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【スマホとの付き合い方】高齢者が難しいと感じる理由と家族のサポート方法を解説!

「みんなの介護」ニュース

古賀 優美子

現代社会において、スマホは必要不可欠な通信ツールとなっています。しかし、多くの高齢者にとって、スマホを使いこなすことは容易ではありません。「親にスマホの使い方を教えるとイライラしてしまう」「せっかく買ったのに使ってもらえない」という悩みを抱える家族も少なくないでしょう。

今回は高齢者がスマホを使いにくい理由と適切なサポート方法について解説していきます。高齢がさらにスマホを活用できるようになると、日常生活の質が向上し、コミュニケーションも円滑になるでしょう。また介護を行う家族にとっても時間的・精神的な負担が軽減されるという大きなメリットもあります。

高齢者がスマホを使えない理由とは?

スマホの普及率は年々増加しており、高齢者層にも広がりつつあります。総務省の「令和5年通信利用動向調査」によると、60~69歳の高齢者のスマホ保有率は78.3%、70~79歳では49.4%となっています。しかし、保有率と実際の活用度合いは必ずしも一致するものではありません

内閣府が令和5年7月に実施した「情報通信機器の利活用に関する世論調査」によれば、70歳以上でスマホやタブレットを所有している人のうち、「よく利用している」または「ときどき利用している」と答えた人は約48%にとどまります。つまり、所有していても十分に活用できていない高齢者が一定数存在するのです。

総務省の「令和5年通信利用動向調査」にて、スマートフォンやタブレットを「ほとんど利用していない」「利用していない」と回答した人に理由を尋ねたところ、「どのように使えばよいかわからないから」が最も多く、51.0%でした。

全年代の回答であるため一概には言えませんが、高齢者の中にも「どのように使えばよいかわからない」と感じている人が一定数存在すると考えられます。

高齢者がスマホの利用に困難を感じる背景には、タッチパネル操作の難しさ、専門用語への抵抗感、トラブルへの不安など複数の障壁があります。高齢者特有の身体的・認知的特性を踏まえた対応が必要です。

タッチパネル操作が難しい理由と身体的要因

高齢者がスマホを使えない大きな理由の一つは、タッチパネル操作の難しさです。ガラケー(従来型携帯電話)と異なり、物理的なボタンがほとんどないスマホでは、画面上でのタップやスワイプ、ピンチイン、ピンチアウトなどの操作が必要です。

加齢による身体的変化が、これらの操作を困難にしている要因として挙げられます。

指先の感覚の変化 多くのスマホの画面では静電容量方式を採用しています。加齢の影響で乾燥した指は電気を通す近田が弱いため、スマホを操作しても反応しにくい状況にあります。また、力の加減がわからず、強く押し過ぎたり、逆に押し方が弱いために認識されなかったりすること少なくありません。 細かい操作の困難性 加齢に伴う筋力の低下や神経系の変化により、細かい操作が難しくなります。特に、小さなアイコンを正確にタップすることや、スワイプ操作の開始位置や終了位置を正確にコントロールすることが困難になります。 視力の低下 老眼やその他の視覚に関わる加齢変化により、画面の小さな文字や細かいアイコンが見えにくくなります。拡大表示機能を知らなければ、操作そのものを諦めてしまうことにもつながるでしょう。

もちろん個人差はありますが、こうした身体的な変化は、多くの高齢者にとってスマホ操作における障壁となっています。

カタカナ用語や専門用語の理解の壁

デジタル機器特有の専門用語やカタカナ英語も、高齢者にとって高いハードルとなっています。「アプリ」「ダウンロード」「アップデート」「タップ」「スワイプ」といった言葉は、若年層には日常的な言葉でも、高齢者には馴染みのない言葉です。

また、エラーメッセージや通知も高齢者にとって分かりにくい表現で表示されることが多く、何が起きているのか、どう対応すればよいのかが理解できないという問題も起こります。例えば「接続がタイムアウトしました」といった表示は、高齢者にはどこが問題なのかが伝わりにくいものでしょう。

それに対処するべく自力で解決しようとしても、説明書やヘルプページも専門用語が多用されており、困ったときに頼れる手段が限られてしまう場合もあります。「わからないことがわからない」状態に陥り、質問すらできないケースも少なくありません。

情報漏洩や詐欺被害などのトラブルへの不安

セキュリティ面での不安も高齢者がスマホを活用したがらない要因のひとつです。実際に、インターネット上ではさまざまな詐欺や悪質商法が横行しており、デジタルリテラシーが十分でない高齢者が被害に遭っているケースも少なくありません。ワンクリック詐欺、フィッシング詐欺、なりすましメールなど、手口も年々巧妙化しています。

また、個人情報の取り扱いに対する懸念を持っている方もいるでしょう。アプリをインストールする際の権限設定や、SNSでの情報公開範囲の設定など、プライバシーを守るための適切な操作方法を知らないまま利用すると、意図せず個人情報が漏洩するリスクがあります。

