「素晴らしき遺産」新旧レクサス NX比較テストPart1
新型レクサスNXの発売から、早いもので3年が経過している。その間にはコロナ禍や半導体不足などの前代未聞と言える状況が生じ、実際のデリバリーは遅れに遅れた。契約したものの入手前にマイナーチェンジが発表されてしまったオーナーの声もネット上で散見され、今でも最大で4カ月待ちと公式ページでアナウンスされている。
レクサスのラインナップの中でも、サイズや価格帯からか人気の高いNX。初代モデルを3年前に入手したJ.ハイドが、マイナーチェンジ後の最新モデルと比較した。
本稿を「邂逅、再び」としてスタートしたのが22年の春のことであった。以来2年半が経過し、我がNX Fスポーツ200tも当初1万1千キロだった走行距離は、4万5千キロを超えた。
途中、不注意による事故の修理はしたものの、内部機関は依然好調で、外観も美観を保っている。
10km/ℓをわずかに超えるハイオク・ガソリンの燃費だけが、唯一もう少しという感は否めない。が、30年以上輸入車を乗り継いでいると、8速ATを搭載した直近のボルボの2台以外はことごとく10km/ℓを割っていたので、あまり気にせずに乗り続けてきた。
今回は、現行型のマイナーチェンジ後、それもガソリン仕様の「NX350 F SPORT」を数日借りることができたので、本稿の最終回として2回に亘り皆様にご報告したい。まずは、エクステリアとインテリアの印象、使い勝手についてお届けしよう。
正常進化、しかし若々しい
芝浦のレクサスで受け取ったNX350は“ソニックカッパー”という、初代にはなかった新色で、独自の存在感を出しながらも派手すぎることはない。初代よりも塊感の増したエクステリアの特徴を、その金属色によってとても上手く引き出す事に成功していると言えるだろう。
大人の感性を持ちながらも、現状に甘んじる事のないスノビッシュな側面も併せ持つ、レクサスNXのポジションにマッチしているといったら褒めすぎだろうか? 我が“ソニックチタニウム”の初代が横に並ぶと、新型に比べて光り物は多いのにも関わらず、随分と落ち着いてみえてしまう。
インテリアに目を転じると、クリーンなオフホワイトと黒のコンビネーションに目を奪われる。と同時に、都会的とはいえSUVとしての性格からすれば、土に汚れたバッグや雨に濡れたコートをそのまま積むこともあり、経年変化によってくすんでしまうのではないか? と心配になる。
そういった意味では、前オーナーがオーダーしたワインレッドと黒のコンビネーションの我が初代NXのインテリアの方がずっと実用的な気がする。実際、この2年半の間に、トランクに入りきれない様々なカメラ機材を積み込んだが、特に使用感が増す事はなく、比較的綺麗な状態を保ち続けている。
また、初代で見られたメーターカウルからドアパネルへの細かいステッチや、過剰かと思われるLEXUS刻印入りの内装ボルトなど、造り込みの「贅の要素」は後退している。代わりにシンプルなシングルメーター、ノートPCほどもある巨大な14インチ・センターディスプレイなど、直近のトレンドが生かされたドライバー席からの風景となっており、BEVかと錯覚しそうでもある。
国産SUVは、ヒットモデルの後は正常進化の名の下、熟成したデザインとなるのが多くのケースで見られるが、エクステリア、インテリアとも若々しいのは珍しい。Fスポーツ専用のホワイトと黒のコンビネーションの革シートも、その印象をさらに加速している。
デビュー当時でもやや情報過多かと思われた初代のドライバーズシートとは、極めて異なる新型の空間は、デザイン的には「好みが分かれる」といったレベルの違いであろう。
反面、ナビゲーションやAVシステムはユーザーインターフェースの大部分を、初代のトラックパッドではなく、スマホのSiriなどと(共通の)音声認識によって成立させている事は、さすがに年月の経過を感じさせる。
別の観点からすれば、通信環境が整っている今回の都内から千葉といった試乗エリアでは、確かに問題は感じなかった。しかし電波の弱い地方、さらに秘境のような観光地では、スマホに完全に依存するユーザーインターフェースがどのような反応を見せるか? は、新たな時代のSUVとしては興味深いポイントだ。
SUVとしては、あと一歩
使い勝手の部分に目を移そう。筆者が初代NXの購入をほぼ即決したのは、トランクルーム、特にガソリンモデルならではの広大なサブトランクがポイントだった。カタログ上では正確な容量は記載されていないが、金属製の二段の脚立、プロ用の大型3脚とライトスタンド数本、大きめのレフ板などを格納してもまだ余裕がある。撮影するスタジオの床を傷つけない為の養生用のシートや電源ケーブルなど、必ずしも使わないが念の為持っておきたいモノを収納しておくのに最適というわけだ。
新型NXのサブトランクはそこまで広大、という事ではないが、それでも7割程度のスペースは確保されている印象だ。言うなればハイブリッド用のバッテリーを搭載しない、ガソリンモデルならではの美点といえよう。
一方で、相変わらず樹脂製の巨大な板であるトノカバーには辟易する。ボルボなどが採用する巻取り式のトノカバーの方がはるかに使い勝手がよい。どちらもテールゲートが電動で開閉する高級車なのだから、後者のように高さを少し増して積載しなければならない場合に躊躇せず開閉できる事はちょっとした安心感だ。
ボルボのロールスクリーン式トノカバーでは、使用しないときはシートが巻き取られるので、トノカバーの置き場所をいちいち探す必要はなく、背の高い観葉植物やスーツケース、動物のケージなどをすんなりと収めることができる。一度その便利さを味わってしまうと、コストや重量の問題から採用していない、という事は言い訳にならないと思えるのである。
さて次回は肝心の走りに関して報告したい。
J.ハイド
写真家、ライター、ドローンパイロット。広告会社で大手企業の担当をする傍ら、ドローンなど最新の撮影技術を学ぶ。
現在は、フリーランスとしてFORMULA EでFIA公認フォトグラファーとして撮影を重ねる一方、
イタリアPHOTO VOGUE、スウェーデン1x.com に認定され、ポートレート作品が掲載されている。
新車の発表があるとディーラーで試乗も楽しむ一般目線の車好き。ランチア、アウディ、BMW、ボルボなど9台を乗り継ぎ、
2022年初代レクサスNX 200tに乗り換える。ニコンとライカのミラーレス機を駆使してココロが動く写真を追求している。