【特集】新潟県が運営する移住相談窓口「にいがた暮らし・しごと支援センター」による本格的な伴走支援
「にいがた暮らし・しごと支援センター」銀座オフィス
近年、若者の地方移住への関心が高まっている。国土交通省が発表した2024年版の首都圏白書によると、東京圏在住者を対象にした調査で20代の44.8％が地方移住に関心があると答えた。一方で、その半数近くが「仕事や収入」の面において不安があり、移住に踏み切れずにいるのだという。
「当センターでは、しっかり相談者に寄り添います」
圧倒的な「伴走力」とフラットな対応で、移住促進の役割を担うのが「にいがた暮らし・しごと支援センター」だ。銀座オフィスの相談員の方に、新潟県が運営するセンターだからこそできる取り組みの内容について伺った。
ワンストップの対応で個々の事情を丁寧にヒアリング
東京都中央区の銀座・新潟情報館「THE NIIGATA」地下1階の移住相談窓口「にいがた暮らし・しごと支援センター」
「にいがた暮らし・しごと支援センター」は銀座オフィス、有楽町オフィス、新潟オフィスの3つで構成されている。首都圏を中心とした新潟県以外に在住の人の利用登録や直接の来所相談は、銀座と有楽町の2つのオフィスが対応する。特に銀座オフィスは新潟県へのU・Iターン就職に特化しているという。
相談員は、「当センターは、地域を限定せず新潟県全域を対象としています。ワンストップでご相談に対応できるのが大きな特徴ですね」と話す。
「たとえば『移住を考えている』という相談1つをとっても、移住後にフルタイムで働けるのか、介護等の可能性があって仕事との両立を考える必要があるのかなど、一人ひとりでご事情が違います。我々は杓子定規な対応をせず、丁寧なヒアリングを心がけています」
個々の状況に合わせて相談できるのが当センターの魅力だ。
「にいがた暮らし・しごと支援センター」銀座オフィスの相談ブース
大学訪問で新潟出身者の掘り起こしを行う
センターの利用登録者の年代は20代から30代がボリュームゾーンだ。働き盛りで、家族と一緒に移住を考える人、あるいはこれから家族をつくるなど、ライフステージが変わるタイミングでの相談が多い。一方で、2月から3月にかけては学生の相談が一気に増えるという。
「新潟県と協定締結をしている首都圏を中心とした県外大学のキャリアセンターに、私たち相談員が訪問し情報提供を行っています。これは、新潟県へのU・Iターン就職を希望する学生に向けて、県内就職についての情報を届けるためです。そういう学生のために当センターの支援の方法を説明して、大学からの周知をお願いしているんです」
大学のキャリアセンターは、地方となると名前の知られている有名企業やBtoCの企業に偏ってしまう。大学と連携することで、学生の選択肢の幅を広げるのが狙いだ。
「当センターは土日も窓口を開けていますので、面接が急に決まったときなども対応できます。キャリアセンターがお休みの日に対策したい場合、面接練習やエントリーシートの添削にセンターをぜひ利用してください。これも他にはない当センターの強みと言えると思います」
また、当センターは県の事業であるため、企業からの成功報酬や登録者の利用料を設定していない。だからこそ、紹介する企業や市町村に偏りなく、移住を希望する人にとってベストな提案ができるのだ。
相談者に寄り添う「伴走型サポート」と連携する横のつながり
当センターのサポートを利用し、燕市にIターンで移住した男性がいるという。元々は大手総合電機メーカーでセールスエンジニアの仕事をしていた男性は、30歳になった頃に転職を考えるようになった。自己分析の中で、一つの作業をコツコツ行い、さらに精度を上げる工夫をする工程にやりがいを感じると気づいたそうだ。
「職人になりたい」と直感が働いた男性は、学生時代から愛用していたチタン製真空二重タンブラーに注目。初めて使用したとき、保冷温効果の高さに感動したことを思い出した。
