者の利用が特に多いことがわかっています。また、要介護度では要介護1から3までの方の利用が比較的多く、合計で約30%を占めています。

世帯構成を見ると、一人暮らしが27%、家族との同居が73%となっています。同居家族の内訳では、子どもや孫との同居が34%、配偶者との二人暮らしが22%と、家族介護を受けながら介護タクシーを利用されているケースが多いようです。

また、介護保険が適用になることもあり、年収100万円未満の方が33%、100~300万円未満の方も34%を占めるなど、幅広い方が利用していることが分かります。

利用目的については、通院・入退院での利用が約7割と最も多く、これは介護保険が適用される「必要不可欠な外出(MUST需要)」に該当します。

利用頻度は「週に2~3回」が最も多く、全体の36.9%を占めています。定期的な通院やリハビリなどの医療ニーズに応えるために、継続的に利用されている実態が浮かび上がります。

通院以外の利用目的としては、デイサービスなどの介護サービス利用時の送迎、役所での各種手続き、日用品の買い物などが挙げられます。

介護タクシーの料金体系と費用負担

基本料金の仕組み:運賃・介助料・機器使用料

介護タクシーの料金は、大きく分けて3つの要素で構成されています。

1つ目の「タクシー運賃」は、一般のタクシーと同様に距離制運賃または時間制運賃で計算されます。距離制運賃の場合、初乗り運賃(通常2kmまで)は地域によって異なりますが、一般的に750円程度で、その後は距離に応じて加算されていきます。例えば、1km追加するごとに300円加算されるといった具合です。

時間制運賃を採用している事業者の場合は、30分あたり1,000円、1時間あたり2,000円といった設定となっています。特に、買い物や複数の用事を済ませる際など、長時間の利用では時間制運賃が選択できると便利です。また、早朝・深夜の割増料金や、待機料金が発生する場合もありますので、事前に確認が必要です。

2つ目の「介助料」は、介護職員による介助サービスの対価です。具体的には以下のようなサービスが含まれます。

自宅から車両までの移動介助

自宅から車両までの移動介助
乗車・降車の介助
通院時の受付介助
会計や薬の受け取り時の介助
外出前後の着替えや身支度の介助

介助料は1回あたり約1,000円が一般的で、これが介護保険の適用対象となります。介護保険を利用する場合、この介助料のみが原則1割の自己負担(約100円)となります。なお、行きと帰りでそれぞれ1回分の介助料が発生しますので、往復利用の場合は2回分必要となります。

また、介助時間が20~30分を超える場合や、入浴介助などの身体介護が加わる場合は、「通院等乗降介助」ではなく「身体介護」として扱われ、料金体系が変わることがあります。

3つ目の「介護機器の使用料」は、車椅子やストレッチャーなどの福祉機器を利用する際に発生する料金です。一般的な料金の目安は以下の通りです。

種別 料金 標準型車椅子 500~1,500円 リクライニング式車椅子 1,500~2,000円 ストレッチャー 4,000~6,000円 酸素ボンベ等の医療機器 3,000円前後

ただし、利用者自身の車椅子を使用する場合は、この使用料は発生しません。また、事業者によっては基本料金に車椅子使用料を含めている場合もありますので、予約時に確認するとよいでしょう。

これらの料金に加えて、深夜や早朝の利用、遠距離の移動、高速道路の利用など、状況に応じて追加料金が発生する場合があります。事前に料金体系を確認し、必要な費用を見積もっておくことをおすすめします。

介護保険適用時の料金計算例

実際の料金がイメージしやすいよう、具体的な計算例を見ていきましょう。

例えば、自宅から3km離れた病院まで、車椅子を借りて介護タクシーを利用した場合を考えてみます。

タクシー運賃:1,050円(初乗り750円+距離加算300円)
介助料:1,000円(介護保険適用で自己負担100円)
車椅子使用料:500円

この場合、合計金額は1,650円となります。

ただし、そのうち介助料は介護保険が適用されるため、実際の自己負担は750円となります。帰路も同様の料金が発生するため、往復での利用では、この金額の2倍程度を見込んでおく必要があります。

なお、これらは一般的な料金の目安であり、事業者や地域によって異なる場合があります。予約の際には、必ず料金体系を確認しましょう。

自治体による助成制度と利用方法

介護タクシーの利用にあたっては、自治体独自の助成制度を利用できる場合があります。例えば、福祉タクシー券の交付や、運賃の一部助成などです。

福祉タクシー券は、障害者手帳をお持ちの方や要介護認定を受けている方に交付される場合が多く、1回の乗車につき一定額が割引されます。例えば、東京都北区では対象となる方に1ヶ月あたり3,500円分のタクシー券が交付されています。

