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福岡で異なるラーメンを成功させた「かなで」ブランドの4店目。“豚と節”の醤油ラーメンがうますぎる!

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中華そばかなで豚と節「醤油そばワンタン入り」

2024年、福岡のラーメン業界にも実力派の新店が続々とオープンしていますが、なかでも要注目の一軒、7月28日オープンの「中華そば かなで〜豚と節〜」をレポートします。
この店は特濃豚骨「かなで食堂」(2011年開業、春日市)、鶏醤油「中華そば かなで〜鶏出汁編〜」(2015年開業、東比恵) 、煮干し特化の「中華そば かなで〜煮干編〜」(2023年開業、多の津)に次ぐ“かなで系列”の4店舗目。僕は店主の松尾龍太郎さんとは開業当初から約13年になる付き合いで、彼のラーメン職人として、同時に経営者としてのセンス、これまで適材適所で異なるラーメンを立てた店舗を成功に導いてきた手腕を見てきました。ゆえに4ブランド目となる今回の新店も「松尾さんが手掛ける“かなで系”だからまあ、うまいに決まっているよね」と訪れる前からある程度の予定調和的な感覚でいたのですが、食べた結果、うまさは想像のはるか上。店のコンセプトを含め、改めて聞いた松尾さんの話からもさまざまな新発見がありました。

場所は、かなで系列で初の福岡市中心エリアとなる北天神。那珂川に面して立ち、店内もリバービューとなっていて、小バコながら開放感のある物件です。かつては僕もよく通っていた「讃岐うどん田」があった建物ですね。周辺にはオフィスビルが立ち並び、平日ランチが特に強いエリアといえます。

麺メニューは大きく「醤油そば」と「まぜそば」の2つ。
まず、屋号に付いた“豚と節”から僕は勝手に白濁した豚骨魚介を想像していたのですが全く違いました。キーである“節”の魚介要素はもちろん効いているものの、透明感を残した黄金色のスープは言うならば「“豚清湯(ぶたちんたん)”の醤油ラーメン」。付け加えると、しっかりとしたボディのスープ、麺も具材も食べ応えのあるガッツリ系醤油ラーメンです。

「関東風の古(いにしえ)の醤油ラーメンの中で、現代のニュアンスもさりげなく感じてもらえるような温故知新の一杯。このようなコンセプトの上で作り込んだので、当初は屋号も、“中華そばかなで〜昭和編〜”とか“〜ニューレトロ〜”などにしようとも思ったんですが、今一時でなく10年、20年先も普遍的に愛されるような名前にした方が良いと思い直しました。これまでと同じく、分かりやすい“素材”をサブタイトルにした方が受け入れられやすいのかなと思いシンプルな“豚と節”とすることにしたんです」と松尾さん。これまでも各エリアの傾向、時流を読んだ“1ブランド1店舗”展開で成功を収めてきました。

肉系+節系のラーメンは、それぞれを別々に炊いて合わせる“ダブルスープ”と、同じ寸胴で炊き上げる“一本炊き”に分かれますが、同店はより力強さの出る後者。まず昆布や干し椎茸と共に豚ゲンコツをたぎらせないように炊いた豚清湯スープを作り、そこに多彩な節(ウルメ、イワシ、サバ、宗田節)などをそれぞれ時間差で投入しながらさらに煮込んでいきます。油も節からとったものを使っているので、豚感の中で魚介要素もしっかりと主張。そして醤油の香りが実にいいですね。「〜鶏出汁編〜」で使っている島根県「井上 古式じょうゆ」のタレもそうですが、松尾さんは醤油の香りの引き立て方、スープの旨味を増幅させる黄金比を熟知しているのだなと心底感じます。今回は薄口の生揚げ醤油、再仕込み醤油などをブレンド。丼が卓上に運ばれてきた瞬間、鼻腔をくすぐる芳醇な香り、ほわっとした甘さ、みずみずしさも感じるんですよね。

また、麺も創業店「かなで食堂」において、新店開業に向けて新しい平打ち麺を開発。約3mmと、系列の中では最も太い麺となります。
「今回は特にタンパク成分の多い小麦を使っていて、ギュッとしまったような歯ごたえのある麺です。麺量も茹で前160gと食べ応えあり。替え玉はなく麺大盛り(+150円)で対応してます」と松尾さん。
デフォルトは「醤油そば」(1000円)ですが、松尾さんの“古き良き”へのこだわりと、遊び心を存分に感じられるのが「醤油そば ワンタン入り」(1300円)。鶏挽き肉を包んだワンタンの“ひだひだ”がびろ〜んと、とにかく長い! チュルリというよりも麺と同じように、噛みごたえのあるしっかりとした皮です。

真ん中には、豚骨ラーメン育ちの九州人でもなぜか懐かしく感じてしまうナルト。そして、ここもポイントなのですが、メンマは程よいクセのある糸島「タケマン」の“発酵メンマ”を使っています。このように細部にもこだわり、レトロ感を演出する仕掛けが詰まっているのです。

先の松尾さんの言葉にもあったように、“ニューレトロ醤油”、あるいは“ネオクラシック醤油ラーメン”と称したい一杯。
個人的には「らぁめん蔵持」(白金)などがもつ魅力に通ずるものがあると思いました。
豚骨ラーメンファンが最終的に辿り着くのが、あっさり味の王道博多ラーメンだとしたら、醤油ラーメン派の究極メニューはこういう風合いかもしれません。

常に新しい麺メニューを研究している松尾さんは、また異なるジャンルのラーメン専門店の構想もあるといいます。これからも「かなで」の動向に注目していきたいですね。

中華そば かなで〜豚と節〜
福岡市中央区天神4-10-2
10:30〜15:30/17:00〜19:30、日曜は昼のみ営業

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