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蔵前・両国のコーヒーがうまい名店7選。インバウンドでもにぎわう東京ローカルのコーヒータウンへようこそ

さんたつ

LEAVES COFFEE ROASTERS1

両国と蔵前は、どちらも風情感じる古い街並みと、新進気鋭の新しい景観が共存する街。この街にはコーヒーを求めて国内はもちろん、海外からの観光客も訪れる。厳選した豆と、卓越した技術で淹れられたこだわりの一杯をどうぞ。

コフィノワ

サステナブルにも配慮。シドニー発の人気店『SINGLE O RYOGOKU ROASTWORKS / CAFE(シングル オー リョウゴク ローストワークス / カフェ)』【両国】

ほどよく錆びたトタンは、もとの建物の風情を生かしたもの。

コーヒー好きの夫婦、ディオンとエマがシドニーで2003年に開いた『シングル・オー』。創業当初の名称「シングルオリジン・ロースターズ」を略して今のブランド名になった。シドニーでは新鮮な豆がなくイタリアから来るエスプレッソ用の焙煎豆がほとんどだった頃からシングルオリジンに注目し、当地のサードウェーブ界のパイオニアとして名高い。そんな名店の海外1号店が、2014年にオープンした両国店だ。今は当初の場所から200mほど移動して、いっそうカフェ機能を充実させた。

バリスタとの距離が近い、オープンな雰囲気がうれしい。

サステナブルに注力するのは本国同様。ドリップより安価な設定のタップオン、余り粘土で作られたスラッジカップも印象的だ。コーヒー豆はシドニーのバイヤーが買い付けて日本に送る。焙煎機も本国と同じプロバット。

気軽に飲めるタップオン。もとはシドニーの店で始めたもの。

外国人客も多く、例えば浜町の支店では全体の半分以上になるそうだ。「本当においしいのでぜひ」とすすめられたラテとバナナブレッドの組み合わせは、まさに至福のひとときを楽しませてくれた。

ラテ600円とバナナブレッド・エスプレッソバター添え700円。
アーティストに頼んでデザインしているおしゃれな豆袋も好評。

『SINGLE O RYOGOKU ROASTWORKS / CAFE』店舗詳細

SINGLE O RYOGOKU ROASTWORKS / CAFE(シングル オー リョウゴク ローストワークス / カフェ)
住所:東京都墨田区亀沢3-21-5/営業時間:10:00~18:00/定休日:月・火/アクセス:JR総武線・地下鉄大江戸線両国駅から徒歩15分

下町のゆるさが似合う実力派ロースタリーカフェ『Coffee Wrights 蔵前ロースタリーカフェ』【蔵前】

ハンドドリップは680円~。本所にある系列店『Marked(マークト)』特製のチーズケーキ750円とともに。

2016年に三軒茶屋に開業した『Coffee Wrights(コーヒーライツ)』。その翌年、焙煎所の移設を見据えて蔵前店はオープンした。「コーヒー巡りをしているお客さんにはおすすめの店を教えたり。距離感を抱かせず、カジュアルにコーヒーを楽しんでもらえる空間を提供できたら」とマネージャーの森田明日香さん。

ウッドパネルが印象的な2階のカフェ空間。静岡のCHAB DESIGNが内装を担当。

2階のカフェスペースには町工場時代の名残が感じられ、大きな窓の外に広がる下町の日常風景はどこかほっとした気分にさせてくれる。その穏やかなたたずまいに隠れがちだが、焙煎大会で優勝した実績を併せ持つ同店は、スペシャルティコーヒーのクオリティも期待通り。

もとはラミネート加工の工場や事務所として使用されていた。

エスプレッソドリンクは日替わりの豆を使用し、ハンドドリップであれば定番のアンペアブレンドのほか、6〜7種揃うシングルオリジンから豆を選ぶことができる。豆の詳細情報を記したカードが付くのもコーヒー好きにはうれしいポイントだ。少数限定の特別なコーヒー豆が金属缶タイプで販売されることも。見つけたらぜひ手にとって。

マネージャーの森田さんは創業時からのスタッフ。
ヘッドロースターの堺原拓人さん。2024年のCOFFEE COLLECTIONとAMBESSA JAPANの2大会で焙煎を担当し、見事優勝した。
焙煎は1階奥にあるプロバットの12㎏釜で。平日はフル稼働。

『Coffee Wrights 蔵前ロースタリーカフェ』店舗詳細

Coffee Wrights 蔵前 ロースタリー&カフェ(コーヒーライツ クラマエ ロースタリー&カフェ)
住所:東京都台東区蔵前4-20-2/営業時間:11:00~16:00(土・日・祝は10:00~17:30)/定休日:月・火(祝の場合は営業)/アクセス:地下鉄浅草線・大江戸線蔵前駅から徒歩2分

誠実さが生む日常に寄り添う優しいコーヒー『SOL’S COFFEE ROASTERY(ソルズコーヒー ロースタリー)』【蔵前】

店の前の椅子に座ってのんびり。下町情緒も味わいに花を添える。

コンセプトは「毎日飲んでも体に優しいコーヒー」。その味わいを実現するために良質の豆を厳選し、焙煎前後の2回、欠点豆を丁寧に取り除くことを欠かさない。この手間がクリアな一杯を生み出している。

