日本人デザイナー初の快挙。ニューヨーク市の公式パブリックアート・プログラムに、SOAR NYの花原正基が起用。ブルックリンで壁画を制作。
ニューヨーク・ブルックリンのクリエイティブハブ、DUMBOにて、ニューヨークを拠点に活動するデザインスタジオSOAR NY(本社:ニューヨーク市ブルックリン)の代表花原正基が手がけた壁画作品(ミューラルアート)《Water Game(ウォーターゲーム)》が完成した。本作は、DUMBO地区の名所「DUMBO Walls」の一角に加わる新たなパブリックアートとして、NYC DOT Art、DUMBO Improvement District、Colossal Mediaの協力のもと実現した。ニューヨーク市が所有する壁画に施す大規模かつ恒久的なパブリックアートは、日本人デザイナーとして初となる歴史的なプロジェクトである。※「日本人デザイナー初」:ニューヨーク市によって選ばれた常設のパブリックアートを担当したデザイナーとして(2025年7月時点、自社調べ)
カルチャーの一部として息づく、DUMBOのミューラルアート
ブルックリンのウォーターフロントに位置するDUMBO(Down Under the Manhattan Bridge Overpass)エリアは、倉庫街としての歴史を持ちながら、現在は世界中からアーティストやクリエイターが集まるニューヨークを代表するクリエイティブハブとして知られている。
その象徴のひとつが、「DUMBO Walls(ダンボ・ウォールズ)」と呼ばれる壁画群である。ステファン・サグマイスター氏をはじめ、歴代の世界的アーティストによって描かれた壁画が、高架下や通り沿いに並び、街全体が“オープンギャラリー”として機能している。アートが日常に溶け込み、人々の暮らしの一部として自然に根付いている。それがDUMBOの街の魅力につながっている。
マンハッタンからブルックリンへ渡ったすぐの場所がDUMBOエリア
DUMBO地区
日本人デザイナーとして初の快挙
ニューヨーク市から正式に依頼を受け、大規模で恒久的な壁画を手がけるのは、日本人グラフィックデザイナーとして初めてである(※)。ニューヨークの壁画のほとんどは民間のビルや壁に描かれることが多く、ニューヨーク市の所有物であるパブリックなスペースに描く機会自体が非常に貴重なものであった中で、花原が本件のアーティストとして起用された。
花原の作品は、DUMBOという国際的なアートの舞台における、日本人クリエイターの新たな到達点を示している。SOAR NYの活動拠点でもあるDUMBOにおいて、日本とニューヨークの文化を横断する視点から生まれたこの作品は、都市の記憶と未来を繋ぐ「新たなランドマーク」としてダンボエリアの公式ツアーガイドにも掲載され、注目を集めている。
街の景観の一部となっている壁画《Water Game》
※ニューヨーク市によって選ばれた常設のパブリックアートを担当したデザイナーとして(2025年7月時点、自社調べ)
ニューヨークと日本をつなぐ新たなビジュアルアート《Water Game》
本作品《Water Game》は、SOAR NY代表の花原正基が手がけた初の大規模パブリックアートである。場所は、ブルックリンブリッジの歩行者入口から1ブロック先の、アダムス・ストリートとプロスペクト・ストリートの交差点(108 Adams Street)。地元の人々や観光客が行き交う主要なロケーションに、幅約13メートル、高さ約7メートルのスケールで描かれた。
作品タイトルの《Water Game》は、1970年代に日本で発売され、後に日米両国の子どもたちに親しまれた玩具「ウォーターゲーム」に由来している。花原はこの作品に、自身のルーツである日本文化とニューヨークの多様性溢れる都市のエネルギーを重ね合わせ、「二つの文化の間を往復してきた旅路」をイメージした。
アーティストとしての花原にとって《Water Game》は、それまでの自身の作品に強く影響してきた「日本の美学にあるモダンなミニマリズム」から一歩踏み出す挑戦でもあり、この壁画では、ニューヨーク、そしてダンボの持つ力強くエネルギッシュな空気を取り入れ、まるで化学反応するかのように、鮮やかで躍動感あふれる色彩と動きのあるビジュアルへと昇華させている。
ウォーターゲームのイメージ
本プロジェクトは、花原が率いるSOAR NYの活動理念を体現するものである。SOAR NYは、企業ブランディングやキャンペーンの枠を超え、都市空間にグラフィックデザインを持ち込み、人々の記憶や感情に残る“デザインの拡張”を追求している。
制作はニューヨークの手描き広告分野におけるトップ企業Colossal Mediaとともに担当。さらにこの壁画は、NYC DOT Art(ニューヨーク市交通局アートプログラム)とDUMBO Improvement District(ダンボ地域振興団体)の支援により実現した。行政・地域組織・民間パートナーが連携して実現させたこのプロジェクトは、単なるアートを超えた、都市文化と市民の未来をつくる社会的実践でもある。
Colossal Media
NY市公式の壁画には壁にプレートが埋め込まれる
SOAR NYについて
SOAR NYは、ニューヨークを拠点に活動するグローバルデザインスタジオである。NY、東京・上海のメンバーが連携しながら、世界中のプロジェクトに取り組んでいる。私たちは、美しく大胆なビジュアル表現を強みに、ブランディング、ビジュアルアート、キャンペーンなどを数多く手掛けている。「美とは何か?」という問いを起点に、最新のニューヨークトレンドと現代的な日本のクラフトマンシップを融合させながら、都市に新たな感性をもたらすデザインを追求している。