甘く香り豊かに…「森の恵み」が北海道の新たな特産品に?林業の安定にも貢献
今、北海道内各地で生産の動きが広がっているものがあります。
雪どけ時期が旬ともいえる、甘ーい「特産品」。その生産の現場を取材しました。
森の恵みの甘味料
北海道十勝の池田町の森に張り巡らされたチューブ。
約2000本の木につけられているのは採取口。ここから集められるのは「樹液」です。
春に芽吹く前のカエデなどの樹液から作られるのが、天然の甘味料「メープルシロップ」。
国内流通量のほとんどがカナダ産で、国産は1%にも満たないと言われています。
北海道の森の恵みは、新たな特産品となるのでしょうか。
大阪府の企業「ニッタ」は、十勝地方に6700ヘクタールの森林を所有し、グループ会社で原木を販売するなどの林業を行っています。
わくっとニッタの山口聡士社長は「この山林の立地が、カナダのメープルシロップの産地・ケベック州と、緯度や気候も似ているということでメープルシロップがここでも作れるんじゃないか」と考えたといいます。
この森をより活用しようと、メープルシロップを生産する新会社を設立し、2月から池田町で本格的な製造に挑戦しています。
イタヤカエデとヤマモミジ、約2000本から集められた樹液は、60分の1ほどに煮詰められ、糖度約66%に濃縮されます。
この濃縮機にくべる薪も、森を管理する際に出る”間伐材”を使っています。
こうしてできたシロップは、「モミジシロップ」の商品名で、4月中旬から十勝地方の道の駅で、1000円ほどで販売する予定です。
山口社長によると「カナダのサトウカエデから作ったメープルシロップと比べると、少し後味がサッパリしている」んですって!
メープルシロップは毎年利益を生んでくれる
林業とメープルシロップの製造は、事業としてもマッチすると山口社長は話します。
元々、本場のカナダでも林業をやってる人々の冬場の仕事として発展してきた経緯があるというメープルシロップづくり。
林業では1本の木を植えて、その木が育ち売り上げになるまでには30年以上の時間がかかります。
「メープルシロップの事業は、毎年、毎年、樹液が取れて利益を生んでくれる。だから、この林業業界においても経営の安定性を高めてくれる可能性を秘めています」
1本の木からは100年間、樹液がとれるといいます。
わくっとニッタでは、今後も毎年1万本のカエデを植えて事業を広げ、将来は、北海道をメープルシロップの一大産地に育てるのが大きな夢だということです。
実は札幌のおとなりでも
そして、札幌市のとなりの当別町でも2025年から本格的な生産が始まりました。
手がけているのは、札幌市で長年メープルシロップ専門店を営むカナダ出身のマーク・ギャニオンさんです。
道産メープルシロップの可能性を聞いてみると。
「北海道は良い場所。カナダのケベック州と気候が一番似ている」
北海道のカエデの樹液は、カナダのカエデよりも糖度が低いため、シロップにする際は、1.5倍ほどの量の樹液が必要です。
これを長時間煮詰めて濃縮する過程で、独特の風味が生まれるといいます。
「長い時間煮詰めるとすごいキャラクター(特徴)あります。香り、ちょっとスモーキー」
ギャニオンさんは、当別町で自ら作るメープルシロップをゆくゆくは本場カナダのコンテストに出品して、その魅力を世界に紹介したいと考えています。
「ボリューム(生産量)は難しいけど、ちょっとできる。いまも今年のメープルシロップ、私びっくり。とても美味しい。北海道産のメープルシロップはすごく美味しいです」
北海道から新しい可能性を。動きが加速しています。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年4月3日)の情報に基づきます。