阪神・淡路大震災から30年。災害時におけるメディアのあり方はどう変わった?
1月17日(金)、ニュースキャスター・長野智子がパーソナリティを務めるラジオ番組「長野智子アップデート」(文化放送・15時30分~17時)が放送。午後4時台「ニュースアップデート」のコーナーでは「災害と情報・報道」というテーマで、日本大学文理学部教授・中森広道氏に話を伺った。
長野智子「阪神・淡路大震災(発生)から30年ということで。この阪神・淡路大震災については、当時のメディアであるとか報道であるとか、いろいろ研究されたんでしょうか?」
中森広道「はい。現地にも伺いまして、各放送局の方にもお話を伺いました。また、住民の方にもアンケートにご協力いただきまして、災害と情報・報道についての調査をいたしました」
長野「どのような結果が出ましたか?」
中森「停電が続いていたということで、ラジオに対する評価というのは高かったんですけども、一方で、やはり欲しい情報が得られなかったっていうことが圧倒的に多かったということがありました。といいますのは、これは仕方がないことなんですけど、ラジオを含めたマスメディア、テレビ・新聞もそうなんですけれども、市町村とか都道府県とか全国とかっていう広い人たちを対象にしているものですから、たとえば鉄道の何線が復旧しましたとか道路が復旧しましたといったような広い情報は得意なんですけれども、被災者が欲しい情報っていうのは、自分の今いる避難場所に物資がいつ届くのかとか、どんな復旧状況なのかっていうことを知りたいんですね。ですけれども、人口規模の大きな都市ですとか被害の範囲が広い地域ですと、それだけたくさんの避難所ができますから、避難所ごとの情報を放送局が集めるとか取材することがなかなかできないっていうことがあります。そうなってくると、自分の今いる場所がどうなっているかっていう情報がなかなかラジオやマスメディアからは入ってこなくて、どうしても一番欲しい情報が得られなかった。そういう声が多かったというふうに思いますね」
長野「当時はもちろんSNSが無かったわけですからね。阪神・淡路大震災から30年でメディアはすごく変わったと思うんですけれども、変わったことによって情報の伝わり方が何か変わりましたか?」
中森「変わったところと変わらないところがあると思いますね。変わったところというのは、SNSの普及などによって個人がどんどん情報を発信できるようになっていったと。ですから、そういう意味では不確かな情報とか誤った情報とか意図的に流す情報も増えてきたわけですけれども。一方で、ラジオやテレビや新聞といったマスメディアのほうが阪神・淡路大震災をきっかけに災害報道に力を入れていきましたから、初動体制もうまくとるようになってきましたし、これまでに比べれば生活情報もいろいろ出すようになってきた。ところが、一つの問題として変わっていないのは、どうしても放送する対象、取材する対象が偏ってしまう。満遍なく取材ができないっていうことで、放送される場所が決まってしまう。阪神・淡路大震災でいうと、どうしても神戸と言ってしまいますけど、神戸以外でも被災地はあるわけですよね。じゃあ神戸以外の放送がどれだけされていたかっていうと、それはなかなか難しいところがあるだろうし、同じ神戸市内でも取材される所もあれば取材されないところもある」
長野「そういう問題がある一方で、(阪神・淡路大震災から)もう30年経って誰でも情報発信ができるから、フェイクニュースのような難しい問題はあるけれども、場合によってはメディアがおさえきれていない細かい情報を誰かが発信することができるわけですよ。だから、たとえばNPOとか地元の団体とかが事前にそういうのを発信するっていうのを、皆さんで準備しておくっていうのは(対策として)一個あるんですかね?」
中森「そうですね。やはりどうしても災害時には地域によって情報にムラが出てきてしまうっていうことを前提にした対策っていうものは必要になってくると思いますね」