この日、店頭に並んでいた豆はシングルオリジン5種を含めて11種類。ブラジル、グアテマラなどのメジャーな産地だけでなく、昨今発展著しい中国の豆もあり、好奇心をくすぐられる。焙煎は中煎りから深煎りが中心で、抽出はハンドドリップかエスプレッソかを選べる。

お客さんでにぎわう店内。

コーヒーのお供には、サバサンドを。サバを中心にした具材とパンとの驚きのハーモニーに思わず頬が緩む。「店名のSOL’SはSerendipity of Lifeの頭文字で、人生の中で偶然に幸せを発見できる才能のこと。集う人が幸せを見つける場になればうれしいですね」とオーナーの荒井利枝子さん。格別のコーヒーと料理と親しみやすさ。三拍子揃った店との出合いそのものが、すでに幸せだ。

ドリップコーヒーもカフェラテも楽しめる。
コーヒーに合う絶品サバサンドイッチは700円。ハンドドリップのエチオピア イルガチェフェ ウォテコンガ2300ナチュラルは750円。
オーナーの荒井利枝子さん。

『SOL’S COFFEE ROASTERY』店舗詳細

SOL’S COFFEE ROASTERY(ソルズ コーヒー ロースタリー)
住所:東京都台東区浅草橋3-25-7/営業時間:8:00~15:00(月・金は~17:00、土・日・祝は9:00~18:00)/定休日:無/アクセス:地下鉄浅草線・大江戸線蔵前駅から徒歩3分

街に溶け込む隠れ家で味わうネルドリップとチョコレート『蕪木(かぶき)』【蔵前】

酸味もおいしい「珀」800円。添えられたチョコレートとともに。

にぎわう蔵前にあって、ひときわ個性的なのがこの『蕪木』。住所を頼りに尋ね当ててもなお、本当にここ?と訝(いぶか)る控えめな外観があるばかり。門構えのような入り口の奥には木の扉があり、開けるとチョコレートのショーケースや焙煎機のある空間に出る。

本当にここ?と思ってしまう控えめな外観。入る前から期待値が上がる。

「喫茶は2階へどうぞ」と案内されて階段を上がると、明かりを抑えた部屋に、栗の木でできた長い一枚板のカウンター。店主は焙煎士でチョコレート技師でもある蕪木祐介さん。コーヒー好きなら著書『珈琲の表現』を読んだ人もいるだろう。栽培や製法に共通点も多いコーヒーとチョコレートを、どちらも丁寧な手仕事で作って出している。

店舗2階がカフェスペース。空間は思いがけず広く、ひっそりと静かな雰囲気がいい。

ネルドリップで淹れてくれたのは、コーヒー「珀」。ケニアの深煎りがベースで、深めながらもきちんと酸味もあるのがうれしい。来店客に話しかけることはほとんどないそうだ。「静かに、内に向かうようなひとときを楽しんでいただければ」。質の高いコーヒーとチョコレートのマリアージュを、ゆっくりと堪能したい一軒だ。

コーヒーはネルドリップで丁寧に淹れる。
テーブル席もあるが、入店は2人以下で。静かに過ごすのが似合う店。
1階は焙煎豆やチョコレートなどの店。カフェはここを抜けて上階へ。

『蕪木』店舗詳細

蕪木(かぶき)
住所:東京都台東区三筋1-12-12/営業時間:10:00~18:00(金は~20:00、土は9:00~20:00、日・祝は9:00~。月は販売のみで~17:00)/定休日:火/アクセス:地下鉄浅草線・大江戸線蔵前駅から徒歩5分

アメリカのメディアも注目のロースター焙煎拠点『LEAVES COFFEE ROASTERS(リーブス コーヒー ロースターズ)』【両国】

ラボの科学者を思わせる抽出風景。奥にはブラックで統一された焙煎機が3台。

コンセプトは「町のロースタリーから世界へ」。3台の焙煎機に囲まれながらそう話す石井康雄さんは、『LEAVES』の創業者であり焙煎士。界隈のコーヒーシーンでも早くから知られた人だ。それもそのはず、アメリカのコーヒーメディア『Sprudge(スプラッジ)』に日本人初の「注目に値するロースタリー」として2年連続で選出された腕前で、その気高いコーヒーを求める人が国内外から両国の路地裏目指してやってくる。

ボリビアの貴重なゲイシャ。品質にふさわしいパッケージも好評だ。

「自分が思う本物を作っていれば、店がどこにあってもお客さんは来てくれると思うんです」

取材時に味わったのはコロンビア。「このラ・ネグリタ農園は、競技大会でバリスタがよく使う豆です。テロワールの魅力とフルーティーさが爆発しているところが素晴らしい」。しかも、この農園の珍しいピンクブルボン種を出したのは同店が世界初だったとか。

