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ペダルを正しく使って弾けていますか? ~ピアニスト本田聖嗣さん直伝「3マス流 本田メソッド」

NHK出版デジタルマガジン

ペダルを正しく使って弾けていますか? ~ピアニスト本田聖嗣さん直伝「3マス流 本田メソッド」

 ピアノは「がんばり」だけで上達するものではありません。必要なのは、体の仕組みと音の流れを理解し、無理なく弾く方法を知ることです。

 ここでは、ピアニストの本田聖嗣さんが多くの生徒さんを指導してきた経験から導き出したピアノ上達への近道、“3マス流 本田メソッド”の一部を紹介します。紹介するテーマは「ペダル」について。ペダルの種類や正しい使い方を教えます。
※本記事は、『NHK3か月でマスターするMOOK ピアノ もっと弾きたいこの3曲!』から抜粋・編集しています。

ピアノと出会う ~最速でうまくなろう

うまく聞こえる! ペダルの仕組み

 ピアノの演奏で、音を滑らかにつなげたり、響きを豊かにしたりするのに欠かせないのが、ピアノの足元に付いているペダルです。特に右端のダンパーペダルは、クラシックからポピュラーまで幅広く使われ、初心者にとっても“うまく聞こえる”強い味方になります。

 グランドピアノには、左からシフトペダル、ソステヌートペダル、ダンパーペダルの3つのペダルが付いています。最近のデジタルピアノにも、グランドピアノの仕様にならって3本のペダルを採用するモデルが少なくありません。一方、アップライトピアノでは構造上、中央のペダルの役割が異なり、マフラーペダルという踏むと音が小さくなる機能がついています。

 ここでは3つのペダルの中で、最もよく使うダンパーペダルについて紹介しましょう。ピアノの内部にはダンパーと呼ばれる部品があり、弦に触れる部分には、フェルトが使われています。鍵盤を押すことでダンパーが持ち上がり、同時にハンマーが弦をたたいて音が鳴るというのがピアノの発音の仕組みです。鍵盤を押し続けている間はダンパーが上がったまま、音も持続していますが、鍵盤を離すとダンパーが下がり、フェルトが弦に触れて音が止まります。ところが、ダンパーペダルを踏むと、このダンパーが一斉に持ち上がり、弦の振動が止まらなくなります。つまり、音が自然に伸びていくようになるわけです。

写真提供:株式会社ヤマハミュージックジャパン

シフトペダル(左)
 別名「ソフトペダル」とも呼ばれるこのペダルは、ハンマーの位置をわずかにずらすことで音をやわらかく、小さくします。グランドピアノには1つの鍵盤に対して通常2~3本の弦が張られていますが、シフトペダルを踏むことですべてのハンマーが少し横にスライドし、たたく弦が1本少なくなります。これにより、音量が抑えられ、音色も丸みを帯びて聴こえるようになります。ベートーヴェンのソナタなどでは、楽譜に使用する場所について指示が書かれていることもあります。

ソステヌートペダル(中央)
 特定の音だけを響かせることができる便利なペダルです。使う機会はあまり多くありませんが、タイミングよく使えば、非常に大きな効果を発揮します。鍵盤を押さえている状態でソステヌートペダルを踏むと、そのときの音だけが伸びて残り、後から弾いた音は響きません。ダンパーペダルのように全体に効果をかけず、選んだ音だけに作用する点が特徴です。構造上、基本的にはグランドピアノに付いているペダルで、使い方には少しコツがいります。現代音楽や印象派の作品などで効果的に使われる場面があります。

ダンパーペダル(右)
 音を自然に伸ばして、響きを豊かにするペダルです。ペダルを踏むと、ピアノ内部の「ダンパー」がすべて持ち上がり、鍵盤から指を離しても音が止まらなくなります。音を長く響かせたいときや、フレーズを滑らかにつなげたいときに活躍します。ダンパーペダルを踏むタイミングは鍵盤を押すタイミングと少しだけずらすのがポイント。「弾いたらすぐ踏む」「次の音を弾いたらすぐ離して踏み直す」といったタイミングの感覚を身につけることから始めるのがおすすめです。

アップライトピアノの場合、一番左のペダルはソフトペダルといい、ハンマーと弦の距離を短くすることで、音が小さく、まろやかになる。

※写真提供:株式会社ヤマハミュージックジャパン

まずは一番右のダンパーペダルを使いこなしましょう!

