親御さんには子どもに選択肢を与えるような愛情ある接し方をしてほしい。中島翔哉選手が考える親子の関係性
10代の頃から年代別代表で数多くの海外遠征を経験し、ポルトガル、カタール、UAE、トルコの4か国のクラブでプレーしてきた中島翔哉選手(浦和レッズ)。
それだけ多種多様な異国生活をしていれば、食事面の難しさに直面したこともあったのではないでしょうか。
サッカー選手を夢見ている子どもたち、そして保護者にとってアドバイスをいただきました。
(取材・文:元川悦子 写真:兼子愼一郎)
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■好き嫌いは無いほうが良い。何を食べるかだけでなく、嬉しい、楽しい、幸せな感情も重要
今では日本代表の海外遠征時に料理人が帯同したり、海外組の選手が独自に料理人を雇って食事を作ってもらうなど、栄養面のサポート体制が強化されています。しかしながら、中島選手が10~20代の頃はまだまだ環境が整っていませんでした。
「僕の場合は好き嫌いがなかったので、どこへ行っても何でも食べられたのはよかったですね。正直、虫とかは食べたくないし、実際、食べる機会もなかったですけど(苦笑)、海外で食べられないものがなかったのは助かりました。代表の遠征に行ったりするとお腹を壊したりする選手もいましたけど、僕はそういうこともほとんどなかったです。
食事に関しては、『バランスを考えて』とよく言われますけど、その人に合った食事が大事かなと思います。体の所作や動きのこともそうですけど、やっぱり自分自身との対話をしっかりして、何を欲しているかをきちんと理解することが大事かなと。好き嫌いはあっていいと思うし、素直に食べられるものは必ずある。それでいいんじゃないですかね。
結婚してからは妻がおいしいご飯を作ってくれるので、それが一番いいですね。食事って単に物質を摂取するだけではないので、嬉しかったり、楽しかったり、幸せだったりすることがすごく重要ですね」
と家族第一の彼らしい言い回しで、食事のポイントを語っていました。
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■子どもは自分に必要だと思えば食べる、食生活も押し付けにならない方がいい
昨今は好きなものしか食べられなかったり、過度な偏食という子どもも少なくないようです。保護者も頭を痛めるケースも増えているといいます。
親としては「子どもの健全な発育発達を考えると好き嫌いは改善しないといけない」「偏食しないように仕向けないとダメ」と危機感を覚えるものでしょうが、中島選手は「子どもファースト」で考えてほしいと願っています。
「親は『子どもが喜んでくれる食事を作っている』と考えていても、子どもにとっては『食べさせられている』と感じることもありますよね。子どもは必要だと思えば絶対に食べるし、子ども自身が分かっていることもあると思います。だから、親は自分のことじゃなくて、子どものことを第一に考えればいい。大人の都合を押し付けることなく、心からの愛情を持って食生活を考えてほしいですね」
■それって本当に子どものため? 親は選択肢を与えるぐらいがいい
その考え方は、サッカーにおいても同様です。子どもたちの試合に応援に来る保護者が必要以上にプレッシャーをかけたり、熱くなったりする姿が目につきますが、中島選手はそれも好みません。
「小学校のサッカーで、親が横でギャーギャー言っているのをよく見かけましたけど、僕はあれが嫌いで、なくしてほしいと思っていました。ウチの母はサッカー経験者でも何でもなかったですけど、少しうるさかったので、静かにしてほしかったですね」と以前別のインタビューでも語っていたことがありましたが、その気持ちは30代になった今も変わらないと言います。
「親が『頑張れ』『しっかりやれ』みたいなことを大声で言っているのを見ると、『誰のために応援しているのかな』と疑問を感じます。それってほとんど自分自身のためじゃないのかなという気がするんです。
やっぱり子どもにとって一番いいのは選択肢を与えるくらいの接し方ですね。愛情を持って接していれば、自然とそういう振る舞いになるはずです。親御さんは自分の行動がどういう思いから出ているのかを一度、立ち止まって考えてみるのもいいかもしれないですね」
と自身も子を持つ親の1人として、静かに話していました。
■サッカーをしている時は心から楽しんでほしい、という中島選手の願い
中島選手がそういった発言をするのも、「子どもたちはサッカーをしている時だけは心から楽しんでほしい」という願いがあるからです。
人間は成長し、社会に出て、さまざまなタスクを課されるたびに、自由にならないことが増えていきます。サッカーを仕事にしている彼自身も苦手な役割やポジションを課されたり、思うように試合に使ってもらえなかったり、ケガで長期離脱を強いられるなど、思い通りに物事が進まない状況に直面することが少なくありません。
だからこそ、子ども時代は純粋にサッカー小僧としての時間を思い切り過ごしてほしい......。そんな切なる願いがあるのでしょう。
■プラスの感情や日常生活がプレーに出る
そして、アドバイスできる立場ではないけど......、と謙遜しつつもサッカー少年少女の保護者に向けてアドバイスをくれました。
「自分はサッカーしかやってこなかった人間だし、何かをアドバイスできる立場じゃないですけど、子どもたちがサッカーをやっている時は、好きにやりたいことをやってもらいたいと思っています。
僕自身は周りに恵まれたので、幼い頃からずっとサッカー小僧でいられた。自分にとって居心地がいい人と一緒にいられたら、それは幸せなことですし、そういうプラスの感情や日常生活がプレーにも出るんじゃないかなという気がします。
やっぱり楽しかったり、ワクワクしている時の方が体も健康ですし、長生きもできるはず。ただ勝利することに喜びを感じることはないですね。チームや自分がどれだけ上達したかを含めて勝ちたいんです。
いつまでサッカー選手を続けられるか分かりませんけど、選手としての時間が終わった時、自分が死んだときに後悔しないような行動をしたい。ずっと生き続けられるのも限らないので、言葉にすると薄っぺらにはなりますけど、今の一瞬一瞬を大事にしたい。そう考えています」
サッカーという1つの道をストイックに突き詰めてきた中島だからこそ、言葉には特別な重みがあるし、1つ1つが胸にに響いてきます。
サッカーをする子を持つ保護者の皆さんはは今一度、それをしっかりと受け止めつつ、今後の一挙手一投足を考えてみるべきなのかもしれません。
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