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長引く咳は危険なサイン!大人がなると怖い「手足口病」「マイコプラズマ肺炎」の症状や予防策

アットエス

全国平均より静岡は突出して多い手足口病。マイコプラズマ肺炎は過去10年で最多


夏場、主に子どもが感染し、手や足、口の中に発疹ができる「手足口病」の感染者が秋になっても増加しています。静岡県では、1医療機関あたりの患者数が全国平均7.77人に対して12人と特に猛威を振るっています。そして「マイコプラズマ肺炎」は過去10年で最悪の感染者数をカウントに上り、冬にかけてさらに警戒が必要とされています。

SBSアナウンサー影島亜美が浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫先生に対策を聞きました。

影島:改めて手足口病について教えてください。

矢野:主に夏場に幼い子どもが感染し、手や足、口の中に水ぶくれ状の発疹ができるウイルス性の感染症です。まれに脳炎などを引き起こして重症化することがあります。

今年はコクサッキーウイルスA6型の流行が確認されています。このウイルスの手足口病は通常の手足口病より「高熱になりやすい」「重篤化する可能性が高い」「通常は手掌や足底に認められる発疹、水疱が全身に広がる」という特徴があります。

通常の潜伏期間は3~5日です。その後、口の中、手のひら、足底や足背などに2~3mmの水疱性発疹が出ます。発熱は感染者の約3分の1に見られますが、高熱が続くことは通常ありません。症状は1週間程度でなくなります。

手足口病は大人がなると重症化

影島:大人が罹患すると大変なんですか。

矢野:成人でも手足口病になることがあります。この場合、子どもよりも症状が重いことが多いです。特に発疹の痛みが強く、足裏などにひどく出ると歩けないほどです。

成人ではインフルエンザのような、全身倦怠感、悪寒、関節痛、筋肉痛などの症状が出ることがあります。身近に手足口病の子どもがいない場合、多くは発疹が出ても手足口病には思い至りません。そして、何だか分からずに受診するケースが多いです。

影島:口が痛くなると水分補給もしづらくなりそうですね。脱水の注意も必要ですか。

矢野:こまめな水分補給も必須になります。

手足口病は合併症に要注意

影島:一度かかれば免疫ができてかかりにくくなりますか。
 
矢野:手足口病の原因ウイルスにはさまざまなウイルスがあるので1度かかって免疫ができても、何度もかかる場合があります。

例えば「コクサッキーウイルスA6・A16」、「エンテロウイルス71」まれに「コクサッキーウイルスA10」など他のウイルスに感染すると、また発症することになります。手足口病には、抗ウイルス薬はないので、熱を下げたり、発疹の痛みを抑える解熱鎮痛剤による対症療法が中心です。多くは、一週間程度で治りますが、なかには「髄膜炎」、「脳炎」などの中枢神経系の合併症や「心筋炎」、「急性弛緩性麻痺」などを引き起こすケースもあります。そのため、高熱が続いたり、頭痛、嘔吐などの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

影島:大人も油断できないですね。

咳が出たらすぐ受診!恐るべしマイコプラズマ肺炎とは

影島:一方のマイコプラズマ肺炎はどんな病気ですか。

矢野:「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することで起こる呼吸器感染症です。

この病原体は成人や小児の上気道感染症(風邪症候群)、急性気管支炎、肺炎の最も多い原因菌の1つです。主に飛沫を介して人から人に伝播します。家庭や学校などの密集した場所で最も伝播しやすいですが、感染してもほとんど無症状です。

症状が見られる場合、上気道感染症、急性気管支炎、肺炎のことがあります。上気道感染症では咳が主な症状であり、咽頭痛、鼻水、耳痛がみられます。急性気管支炎では咳が難治性であったり、長引くことがありますが上気道感染症や急性気管支炎は、自然に治癒するので抗菌薬による治療は必要ありません。しかし、呼吸器症状のある患者の3~10%が肺炎となるので、この時には抗菌薬が必要です。

「歩く肺炎」と言われる理由は?

影島:肺炎になる人はどの年齢層が多いですか。

矢野:若い人に多いです。マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は2~3週間ですが通常、マイコプラズマ肺炎は軽症なので、普段の活動を妨げません。肺炎になっても、外出することができるほど元気で「歩く肺炎」と呼ばれることがあります。その結果、多くの人々に病原体を伝播させることになります。

影島:肺炎になってもわからないのは怖いですね。びっくりしました。

矢野:症状としては、持続的な咳による胸痛や喘息が増悪することもあります。喘息のない小児でもヒューヒュー、ゼーゼーなど喘鳴を引き起こすことがあります。

無症状だからこそ、危ない...。

肺炎マイコプラズマによる症状には、病原体による直接的な障害と自己抗体(自分の組織や臓器などに対する抗体)による免疫反応があります。患者の半数以上に溶血(赤血球が破壊される)が見られますが、これには免疫反応が関連しています。溶血になっても多くが無症状で自然に治癒します。頻度は少なくなりますが、発疹、関節痛、中枢神経症状(脳炎や髄膜炎など)、心臓疾患の症状(心膜炎や心筋炎など)があります。これも免疫反応によるものです。

影島:厄介な感染症ですね。予防をするには手洗いとうがい、そしてマスクの着用でしょうか。

矢野:マスクの着用は有効です。それに加えて、手洗いも励行してください。手足口病などの様々な感染症の予防に有効だからです。便に病原体が含まれている場合、トイレの後に手を洗わなければ目や口から菌が侵入してしまいます。

また、体調がすぐれず咳が多い人はマスクの着用で周囲への飛散を減らせます。規則正しい生活をして体調を整えることが大切です。そして咳が長引く人はぜひ病院で受診してください。結核など他の疾患の可能性があるのでそれを除外した方がよいでしょう。

影島:咳が長引くなど少しでも異変を感じたら病院に行くことが大切ですね。矢野先生ありがとうございました。

※当サイトにおける情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、並びに当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。

 

免責事項

※2024年10月8日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。今回お話をうかがったのは……矢野邦夫先生
浜松医療センター 感染症管理特別顧問。1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センターに勤務。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科に短期留学。2008年より副院長、2020年より院長補佐。2021年より現在に至る。医学博士、感染症専門医。著書多数

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