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トリプル・ギター編成で今年もサクソン名曲を堪能! GRAHAM OLIVER’S ARMY@代官山SPACE ODD 2024.8.18

YOUNG

GRAHAM OLIVER'S ARMY 2024

台風7号が日本列島を襲った8月中旬、“大英帝国”よりGRAHAM OLIVER’S ARMY(以下GOA)が再来日を果たした。昨年6月から1年余振り──東京は代官山のSPACE ODDにて、8月17日に一夜限りの“BEST HITS LIVE”が行なわれたのだが、幸いにも台風は本州の東海上へ離れていき、ショウ当日は奇蹟的に天候が回復。凄まじい猛暑こそ残していったものの、GOAのベテラン・パワーは台風をも吹き飛ばしてしまったようだ…!

パワーに満ち溢れていたグラハムのプレイ

NWOBHMの古豪バンド:元サクソンのグラハム・オリヴァー(g)が率いるGOAについては、もはや詳しい説明は不要だろう。当ウェブには、前回来日時のレポート&インタビュー記事が掲載済みなので、未読の方は是非チェックしてみて欲しい。それにしても、わずか1年ほどでまた戻ってきてくれるとは、まさに嬉しい驚きだ。しかも前回と同じく、本家サクソンのギタリスト:ポール・クインを伴って…!

INFO

グラハム・オリヴァーがポール・クインと共に日本でサクソン名曲を披露!! GRAHAM OLIVER’S ARMY来日公演 2023.6.5〜6.6 @新宿Zirco Tokyo

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グラハム・オリヴァー&ポール・クイン、サクソン時代には「2人でとても良い曲を書いてきた」GRAHAM OLIVER’S ARMY来日インタビュー

当時、元サクソンのグラハムと現サクソンのポールの共演は、ちょっとしたサプライズとなった。何故なら、一時グラハムは本家とバンド名の使用権を巡って対立していたことがあるからだ。それに、タイミングが良いのか悪いのか、来日直前にはポールがサクソンのツアーから撤退…と表明。「脱退ではない」とのことだったが、それがまた憶測を呼んだりも…。

Paul Quinn(guest g)

ところが──多くのファンの心配をよそに、当のグラハム&ポールは「旧友がかつて一緒に作った音楽を共にプレイしているだけだから、お互いに敵意を感じることなんてない。何も問題なんてないよ」と余裕の構え。実際、30年近くの時を超えた2人の共演は大成功に終わり、GOAの’23年初来日公演は、“伝説”を観るべく詰め掛けたオーディエンスを大熱狂させたのである。ちなみに後日、サクソンの本家フロントマン:ビフ・バイフォードはこの件について、「ちょっとクレイジーだけど、それがポールだし、やりたいことをやっている彼はクールだな」と発言。もしやポールが過去の軋轢で生まれた深い溝を埋めてくれるかも…と期待を抱いたファンも少なからずいたのでは?

ただし、GOAにはもうひとつ懸念材料があった。それは首魁グラハムの健康問題。前回来日時のインタビューでも、「左手に問題を抱えていてね。指が動きにくくなっているから、かなり集中しないと上手く弾けないんだ」と言っていたが、日本公演を終えたあと、彼のパーキンソン病罹患が公表されたのだ。取材の席でもグラハムは、「(ポールとの共演は)これが最後かな。もう2人とも70代だからね」と発言。それは自分の病状を分かってのことだった可能性もある…。

Graham Oliver(g)

にもかかわらず──今年72歳になった彼は、早々に再来日。病状や体調面が大いに心配されたが、結論から言ってしまうと、すべては杞憂に終わった。むしろ、去年よりも調子が良かったとさえ思えるぐらいに、グラハムのプレイはパワーに満ち溢れていたのだ! 聞けば、体調管理には常に相当気を配っているそうで、来日前も来日中も、とにかく万全の状態でライヴに臨めるよう最善を尽くし、ショウ当日は文字通りベスト・コンディションでステージに立つことが出来た…とのこと。「すべてはファンのために…!」──その思いが彼をより強くしていたのだろう。

ちなみに、GOAのラインナップは前回と変わらず、グラハム以下、ブライ・ショウネッシー(vo)、ギャヴ・コールソン(g)、ジェイミー・マレンダー(b)、ロッド・ファーンリー(dr)で、友情出演とも言うべきポールは今回も開演から終演までずっと出づっぱり──つまり、トリプル・ギター編成によるスペシャルなフル・ショウが再び楽しめたのである。

Bri Shaughnessy(vo)

Gav Coulson(g)

Jamie Mallender(b)

Rod Fearnley(dr)

自然体でサクソン・クラシックスをプレイするポール

特筆しておきたいのは、ポールがよりバンドに馴染んでいたこと。いや、去年の公演でもスポット参加の飽くまでゲスト…といった印象はあまりなく、グラハムともまるでブランクなどなかったかのような“阿吽の呼吸”を感じ取ることが出来たのだが、まぁ…長年ギター・チームを組んでいたのだから当然といえば当然か。そもそも演奏曲は──本家のライヴでも定番となっている──勝手知ったる往年のレパートリーばかりだし。

そう、今回もプレイされたのはサクソンの往年の名曲ばかり。セットリストは去年から大きく変わることなく、ファン垂涎の人気曲が多くを占め、終始フロアは沸きに沸き、ほぼ全曲でサビの大合唱が起こっていた。ショウ冒頭、いきなり去年はプレイされなかった「Heavy Metal Thunder」(’80年『STRONG ARM OF THE LAW』収録)からスタートしたのも最高! もしかすると、1曲目から全力でトバし過ぎて、後半バテてしまった…という観客もいたか? さらに、去年やらなかった曲はアンコールにも! ’83年通算5作目の表題曲「Power And The Glory」だ。もうこの2曲が聴けただけで観にきた甲斐があった…と、みんな感涙に咽いだに違いない。

