要支援から要介護に変わるとケアマネはどうなる?基礎知識を押さえよう
介護保険制度の基本
介護保険サービスを利用している方やそのご家族の多くが不安に感じる「要支援から要介護への移行」。
特に「担当のケアマネージャーが変わるのでは?」という心配の声をよく耳にします。この記事では、要支援・要介護の区分が変更になった際のケアマネの変更について、知っておくべき情報を詳しく解説します。
要支援から要介護への移行では、担当窓口が変わることでケアマネも変更になる可能性が高くなります。
また、区分変更に伴いサービス内容や費用が変わるため、新しいケアプランの作成が必要になります。ただし、ケアマネの変更は一般的な出来事であり、適切な引き継ぎ手続きが整備されていますので、過度に心配する必要はありません。
要支援と要介護の違いを知る
要介護度とは、日本の介護保険制度において、どの程度の介護や支援が必要かを示す区分のことです。要介護1~5の5段階に分かれており、数字が大きいほどより重い介護が必要と判断されます。例えば要介護1は比較的軽度の介護が必要な状態、要介護5は常時全面的な介助が必要な状態を指します。
この「要介護度」が決まると、介護保険で利用できるサービスの内容や上限額が異なり、在宅・施設で受けられる介護の範囲が変わります。要介護度の認定は市区町村に申請して行われ、主治医の意見書や訪問調査(本人の生活状況などのチェック)をもとに審査・判定されます。
要支援と要介護の大きな違いは、必要となる介護サービスの量や内容、そして担当窓口の異動にあります。要支援の場合、利用者の健康状態や生活機能が軽度であると認定され、主に地域包括支援センターが手続きを担当します。
一方、要介護はより手厚い支援が必要な状態であり、居宅介護支援事業所が主体となって介護プランを作成します。 どちらも同じ介護保険制度に含まれるため混同しがちですが、要支援は介護予防的なサービスを中心に組み立てられる一方、要介護では食事や排せつ、入浴など日常生活の幅広い支援が受けられる点が特徴です。
要支援か要介護かの判断は基本的に要介護認定の審査によりますが、例えば入院後に身体機能が低下して日常生活に支援が必要な状態になった場合は、要介護度が重く認定される事が考えられます。
一方、リハビリや周囲のサポートにより機能が回復すれば、要介護度が下がる可能性もあります。
ケアマネが変更になるタイミングは?
ケアマネージャー(介護支援専門員)は、介護保険を使ってサービスを受ける利用者の状況を把握し、適切な支援計画(ケアプラン)を立てる役割を担う専門家です。
利用者の生活全体を考えながら、訪問介護やデイサービスなどの利用回数や目的、費用を明確にし、安心して暮らせる環境づくりをサポートします。
ケアマネージャーは利用者本人の身体状況だけでなく、家族の負担や生活背景にも目を配ります。たとえば、食事づくりが難しいなら配食サービスを提案したり、移動が困難な場合は訪問リハビリなどの活用を検討したりするなど、多職種(医師、看護師、リハビリスタッフなど)と連携しながら状態に合わせた調整を行います。
ただし、介護保険の仕組みでは、要支援(軽度の支援が必要)と要介護(より手厚い介護が必要)で担当窓口が異なります。要支援と認定された場合は「地域包括支援センター」が、要介護と認定された場合は「居宅介護支援事業所」に所属するケアマネージャーが担当するのが基本です。つまり、同じケアマネージャーでも、要支援の方は地域包括支援センター側の担当者がプランを組み立て、要介護の方は居宅介護支援事業所側の担当者がプランを組み立てるイメージです。
そのため、ケアマネージャーが変わる最も多いきっかけは、要支援から要介護へ区分が変わるときです。たとえば、要支援で地域包括支援センターが担当していた人が、新たに要介護と認定された場合、改めて居宅介護支援事業所を選び直す必要があります。その際に、新しいケアマネージャーが割り当てられることが少なくありません。
地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違い