新聞やテレビなどで、「スマホの操作から個人情報が漏洩」といったニュースを見て不安を覚えた方の中には、「スマホは怖いから使わないでおこう」と考える方もいるでしょう。

加えて、トラブルに巻き込まれたときの対処法がわからないという不安を抱えている場合もあります。具体例として挙げられるのは、不審なメッセージを受け取った場合や、誤って怪しいサイトにアクセスしてしまった場合に、どう対応すればよいのかわからないといった状況です。

こうした不安は、高齢者がスマホをはじめとする新しい技術を受け入れる際の大きな障壁となっています。「使い方がよくわからないものは触らない方が安全」という考えが、スマホ活用を消極的にさせている一因です。

高齢者がスマホを活用するメリット

高齢者がスマホを使えるようになると、生活がより便利で豊かになるでしょう。日常生活のさまざまな場面でスマホは役立つツールとなり、特に身体的な移動が制限される高齢者にとっては、自宅にいながらさまざまなサービスを利用できる大きなメリットがあります。

スマホの活用は、高齢者本人の生活の質向上だけでなく、介護をする家族の負担軽減にもつながります。ここでは、高齢者がスマホを活用することで得られる主なメリットについて解説します。

家族・友人とのコミュニケーションの活性化

スマホの活用で得られるメリットの一つは、離れて暮らす家族や友人とのコミュニケーションが容易になることです。特に、離れて暮らす子供や孫、友人とのつながりを維持するのに役立ちます。 ビデオ通話アプリの活用 ビデオ通話アプリを使えば、顔を見ながらの会話が可能です。表情や声を通じた会話は、文字だけのやりとりよりも、より豊かで楽しいコミュニケーションになります。 写真や動画の共有 家族の日常や孫の成長の様子など、写真や動画を簡単に共有できます。SNSの投稿機能を利用すれば、日々の様子や友人たちとの思い出の共有が気軽にできるようになります。 グループでの交流 LINEのグループ機能を使えば、複数の家族や友人と同時に会話をすることができます。趣味の仲間や孫とのつながりも維持しやすくなります。

これらのコミュニケーション手段は、特に移動が困難になってきた高齢者や、家族が遠方に住んでいる高齢者にとって大きな意味を持ちます。「会えなくても顔を見て話せる」という安心感は、高齢者の孤独感の軽減にもつながるでしょう。

生活の安心感の向上

スマホの活用は、高齢者の日常生活における安心感を高めることにも役立ちます。特に、健康管理や緊急時の対応において、スマホは強力なサポートツールとなります。

健康管理に役立つものとして、健康記録、歩数計など、さまざまなアプリが存在します。血圧や体重などの健康データを記録し、グラフ化して傾向を把握できるものもあります。遠隔で服薬状況が共有されるアプリを利用することで、離れて暮らしている家族もきちんと薬を飲んでいるか把握できるようになります。

また、近年普及が進むオンライン診療は、通院が困難な高齢者にとって大きなメリットとなります。スマホを通じて医師の診察を受けられるサービスは、特に定期的な経過観察が必要な病気の際や軽度の体調不良時に便利です。

加えて、非常時に役立つアプリを導入しておくことで、地震や台風などの災害時には、緊急速報や避難情報がスマホに直接届きます。災害により停電してテレビやラジオを受信できない状況となった場合でも、最新の情報にすぐアクセスできることは大きな安心感につながるでしょう。

スマホのさまざまなツールの活用により、多くの情報が取得可能です。スマホは電話以外にも、LINEやショートメールなど複数の連絡ツールを持ちます。万が一の際の連絡手段が複数確保されていることは、本人だけでなく家族にとっても大きな安心感をもたらしてくれます。

介護負担の軽減

スマホの活用は、高齢者を介護する家族の負担軽減にも大きく貢献します。家族が遠方に住んでいる場合にも、スマホを利用することで高齢者の近くにいなくても見守りや介護を行うことができます。

見守りアプリの活用は、介護に携わるご家族にとって大きな安心をもたらします。GPS機能を利用することで、認知症などにより道に迷いやすい高齢者の位置情報をリアルタイムで確認できるようになります。長時間動きがなかったり、あらかじめ設定したエリアを出入りしたりした際に通知される機能により、家族が異変をいち早く察知することができる仕様になっているものもあります。

また、買い物の負担軽減にもスマホは役立ちます。ネットスーパーやフードデリバリーアプリを活用すれば、高齢者が重い荷物を持つ必要がなくなります。遠方に住むご家族も、オンラインで注文をサポートしたり、定期的に必要な生活必需品を高齢者本人に代わって注文したりすることが可能です。

さらに、ビデオ通話などを通じた日常的なコミュニケーションがスムーズになることで、高齢者の状態変化にも早く気づけるようになります。体調不良や認知機能の変化などの微妙な兆候も、顔を見ながらの会話であれば察知しやすくなり、早期対応につなげられるのです。