驚いたのは、グラハムが何度もステージ前方中央へ飛び出してきてエモーショナルなソロを連発し、時にはギターを抱え上げるアクションまで見せていたこと。プレイ面でよりパワーが漲っていたのは上述したが、その上でよりアクティヴに躍動するようにもなっていたのだ。ポールやギャヴ、ブライやジェイミーとフォーメーションを組んでの魅せるプレイの回数だって、確実に前回公演を上回っていた。繰り返しになるが、「日本の観客の前で最高のプレイを見せたい!」との熱い思いが、年齢も病気も忘れさせて、グラハムを10歳も20歳も若返らせたのであろう。

一方、ポールはより自然体でサクソン・クラシックスを楽しんでプレイしていた…との印象。キャリア40年以上を経ても決してスロー・ダウンすることなく、それどころか近作でもパワー・メタリックに攻めの姿勢を貫き通している本家サクソンでの活動が年々キツくなり、体力と気力の限界を感じてツアーからの撤退を決めた彼だが、言うまでもなく、プレイ面で衰えてしまったワケでも、ステージで動けなくなったワケでもない。それどころか、過密スケジュールで長期のツアーに出る必要がなくなったことで、むしろその佇まいは揚々とさえしていたのだ。

それでいて、旧友グラハムとの共演・競演を楽しみつつ、飽くまで“ゲスト”との立場をちゃんとわきまえてもいるのも、元来生真面目なポールらしいところ。自分が前へ出過ぎることでギャヴが委縮してしまわないように…との気遣いも、随所から感じられた。おかげでギャヴも、大先輩2人をしっかり立てつつその傍らで伸び伸びとプレイ。以前のように無理にソロ・パートで速弾きしたり、場違いなスウィープを入れ込んだりすることがあまりなかったのも良かった。彼には申し訳ないが、観客の殆どは“往年のサクソン”が目当てのオールド・ファンで、後追いのファンにしても、やはり大方がNWOBHMの伝説を観にきた…のだから。

そして、そんなトリプル・ギターを土台から支えるリズム隊の安定感抜群な堅実プレイ、今やサクソン・クラシックスをすっかり自分のモノにしているブライの堂々たる歌いっぷりが、またいずれも実に素晴らしい。3人とも歴戦のツワモノ的“叩き上げ”感をまといつつ、観客の反応を見ながら時に笑顔も見せ、それぞれ心底ショウを楽しんでいることが伝わってくる。中でも、頻繁にジョークを挟みながらフレンドリーなMCで場を和ませ、ちょっと大袈裟なぐらいのアクションでも観客をグイグイ惹き付ける、ブライのすこぶる陽気なキャラクター、巧みなショウ運びには目を見張る。全くビフに似せようとはしていないのに、どの曲も何ら違和感なく、何よりGOAが“オリジナル・ギタリストのいる豪華なカヴァー・バンド”に陥っていないのは、実際ブライの力量によるところが大きいと思う。

それにしても、ライヴで盛り上がるのに最適な名曲が何と多いことよ。ヘヴィ・メタルがロックン・ロールやブギーを呑み込み、血沸き肉躍る「Princess Of The Night」(’81年『DENIM AND LEATHER』収録)や「Motorcycle Man」(’80年『WHEELS OF STEEL』収録)がヘドバンの嵐を巻き起こし、「Frozen Rainbow」(’79年『Saxon』収録)や「Crusader」(’84年『CRUSADER』収録)では優美さと哀愁が“泣き”と同居し、一体感を生む「Denim And Leather」(『DENIM AND LEATHER』収録)や「747 (Strangers In The Night)」(『WHEELS OF STEEL』収録)はアンセムと呼ぶに相応しい。また、アンコール最後に毎回「And The Bands Played On」(『DENIM AND LEATHER』収録)を持ってくるのは、彼等の「まだまだプレイし続けるぞ!」との決意表明でもあるのだろう。

“グラハム&ポールが揃う最後の来日公演”との触れ込みで行なわれた今回のライヴ──いやいや、あれだけ凄まじいパフォーマンスを見せつけてくれたのだから、“次”も“その次”もきっとあると信じたい。何せ、当初90分の予定が、結果として2時間に迫る長丁場となったのだし。無論、グラハムの体調次第ではあるものの、招聘元も「毎年呼びたい!」と言っていたそうで、これは来年以降“毎年恒例の来日”なんてことにもなっていきそう…? 11月には“本家”の久々の来日ツアーが予定されているが、GOAには“もうひとつのサクソン”としての役割があるのは言わずもがな。それは開演前、観客達が普通に“SAXONコール”でGOAの登場を待ち構えていたことからも明白だ。それに──まだまだ彼等にはやって欲しい曲が他にも山ほどあるのだから…!!

GRAHAM OLIVER’S ARMY @代官山SPACE ODD 2024.8.18 セットリスト

1. SE〜Heavy Metal Thunder
2. Rock ‘N’ Roll Gipsy
3. Strong Arm Of The Law
4. Denim And Leather
5. Backs To The Wall
6. Frozen Rainbow
7. Requiem (We Will Remember)
8. Freeway Mad
9. The Eagle Has Landed
10. Dallas 1pm
11. Stand Up And Be Counted
12. Crusader
13. Suzie Hold On
14. Princess Of The Night
15. 747 (Strangers In The Night)
16. Motorcycle Man
17. Wheels Of Steel
[encore]
18. Power And The Glory
19. And The Bands Played On
 

(レポート&撮影●奥村裕司 Yuzi Okumura)

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