「そのタンブラーの製造元が、燕市の会社でした。相談者の方は行動力があり、熱意も高く、すでに燕市にも足を運んで地域のイメージもついていらっしゃいました。ただ、当センターに来てくれたときは会社側が職人の募集をしていなくて……」
同様にものづくりをする近隣市内の会社を紹介することもできたが、当センターの相談員は男性の熱意を受け止め、タンブラー製造会社の社長に直談判した。
一度は「社員は足りている」と断られたものの、「いい人材がいる、面接だけでもしてほしい」と同社に対する男性の情熱を伝えたことで社長は選考を承諾。面接を受け、無事に採用に至ったという。Iターン移住を叶えた男性は、今も燕市で職人として活躍している。
THE NIIGATA 2階の県産品販売ショップで購入できる燕三条地区の製品
こうしたサポートができる理由は、支援センターが県の事業である点が理由として挙げられる。相談者との最初のやり取りは銀座オフィスの相談員が行い、地場の企業に対しては新潟オフィスのスタッフが粘り強く社長に交渉した。さらに燕市の職員とも連携し、移住後の不安が少なくなるようにサポートを行ったという。
また、大学への訪問なども含め多方面でサポートができるからこそ、移住・転職後にミスマッチが起きにくい体制を整えることができている。
目的は「新潟で楽しく暮らしてもらうこと」
日本海の絶景が続く越後七浦シーサイドライン（新潟県新潟市）
「こんな経歴じゃだめですか？と相談にこられる方がいるんです。良いエージェントにめぐり合わなかったり、自分で就職活動に挑戦してうまくいかなかったりすると、自信を失ってしまう場合もあります。合う仕事はきっとありますし、当センターではそのために伴走支援を徹底しています。必要なのは企業側の求める能力の正確な把握と、ご本人の希望のヒアリングなので、“地元に帰りたいけど仕事がないから帰れない”という状況を1つずつ解消するのが私たちのミッションですね」と、相談員の方は力強く話してくれた。
当センターでは、企業から求人を預かる際も画一的な手続きではなく、ヒアリングを重視している。実際に企業の求める人物像や募集職種に求めているスキルなど、そういった部分を丁寧に聞き取り、理想のマッチングが起こりやすいように設計しているのだ。
「私たちの目的はあくまで移住・定住です。安定してお仕事が続いて、新潟で楽しく暮らしていただきたいと願っているので、単純に紹介数だけ上げれば良いとは考えていません。その分、求人をお預かりするときも少し手間や工数をかけていますね」
「にいがた暮らし・しごと支援センター」は、新潟県の仕事や暮らし、そのほか新潟に興味を持つ人であればだれでも利用できる場所だ。事情があり、すぐに帰らなければならない人はもちろん、5年後10年後、あるいは定年後といった長い時間軸で「いつか新潟に帰るとしたらどうしようか」と、そんな夢を話す場でもある。
まずはこうした支援センターの存在が広まることで、居住地や職業選択の幅が広がり、地方へ人が循環するきっかけになるのではないか。今後もU・Iターンを希望する方に寄り添ったサービスを提供する「にいがた暮らし・しごと支援センター」の取り組みに期待したい。
（インタビュー・文・写真 井高あゆみ）
銀座・新潟情報館「THE NIIGATA」
【店舗情報】にいがた暮らし・しごと支援センター 銀座オフィス
住所：〒104-0061 東京都中央区銀座5-6-7
銀座・新潟情報館 THE NIIGATA 地下1階
※ 建物1階横の通路を奥に進み、エレベーター又は階段をご利用下さい。
TEL：03-6281-9256
開設時間：10:30～19:30 ※2025年3月31日までは18:30までの営業
休業日：火曜日・祝日・年末年始
にいがた暮らし・しごと支援センターご利用登録ページ
※銀座オフィスへの来所相談はもちろん、メール・オンライン・電話でも相談可能です。
新潟U・Iターン総合サイト にいがた暮らし
※にいがた暮らしのイベント情報、補助金や支援制度の情報、空き家情報などが盛りだくさんの総合サイトです。
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