これらの機能を活用することで、介護する側・される側双方の負担を軽減し、より質の高い介護関係を築くことができます。スマホがあることで、「見守る」「手伝う」という行為が、物理的な距離を超えて可能になるのです。

高齢者のスマホ活用を成功させる家族のサポート方法

高齢者がスマホを使いこなせるようになるためには、家族の適切なサポートが重要です。「うまく教えられない」「せっかく教えても忘れてしまう」といった悩みを抱える方も多いでしょう。ここでは、高齢者がスマホを活用できるようになるための効果的なサポート方法を解説します。

高齢者に合ったスマホ選びのコツ

高齢者がスマホを使いこなせるようになるための第一歩は、適切な機種選びです。最新モデルが最良とは限らず、その方の特性や目的に合った選択が大切です。

スマホを選ぶ際は、高機能よりも使いやすさを優先しましょう。特に初めてのスマホなら、オプション機能が少なく操作がシンプルなモデルが向いています。高齢者向けに開発された専用モデルも選択肢の一つですが、一般的なスマホでも設定次第で十分使いやすくなります。

家族がサポートしやすいよう、同じOS(iOSまたはAndroid)のスマホを選ぶこともおすすめです。操作方法や設定画面が似ているため、遠隔でのサポートがしやすくなります。

視力が低下している場合は、画面が大きめのモデルを選ぶと画面が見やすくなるでしょう。ただし、大きすぎると持ちにくい、ポケットに入らないといった不便さもあるため、実際に手に取って確認することをおすすめします。

また、高齢者の状態に合わせて、操作をサポートするアクセシビリティ機能を活用することも重要です。 iOSもAndroidも充実したアクセシビリティ機能を備えています。音声読み上げ、拡大鏡機能、タッチ感度の調整など、身体的な特性に合わせた設定が可能です。

購入時には、可能であれば家族の同行をおすすめします。操作方法を一緒に聞くことで、高齢者からの相談を受けやすくなるでしょう。店頭スタッフにも高齢者のための設定相談をすると、わかりやすいアドバイスを得られます。また、購入後のサポート体制が充実しているキャリアやメーカーを選ぶことも検討しましょう。


スマホを嫌がる場合は?

高齢者の中には、スマホに対して強い抵抗感や嫌悪感を持つ方もいます。このような場合、無理強いは逆効果です。まずは、その心理的な障壁を理解し、徐々に関心を持ってもらうアプローチが効果的です。

スマホへの拒否感にはさまざまな理由があります。「新しい技術への不安」「失敗することへの恐れ」「自分には使いこなせないという思い込み」「必要性を感じない」など、まずは本人の気持ちに寄り添い、なぜ嫌がるのかを理解しましょう。

その後、メリットを具体的に示すことも重要なポイントです。抽象的な「便利だよ」という説明ではなく、その人の生活や趣味に直結する具体的なメリットを示すことが効果的です。「孫の写真がいつでも見られる」「好きな俳優の動画が見られる」「バスの時刻が調べられる」など、日常生活が豊かになる具体例を伝えましょう。

スマホの操作を教える際には、いきなり複雑な操作を教えるのではなく、簡単で楽しい体験から始めましょう。例えば、家族の写真を見る、好きな音楽を聴く、簡単なゲームをするなど、「できた!」という成功体験を積み重ねることが大切です。

その際、趣味や関心事に関連した内容から始めていくと、スマホへの関心が高まりやすくなります。例えば、園芸が好きな方なら植物の育て方を調べるアプリ、将棋が好きな方なら将棋アプリなど、本人が興味を持てるものから始めてみましょう。

スマホの利用をすすめる際は、教える側の心構えも大切です。急かすことなく、本人のペースを尊重しながら声をかけていきましょう。「みんな使っているから」「時代に取り残されるよ」といった言葉は逆効果になることがあります。使いたいと思うタイミングが来るまで、気長に待つ姿勢も必要です。

効果的な教え方と継続的なサポートの実践法

高齢者にスマホの使い方を教える際は、忍耐強く、わかりやすく伝えるコツを押さえておきましょう。

同じ質問を何度も受けたり、覚えていないことにイライラしたりしがちですが、焦らず根気強く対応することが大切です。家族が理解できることでも、高齢者には馴染みが無く、理解に時間がかかることがあります。本人のペースを尊重し、焦らせないようにしましょう。「ゆっくりでいいよ」「わからないことは何度でも聞いて」という声かけが安心感につながります。

継続的なサポートの鍵は、「教える側・教えられる側」という上下関係ではなく、共に学ぶパートナーとしての関係性を築くことです。小さな進歩を一緒に喜び、新しい発見を共有する姿勢が、長期的な成功につながります。

まとめ

高齢者がスマホに慣れることは、本人の暮らしが豊かになるだけでなく、家族との絆を深めることもでき、さらには介護の負担を減らすことにもつながります。ゆっくり、お互いに無理せず教えることで、高齢者もスマホがある生活を十分に楽しめるようになるでしょう。

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