また、医療機関への通院で介護タクシーを利用する場合、自治体によっては通院費用の助成制度を利用できることもあります。これらの制度は自治体によって内容が大きく異なるため、お住まいの地域の福祉課や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

介護タクシーの利用手順と予約時の注意点

初めて利用する際の手続きの流れ

介護タクシーを初めて利用する場合は、以下の流れで手続きを進めていきます。

まず、介護保険を適用して利用したい場合は、要介護認定を受けている必要があります。まだ要介護認定を受けていない方は、お住まいの市区町村の窓口で申請を行いましょう。認定には1〜2ヶ月程度かかるため、余裕をもって準備することが大切です。

要介護1以上の認定を受けている方は、担当のケアマネージャーに介護タクシーの利用を相談します。ケアマネージャーは利用者の状態や目的に応じて、介護タクシーの利用が適切かどうかを判断し、適切な事業者を紹介してくれます。

その後はケアマネージャーから紹介された事業者と契約を結び、具体的な利用日時や介助の内容を決めていきます。このとき、必要な介護機器や介助の内容についても詳しく伝えておくことで、当日スムーズに利用することができます。

なお、介護保険を適用せずに利用する場合は、直接介護タクシー事業者に連絡して予約することができます。ただし、事業者によってサービス内容や料金体系が異なるため、複数の事業者に問い合わせて比較検討することをおすすめします。

予約時の確認事項と準備するもの

予約の際は、基本情報として、利用者の氏名、住所、連絡先、要介護度を伝えます。また、利用する日時、出発地と目的地、予定所要時間についても具体的に伝えましょう。

身体状況については、車椅子やストレッチャーの使用の有無、必要な介助の内容(乗降時、移動時、トイレなど)を詳しく説明します。特に医療機器を使用している場合は、酸素ボンベなどの機器の種類や大きさについても伝えておく必要があります。

当日必要な持ち物は、介護保険証、健康保険証、医療機関の診察券などです。

家族の同乗や介助に関する注意点

介護保険を使って介護タクシーを利用する場合、原則として家族の同乗はできません。これは介護保険が「専門家による介助」を前提としているためです。

ただし、認知症の方で、家族が付き添わないと精神的に不安定になる場合や、医療機関での症状説明が必要な場合などは、市区町村やケアマネージャーに相談のうえ、同乗が認められる可能性があります。同乗を希望する場合は、その理由を具体的に説明し、事前に承認を得ておくことが重要です。

また、介護タクシーのドライバーによる介助には一定の制限があります。例えば、病院内での付き添いは原則としてできません。これは病院内での介助は病院スタッフが行うという考え方に基づいています。ただし、受付から診察室までの移動介助や、会計時の手続きサポートなどは可能な場合もあります。

事前にドライバーができる介助の範囲を確認し、必要に応じて病院のスタッフや家族による介助を組み合わせて計画を立てることをおすすめします。

まとめ

介護タクシーは、通院や必要な外出をサポートする重要なサービスです。

移動の不安や負担を軽減し、安心して外出できる環境を整えることで、利用者とご家族の生活の質の向上につながります。特に、医療機関への定期的な通院や、リハビリテーション施設への移動など、医療との関連が深い外出において、専門的なケアを提供することができます。介護スタッフの付き添いにより、移動中の安全確保はもちろん、乗降時の補助や、医療機関での手続きのサポートまで、きめ細やかな対応が可能となります。

なお、利用目的が介護タクシーとそぐわない場合には、介護保険を利用しない「福祉タクシー」を利用するという選択肢もあります。例えば、買い物や娯楽施設への外出、友人との会食など、生活を豊かにする様々な目的での移動に活用することができます。また、急な体調変化による予定外の通院など、柔軟な対応が必要な場合にも有効です。

福祉タクシーは介護保険の適用はありませんが、利用目的や家族の同乗に制限がなく、より柔軟に利用できるサービスです。家族との外出や、地域の行事への参加など、社会とのつながりを維持するための移動手段として活用できます。また、介護保険サービスでは対応が難しい、急な外出ニーズにも対応が可能です。要支援の方や、突発的な通院が必要な場合などは、この福祉タクシーの利用を検討してみるとよいでしょう。このように、状況や目的に応じて、介護タクシーと福祉タクシーを使い分けることで、より充実した外出支援を実現することができます。

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