ペダルを踏んでいい音で弾こう


 

 ピアノの音をより美しく、滑らかに響かせるために欠かせないのが、ダンパーペダルです。はじめは「どう踏んだらよいのかわからない……」と、踏むのをためらうかもしれませんが、正しく使えば、音のつながりが生まれ、グッと上手に聞こえる演奏になります。

 例えば『月光』や『アラベスク』のような、音の余韻が大切な曲では、ダンパーペダルがその魅力を引き出してくれます。一方、『楽しき農夫』のような軽快な曲はペダルを踏まなくてもすてきな雰囲気になりますが、軽く踏みながら響きが濁らないように、踏む・離すをコントロールすると、よりきれいな流れに仕上がります。

 ペダルは「ただ踏めばいい」ものではありません。音のつながりと響きの広がりを耳で確かめながら、適切な響きの量と離すべきタイミングを判断することが大切です。

ペダル記号の見方と踏み方

 楽譜では、ダンパーペダルを使う場所を指示する際、ペダル記号を使って表記します。ペダル(Pedal)を略した斜体や筆記体の「Ped.」が書かれていたら、そこでダンパーペダルを踏むという合図です。ペダルを離す場所は、「*」(注)や、線を上側に閉じてあるので、そこで離します。また、線の途中に山形の記号が書かれている場合は、この記号の部分で離してから踏み直すという意味です。これは「踏み替え」といい、音が濁らないように響きを整理しながら必要な音を継続させる重要なテクニックです。

 ペダルを踏むときは、かかとは床につけたまま、つま先でペダルの先端を軽く押します。勢いよく踏み込むのではなく、フワッと踏んで、スッと戻す。この“踏み方の柔らかさ”も美しい響きのコツです。

※(注)本誌では別の記号表示で紹介しています。

響きを整えるハーフペダル

 音が濁ってしまうと感じたら、ダンパーペダルを半分ほどだけ踏む“ハーフペダル”を試してみましょう。ペダルを完全には上げきらず、少しだけ戻すことで、響きをほどよくコントロールできます。特に『月光』のように、絶えず低音を弾いていて響きが残りやすい曲では効果的です。ペダルを踏み込む深さを耳で聞いて調整する必要があるため、はじめは難しく感じるかもしれません。しかし、ペダルの動きと音の変化に意識を向けていくと、次第に自分なりの「ちょうどよさ」がつかめてくるはずです。練習の中で、ぜひ積極的に使ってみてください。

本田先生からコメントをいただきました!

本田聖嗣(ほんだ・せいじ)

ピアニスト。東京都出身。麻布学園中学・高等学校を卒業後、東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻入学。在学中に、パリ国立高等音楽院ピアノ科にも合格。半年間、日仏双方の国立大学に在籍。藝大を卒業後、パリ国立高等音楽院では、ピアノ科と室内楽科の両方でプルミエ・プリを取得。併せて高等演奏家資格(DFS)を最優秀(トレ・ビヤン)の成績で獲得する。新聞社勤務の父と作家の母のもとで生まれ育ち、子どもの頃から物事を“なんでも言語化”する癖がつく。ピアノ演奏はもちろん、フランス語、英語、料理、鉄道、飛行機、IT、歴史、地理、など、広大な趣味と興味の守備範囲を誇る。

◆『NHK3か月でマスターするMOOK ピアノ もっと弾きたいこの3曲!』
◆文 小林渡
◆イラスト 雉○/ Kiji-Maru Works
◆写真 岡田ナツ子

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