【京都府・大山崎町】大自然に溶け込む美術館で建築美と芸術にふれる
京都府乙訓(おとくに)郡の魅力「乙な京都™」を発信すると言っておきながら、エリアを代表する名所を紹介していませんでした。今回は、天王山の麓にたたずむ「アサヒグループ大山崎山荘美術館」をご紹介します。貴重な建築や安藤忠雄氏設計の新館、そしてクロード・モネの傑作《睡蓮》連作など見どころ満載です。
【画像】喫茶室のテラスからは男山や遠くは奈良の山々の景色が広がる
ビールとウイスキーに情熱を注いだふたりが残した文化遺産
美術館本館である「大山崎山荘」は、1912年(大正元年)、風光明媚な大山崎の地に関西の実業家であった加賀正太郎氏が自ら設計し建てはじめた個人の山荘でした。若き日の欧州留学で得た知見が随所に生かされ、昭和初期には大幅に増築されました
1954年に加賀氏が亡くなり、ついで夫人がこの世を去ると、1967年に大山崎山荘は加賀家の手を離れることに。幾度かの転売ののち、建物の老朽化が進んだこともあり、1989年には取り壊しの危機に直面。加賀氏はニッカウヰスキーの創業にも参画していたことから、深い親交のあった朝日麦酒株式会社の初代社長であった山本爲三郎との縁から、1996年にアサヒビール株式会社が行政と連携を取りながら、山荘を復元し「アサヒビール大山崎山荘美術館」として復活しました。2023年には館名を「アサヒグループ大山崎山荘美術館」に変更し、現在に至ります。
安藤忠雄氏の建築と巨匠クロード・モネの《睡蓮》
「大山崎山荘」が美術館として再生するにあたり、新棟が増設されました。設計は建築家・安藤忠雄氏で「地中の宝石箱」(地中館)と名づけられました。氏の建築を象徴するコンクリートの構造物は、半地下構造で設計され、円柱形の展示空間上部には植栽がほどこされるなど、周囲の景観と調和がはかられています。
ガラス張りの通路を下りると、地中の展示空間へ。ここでは印象派の巨匠クロード・モネの《睡蓮》連作が常設展示されています。
6〜8月には庭園池の睡蓮が花開き、絵画との競演を楽しむことができます。
「民藝」の魅力を受け継ぐ山本爲三郎コレクション
大正から昭和初期の西洋風山荘建築としての文化的価値も高く、2004年には美術館本館をはじめとする6つの建造物が国の文化財登録を受けました。そして、山荘着工からちょうど100年を経た2012年、安藤忠雄氏設計による新棟、「夢の箱」(山手館)が竣工。そんなアサヒグループ大山崎山荘美術館には、美術館開設に際して寄贈された山本爲三郎コレクションがあります。
民藝運動への支援にも熱心だったことから、河井寬次郎や濱田庄司、バーナード・リーチなどの逸品を所蔵しています。また、伝統工芸や絵画、その枠に収まらない企画展覧会も年3〜4回開催されているので、季節を変えて何度訪れても新しい魅力を感じることができます。
■アサヒグループ大山崎山荘美術館住所:京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3電話番号:075-957-3123(総合案内)アクセス:JR京都線「山崎駅」または阪急京都線「大山崎駅」下車、徒歩約10分営業時間:10:00~17:00(最終入館は16:30まで)休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜)、臨時休館、年末年始入館料:一般:企画展ごとに異なる、高・大学生:700円、中学生以下:無料、障害者手帳、ミライロIDをお持ちの方:500円(付添者1名無料)URL:https://www.asahigroup-oyamazaki.com
まとめ
今回の「乙な京都」はいかがだったでしょうか。何度も訪れたことがあったので、だいたい知っているつもりでしたが、再訪してみると新しい発見がたくさんありました。100年以上前の木造建築が現存していることは奇跡と言っていいほどかけがえのないことですし、それを可能にした人の想いも尊いと感じました。
TEXT by 乙な京都™