目指すはJ2優勝とJ1昇格!ジュビロ磐田2025年のキーマン7人をピックアップ。ジャーメイン良が抜けた穴を埋めるのは…
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
ジュビロ磐田はJ2で戦う2025シーズンに向けて、横浜F・マリノスを率いていたジョン・ハッチンソン監督が就任し、12人の新戦力が加入した。さらにセレッソ大阪から期限付き移籍していたFW渡邉りょうが完全移籍となり、ギラヴァンツ北九州に育成型期限付き移籍していたMF藤原健介が復帰した。登録期間はまだ閉じておらず、開幕までにラストピースの補強があるかもしれないが、筆者の視点で7人の注目選手をピックアップした。
FWマテウス・ペイショット
大きな期待を背負っていた昨シーズンはJ1で7得点とまずまずの結果ながら、ジャッジの基準に苦しむなど、手探りの中でシーズンを終えてしまった印象だ。
ジャーメイン良が広島に移籍し、1トップで大車輪の活躍が求められる今シーズン。為田大貴や角昂志郎、倍井謙など、チャンスメークに優れるサイドアタッカー、セカンドアタッカーが加わり、よりゴール前でフィジカルと決定力を発揮できるお膳立ては整った。渡邉りょう、佐藤凌我とはライバルでありながら、縦関係での共存も楽しみだ。
MF倍井謙
名古屋グランパスから期限付き移籍で加入した気鋭のドリブラー。古川陽介が昨年夏に渡欧し、独力で局面を打開できるタレントがいなかったところに、強力なピースが加わったことになる。左サイドからのカットインが最大の武器で、縦にも仕掛けられるが、名古屋ではシンプルにつなぐプレーとの使い分けが課題だったことを認める。
ドリブルにこだわりは持つが「ゴールのための手段にすぎない」と倍井。ポゼッションがベースとなりそうなハッチンソン監督の磐田で、プレーの幅を広げながら、磨き続ける武器で目標の2桁ゴールを達成すれば、J2優勝というチームの目標に近づくはずだ。
DF植村洋斗
昨シーズンは大卒ルーキーながら、大半の試合を右サイドバックのスタメンとして戦い、多くの経験を積んだ。粘り強い守備や視野の広さを生かしたパス、タイミングの良い攻め上がりなど、多くのポジティブな要素を見せたが、チームに勝利を引き寄せるほどのインパクトを残せなかったことも事実だ。
2年目に向けて、チームの中心としてリーダーシップにこだわることを宣言しており、日本代表や世界で活躍する選手になっていくためにも、本職のボランチでポジションを掴むことにも意欲を示す。ただ、中盤は昨年の主力だった上原力也、レオ・ゴメス、中村駿に金子大毅、相田勇気も加わり、かなり充実している。ポゼッションを重視するハッチンソン監督だけに、ゲームを作れる右サイドバックとして植村に期待をかけてもおかしくない。
GK阿部航斗
新潟のユース出身だが、GKとして一皮剥けるために新天地での挑戦を決意した。古巣では小島亨介から守護神の座を奪えなかったが、出場チャンスをもらった時のパフォーマンスは安定しており、J1昇格を狙う磐田のゴールマウスを守る資質は十分に備える。
百戦連覇の川島永嗣に、経験豊富な三浦龍輝と強力なライバルがおり、大型ルーキーの西澤も含めて、J2最上レベルのポジション争いが展開されそうだが、新潟でも見せた良質なビルドアップ、カバー範囲の広さはハッチンソン監督が掲げるアタッキングフットボールを支えるのに最適であり、この競争に打ち勝つ可能性は大いにある。
MF角昂志郎
昨年は特別指定選手として何度かチームに帯同し、国際親善試合のスタッド・ランス戦でゴールを記録した。しかし、筑波大の活動を優先しないといけない立場もあり、リーグ戦は1試合のみ。残留争いに苦しむチームを助けることはできなかった。その分も、1年で必ずJ1に戻すという使命感に燃えている。
持ち前のテクニックと攻撃センスを武器としており、サイドアタッカーとしてのイメージも強いが、インサイドでのプレーに自信を持っており、ハッチンソン監督が角をどう起用していくかは注目ポイントの1つ。大学の先輩である三笘薫は川崎フロンターレでプロ1年目からブレイクして、さらなる飛躍に繋げた。ルーキーイヤーの舞台がJ2になったことは想定外だが、いきなり別格のインパクトを放つ準備はできている。
FW渡邉りょう
「磐田をJ1に残留させる」と宣言して、昨夏にセレッソ大阪から期限付き移籍で加わると、精力的な守備と鋭い動き出しで、前線を活性化させた。しかし、結果としてチームを残留に導くことはできず。その決断を正解に変えるべく、新シーズンに向けて完全移籍を決断した。
ジャーメイン良が抜けたチームで、伝統の9番を背負うエースとしての活躍が期待される。J2優勝、J1残留を実現するためにも「20点以上」を個人の目標に掲げているが、一昨年は夏の移籍まで、藤枝で13得点をマークしている実績を考えれば、十分に射程圏内だろう。
ペイショット、佐藤との関係も、単に同じポジションを争うのではなく、それぞれの特長を生かして競い合うことによって、相乗効果が生まれると主張する。抜群の人間性でサポーターの心を掴んでいるが、ピッチでは明確な結果で真価を証明していくシーズンになる。
DF上夷克典
同じくJ2に降格した鳥栖から移籍してきたディフェンシブなポジションならどこでもこなせるポリバレントな選手。攻守に渡る献身性がいぶし銀のように輝く、いわば“玄人好み”の選手だ。
自分自身の殻を破るべく、磐田での挑戦を決断した。ポジションもセンターバックで勝負したいと宣言しており、ラインコントロールと読みを武器に、リカルド・グラッサ、ハッサン・ヒルという外国人選手との激しいポジション争いも歓迎の構えだ。もちろん長いシーズンで、必要になれば、左右のサイドバックでチームを助けるケースもありうるが、心意気を含めて注目していきたい一人だ。