地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口として機能する行政機関や委託を受けた団体です。要支援の介護予防プランだけでなく、認知症カフェの運営や虐待防止の相談など、地域の高齢者が抱える幅広い課題に対してアドバイスを行う役割も担っています。
一方で居宅介護支援事業所は、要介護認定を受けた方に特化してケアマネを配置しており、具体的なサービス調整を担います。
このように、要支援と要介護では担当する窓口が異なるため、区分変更に合わせてケアマネが変わる可能性があります。
そこで重要となるのが、サービス計画(ケアプラン)や健康情報、家族の希望などを正確に引き継ぐプロセスです。地域包括支援センターも居宅介護支援事業所も、利用者に不利益が生じないよう必要なデータを共有する仕組みが整っていますので、疑問がある場合は遠慮なく尋ねることが大切です。
介護度が変わるとどうする?ケアプラン再作成とサービス利用のポイント
要支援から要介護へ移行するときの流れ
区分変更する場合、まずはデイサービスや訪問介護の職員、ケアマネージャー、医師などが「より手厚い介護サービスが必要ではないか」と利用者や家族に区分変更を勧めることがあります。そして、利用者本人やその家族が「今の要支援区分ではケアが足りない」「身体状態が以前より悪化している」と感じたときは、市区町村の担当部署(介護保険課など)へ申請を行い、再審査を依頼できます。
その後、市区町村が派遣する調査員が利用者宅を訪問して日常生活での介護の手間を確認し、主治医意見書と合わせて審査を行います。審査の結果、市区町村から通知が届き、利用者や家族は居宅介護支援事業所を選び、新たにケアマネージャーと契約してケアプランを作成していきます。
ケアプラン再作成時に確認しておきたいこと
ケアプランは利用者の心身の状態や生活環境を踏まえたうえで作られる、介護サービスの設計書のようなものです。要介護度が変わると、サービスの使える範囲や上限が変わるだけでなく、目的や優先順位自体が変わることもあります。
そのため、新しい区分に応じたケアプランにはどんなサービスが含まれるのか、費用はどれくらい増減するのかなど、気になる点は遠慮せずケアマネに尋ねてください。
ケアマネ側も認定の経緯や利用者の背景を把握するため、複数回にわたって面談や家庭訪問を行うことがありますが、それはより最適なサービスを選択するための必要なステップですので、適宜対応しましょう。
サービス利用限度額や自己負担の変化を把握しておこう
要支援と要介護では、利用できるサービス限度額の枠が異なります。
一般的に要介護度が高くなるほど、より多くのサービスが利用できる一方で、自己負担額が増える可能性もあるため、家計への影響を考慮することが必要です。
例えば、要支援2から要介護1に変更になった場合、訪問介護の回数を増やして生活を支える仕組みを強化できる一方で、通所リハビリを追加するなどサービスの種類が増えれば自己負担額も増える可能性があります。利用者の費用負担を抑えるために、高額介護サービス費の申請が利用できるかをチェックしておくと安心です。
高額介護サービス費制度では、一定の上限を超えた介護サービス費用が支給される仕組みがありますが、所得や世帯構成によって条件や支給額が異なります。サービスを過不足なく使うためには、ケアマネと十分に相談し、今後の体調変化や家族のサポート体制も含めて総合的に判断していきましょう。詳しい基準や申請手続きは自治体で異なるため、市区町村の公式ウェブサイトや役所窓口で確認することをおすすめします。
ケアマネを変更したいときの手続きと不安を解消するコツ
ケアマネを変更する際の一般的な手順
ケアマネの交代は、要支援から要介護へ移行したタイミングで自然に発生するケースだけではありません。利用者や家族が希望する場合も、正当な手続きを踏めば変更が可能です。
たとえば、ケアマネとのコミュニケーションがうまくいかない、専門知識に不安がある、といった理由で見直しを検討することは珍しくありません。 変更を希望する場合は、まず現在の担当ケアマネや、その所属事業所に対して「変更を考えている」旨を伝えます。