コーヒー粉の状態をWDTツールで均質にならす。

常にクオリティ第一と考えていて、焙煎に集中すべく営業日は週4日のみ。それでもストイックにおいしさを追究する姿にひかれ、コーヒー好きが足繁く通う。

コロンビア ラ・ネグリタ農園。1杯3000円。
外壁の緑色のタイルは近隣でも見かける昔ながらのもの。店奥の棚には整然と焙煎豆や器具が並ぶ。
窓際のカウンターが特等席。両国の静かな路地裏で至福のひとときを。

『LEAVES COFFEE ROASTERS』店舗詳細

LEAVES COFFEE ROASTERS(リーブス コーヒー ロースターズ)
住所:東京都墨田区本所1-8-8/営業時間:10:00~17:00/定休日:火~木/アクセス:地下鉄浅草線・大江戸線蔵前駅から徒歩7分

コーヒーの余韻に表れる飽くなき探究心『LUCENT COFFEE(ルーセント コーヒー)』【蔵前】

EL SALVADOR Los Pirineos 1000円、パウンドケーキ500円はカルピスバターやきび砂糖を用いた、軽くて素朴な味わい。

ハンドドリップの折々で、店主の中田真さんが頻繁に行うのが、香りを嗅ぐこと。「好きな匂いほど嗅ぎたくなります」と、笑顔を向ける。夫妻はともにメルボルンでバリスタの腕を磨き、2019年にものづくりの街で開店。熱風を当て表皮を焦がさぬ焙煎機を駆使して焼くのは、テロワールを生かした生豆だ。なかには環境に左右されず、発酵をコントロールした生豆もあり、「発酵技術はまだまだ進化しています」と話す。

豆の量14.5gに対して230mlの湯を注ぎ、200mlを抽出。

豆のフルーティーな甘みを引き出すため、浅煎りを旨とし、「1℃、2℃でも結構変わるので」と、豆ごとに最良の焙煎温度を探し当て、さらには挽き目、抽出も豆ごとの最良を突き止める。その探究心には頭が下がるばかりだ。

通りに面した小窓でドリップする中田さん。壁沿いにベンチがのびる店内。

飲むと、フルーティーな味わいの後、甘みが口中に広がって余韻へ続く。その味に惚(ほ)れ、出勤前に立ち寄る常連客はもちろん、バカンス中の欧米人も通い詰める。テイクアウトも多いが、縁側のようなベンチで気張らず味わえる焼き菓子も用意。コーヒーの爽やかな甘みをさらに引き立てている。

焼き菓子は4種類。
「酸っぱさは苦手ですが、しっかりした甘さの余韻が残るようなゴクゴク飲める味を」と浅煎りに。
「自然に溶け込む日常の一部になるように」と願いを込めた看板が目印。

『LUCENT COFFEE』店舗詳細

LUCENT COFFEE(ルーセント コーヒー)
住所:東京都台東区寿1-17-12 レモンビル1F/営業時間:8:00~16:00/定休日:火・水/アクセス:地下鉄銀座線田原町駅から徒歩4分

高地栽培の良質豆を中心に目利きで選んだ豆を丁寧に焙煎『コフィノワ』【蔵前】

精選過程よりも「なるべく素材としてのコーヒー豆自体がおいしいものを選んでいる」と店主・高橋さん。

地下鉄浅草線と大江戸線の蔵前駅の間、大通りに囲まれた三角地帯に店はある。ここだけ隔絶されたかのような静けさで、いい意味での東京ローカルを感じられる。『コフィノワ』は2016年開業の、蔵前でも定番人気の一軒だ。

蔵前でも人気のロースタリーカフェ。爽やかな雰囲気で入りやすい。

国際コーヒー鑑定士・Qグレーダーなどの資格を持つ店主・高橋史郎さんは長年の経験を誇る焙煎のプロ。常時13〜14種ほどある豆は、目利きで選んだ「素材そのものがおいしい豆」。結果的に寒暖差のある標高の高い豆が多くなる。

「スペシャルティという言葉は素材までの話だと感じています」と言うように、その先の焙煎から抽出までも非常に大切。「ロースターが味の3分の1を担う」と思うから、自分の思う浅煎りから中深煎りで勝負するべく、焙煎機は半熱風式にカスタマイズした。

カウンター脇や窓辺、テラス席など居心地のいい席がいくつもある。

業界の流行り廃(すた)りを見てきただけに、派手さはなくとも「昔からある品種って、やっぱりおいしいよね」という気持ちもあるそう。そんな店主による、全体像を俯瞰(ふかん)しているからこその「おいしい一杯」をぜひ味わいたい。

香り高いコロンビア チロソ800円。
白壁と黒いタイルのカウンターのシックさと木の温もりが同居する店内。
店奥には珍しいラッキーコーヒーマシンの焙煎機。もとは直火式だが半熱風式に改造した。

『コフィノワ』店舗詳細

コフィノワ
住所:東京都台東区蔵前3-20-5/営業時間:11:00〜18:00/定休日:木/アクセス:地下鉄浅草線・大江戸線蔵前駅から徒歩1分

文=高橋敦史、永島岳志、木村理恵子、林さゆり 撮影=高橋敦史、永島岳志、富貴塚悠太、元家健吾

MOOK『散歩の達人 東京スペシャルティ珈琲時間』より

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