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8カ月に及ぶDIYで廃屋を復活! 限界集落にある人気の古民家宿【高知県大豊町】

田舎暮らしの本

8カ月に及ぶDIYで廃屋を復活! 限界集落にある人気の古民家宿【高知県大豊町】

都会から離れるほど、集落に歴史があるほど深く結び付く社会がある。そんな、「よそ者が気楽に移住」しにくい山里で暮らして12年目の夫婦に、限界集落でいかに家を手に入れ、改修し、暮らしを築いたかを聞いた。

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掲載:2025年2月号

高知県大豊町 おおとよちょう 
人口2969人(令和6年11月)。町内は標高200~1400mの山岳地形で、標高450m前後の山肌に集落が点在する景観が特徴的。町内を貫く吉野川はラフティングの聖地でたくさんの観光客を集める。新大阪駅からJR利用で3時間15分前後、高知空港から車で約40分。

移住支援はなかったが、人とのつながりが助けに

安達大介さん(42歳)・佑実子さん(42歳)夫妻 
岡山県出身、子ども2人との4人家族。2013年に東京都から移住し、築約100年の古民家を改修した「お山の宿みちつじ」を開業。写真右が「お山の宿みちつじ」、左が離れで自宅として利用。台所や風呂、トイレは宿と共用している。山の集落のたたずまいや家庭的なもてなしが好評で、主に欧米からの外国人宿泊客が8割を占める。
住所/高知県長岡郡大豊町永渕454 

 安達さん夫妻が暮らすのは、世俗から離れた急な山肌の集落。見渡せば深い峡谷の山岳で、雄大で美しいが多くの人は「移住は厳しそう」と感じる環境だ。しかも、「移住したころ、行政やNPOの移住支援はなかった」と大介さん。それでも空き家を借りて自分好みに改修し、宿にできたのには理由があった。

 「この峡谷の吉野川のラフティングガイドが25年以上前から移住していて、私の義兄もその1人でした」。ゆえによそ者への壁は低く、安達さん夫妻もすんなり受け入れられた。

 しかし、借りた物件は「すんなり」ではなかった。母屋は壁も天井も損傷し、居間は我慢すれば寝られる状態。風呂小屋は崩壊、トイレは仮設だ。

 「今なら選ばない物件、チャレンジ魂がありました」と大介さん。家の改修で出た廃材は庭で焚き火にして移住当初は「キャンプみたいだった」と言う。

 始まりは義兄が「古民家の宿をしないか?」と誘ったから。

 「東京での子育てや将来に不安があり、東日本大震災も背中を押しました。義兄の奥さんは私の姉なので心強かったし」と佑実子さんは振り返る。

安達さんが暮らす永渕集落からの吉野川の眺め。永淵集落は標高400m前後、ユズ畑などの農地に民家が点在し、28世帯58人が暮らしている。

宿の居間は、廃材でリフォームしたとは思えない素敵な和の空間。「お山の宿みちつじ」では、宿泊客と安達家族が一緒にここで朝も夜も食事をして交流する。

【Before】赤土をとって土壁づくりに挑戦!

【After】壁は伝統的な工法と地域の材料で土壁に。子どもたちも楽しみながら改修した。台所部分は佑実子さんの力作で、10年を経ても崩れることなく美しい。

 家の改修は主に大介さんと義兄の2人で。工具は、本格的にDIYを趣味とする人が揃えるものぐらい。東京で建築関係の
仕事をしていた大介さんは、本職の大工ではないが知識や経験があった。それでも家の基礎を直すなど難題も……。

 「完璧を求めない、後戻りをしないことが大切でした」と大介さん。「じゃないと完成しない(笑)。宿の開業が目標でしたから」

 建築資材は浴槽やトイレ以外ほぼ廃材。「義兄が集めていたし、知人ができると廃材情報が届くんです(笑)」。廃材利用は廃棄物処理費の削減で地域貢献にもなった。土壁補修の赤土については、集落の住民に採取地を教えてもらった。それは山暮らしの知恵の継承でもあった。

 宿は改修開始から約8カ月で完成。その8年後、宿と自宅は借家から持ち家に。家主が先祖伝来の土地と家を売るという、この山里の住人にとって大きな決断をしたのだ。宿泊業を頑張り、消防団にも祭りにも参加して地域になじんだ安達さん夫妻を、「この人なら」と認めたのだろう。田舎での起業に必要なのは地域とのつながりだと、2人の宿の繁盛は教えてくれる。

イモなどを保存していた床下の地下貯蔵庫は、石垣を我流で積み直した。また、基礎の柱の一部が宙ぶらりんで、柱をジャッキで持ち上げて修繕。

【Before】ボロボロだった離れは家族の空間に

【After】離れがあったのはラッキー。宿のすぐそばで、家族のプライベートスペースを確保できた。修繕だけでなく、窓の部分を張り出す増築もして快適度アップ!

【Before】五右衛門風呂づくり

【After】湯船は市販品を購入したが、五右衛門風呂とトイレが入る小屋を全部手づくり。レトロなタイル張りで、10年を過ぎてもきれいなお風呂だ。

宿開業&DIYのアドバイス

地域の景観を守る目線も
田舎で住居を決めるとき、家屋だけでなく庭など周辺状況も重要。庭木や雑草など、自分で管理できるかを考えましょう。古民家改修のDIYは完璧を求めず、振り返らず、前進していくことがオススメです。我が家みたいな、すぐ外に出られる間取りの平屋なら、民泊開業での消防法遵守の設備が火災報知器ぐらいで済みます。

「家だけでなく周辺にも目を!」

大豊町の移住の問い合わせ 自然豊かな環境が魅力! 子育て&教育への支援もスゴイ!

高校卒業までさまざまな子育て支援を用意。保育所は給食費を含めて無償で、外国語教育も実施。小・中学校では給食費無償、制服など学校生活や勉強に必要な物品に加え各種検定料にも支給金あり。公営塾や海外研修事業、国内語学研修など、教育面でのサポートも魅力。義務教育終了後は、高校等通学援助助成(1万5000円/月)がある。

問い合わせ/産業建設課地域振興班 ☎0887-72-0453

大杉保育所。オムツの持ち帰りなしなど、保護者への心づかいのあるサポートも。

大豊学園。令和4年に大豊町中学校とおおとよ小学校が一体となって開校。生徒数111人。

「大自然や豊かな地域文化に恵まれた大豊町ならではの教育環境で子育てを!」(産業建設課 前田さん)

文・写真/大村嘉正 写真提供/安達大介さん

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