その後、市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに連絡し、新しい居宅介護支援事業所を探す流れが一般的です。事業所が決まったら改めて契約を行い、ケアプランを引き継ぎます。 変更の際には必要書類として「変更届」などが求められる場合がありますが、市区町村や事業所によって手続きが若干異なることがあります。
現在のケアマネに直接言い出しにくい場合は、地域包括支援センターや自治体窓口に先に相談するのも一つの手です。
新しいケアマネの選び方
ケアマネには、過去に病院勤務をしていた人や、施設での介護実績が豊富な人など、さまざまな経歴の方がいます。利用者のニーズや家族の状況によって相性が異なるため、「どの事業所を選ぶか」「どのケアマネに担当を依頼するか」は慎重に検討する必要があります。 以下はケアマネを選ぶ際に確認すると良いポイントです。
認知症ケアや医療連携など、利用者の症状に合わせた実務経験があるか
自宅訪問の頻度や連絡手段(電話やメールなど)を丁寧に説明してくれるか
地域のサービス(訪問入浴、配食、リハビリなど)に詳しいか
このように、ケアマネごとに得意分野や強みが異なります。たとえば在宅介護が長いケアマネは、訪問看護ステーションや地元の医療機関とのパイプが太いことが多く、リハビリや福祉用具の選択が得意だったりします。一方で、施設介護をメインに経験してきたケアマネは施設入所のメリット・デメリットに詳しい傾向があります。
要介護度が上がって医療的ケアの必要性が増した場合は、医療に強いケアマネが安心ですし、認知症の方であれば認知症介護の豊富な経験がある人を選ぶと心強いです。実際に面談をしてみて、家族や本人の意向をしっかり聞いてくれるかどうかを判断材料にしてみましょう。
ケアマネ変更時の不安と上手に乗り越えるコツ
ケアマネを変更する際の最大の不安は、「人間関係が一から作り直しになるのではないか」という点でしょう。新しいケアマネが利用者や家族の状況を把握するまでに時間がかかり、その間に必要なサービスが受けられないのでは、と心配になる方もいます。
しかし実際には、サービス内容や利用者の生活情報はケアプランやモニタリング記録にきちんとまとめられています。また、前任のケアマネが後任ケアマネに引き継ぎを行うのが通常のプロセスです。引き継ぎで不明点があれば、地域包括支援センターが調整をサポートしてくれることもあります。
もう一つの不安材料として、「変更を申し出たら今後のサービスが滞るのでは」という声も聞かれます。しかし、利用者には自身に合ったケアマネを選ぶ権利があります。ケアマネ側も公的な制度の中で働いているため、変更を理由にサービスが不利になるようなことは基本的にありません。実際の介護現場でも、利用者とケアマネの相性は重要視されており、無理のない形で担当替えを行われています。
コミュニケーションを丁寧に行えば、スムーズな連携が期待できます。例えば、電話や面談で「今困っていること」「この先どうしたいか」を具体的に伝えておくと、ケアマネも的確なアドバイスを出しやすくなります。
まとめ
要支援から要介護へ移行すると、ケアマネは地域包括支援センター担当から居宅介護支援事業所担当に変わるケースが多いです。また、要介護度が変化したり、ケアマネとの相性に不安が生じたりした場合も、手続きを踏むことでケアマネを変更できます。ポイントとしては、以下の3点が挙げられます。
要支援か要介護かで担当窓口が異なることを理解する
介護度変更時にはケアプランを再度見直して最適なサービスを選ぶ
ケアマネを変更したいときは遠慮なく相談し、新しい担当者の得意分野を確認する
ケアマネの変更は決して珍しいことではありません。必要なタイミングで、自分や家族の状況に合ったケアマネを選ぶことが、より良い介護生活につながる大切なステップです。状況が変わったら、その都度ケアマネや行政の窓口と相談を重ねながら、無理のない形で介護を続けていきましょう。