【学資保険・死亡保険・医療保険…】子育て世帯に本当に必要な保険は?[専門家監修]
保険は、住宅に次いで人生において2番目に高い買い物となる家庭も多くなっています。
毎月支払っている保険料はそれほど負担にならなくても、数十年分を合計すると1000万円を超えていることも珍しくありません。
色々とお金がかかる子育て世帯に、本当に必要な保険とはなんでしょうか?
今回は、多くの失敗を繰り返しながら投資を学び続け、純資産1億円超を達成した櫻井かすみさんの著書『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本』(Gakken)から、保険に関するお話について、一部抜粋してご紹介します。
また、櫻井かすみさんが講師を務め、11月に東京で開催されるイベントも併せてご紹介します。正しいお金の基本を学びたい方は、ぜひ参加してみてくださいね。
民間の保険は加入不要
日本の1世帯あたりの年間の生命保険料は、平均37.1万円となっています(生命保険
文化センター2021年度「生命保険に関する全国実態調査」より)。
これを30年払い続けると、約1100万円。他の保険も合計すると、もっと莫大な額になります。
年間37万円という額は、月額に換算すれば約3万円。例えば、この資金を年利5%の投
資信託で30年運用すると、将来の運用資産額は2400万円を超えます。もちろん保険と投資は、目的は全く違います。とはいえ保険こそ、目的をはき違えやすいものなのです。
本来の保険の役割は、いざという時に起こる重大事態に備えること。ところが、備えの
ために保険に加入したつもりが、逆に家計を圧迫しているような悪循環に陥っていませんか?
まさに本末転倒。「とにかく保険に入っていたら安心」この考えは捨ててください。
結論をお伝えすると、基本的な考えとして民間の保険には加入する必要はありません。
なぜなら日本に住んでいる我々は、すでに最強の公的保険に加入しているから。しかも
5つも入っているのです。
それは、ケガや病気に備える「医療保険」、労働中の事故なら「労災保険」、失業したら「雇用保険」、介護が必要になったら「介護保険」、老後には「年金保険」の5つ。世界最高水準ともいわれています。日本は国民全員が最低限の生活を送ることが憲法で定められていることも、背景としてあります。
その最強っぷりは、どれくらいなのか? 制度が充実しているのは何となく聞いたこと
がある方がほとんどかと思いますが、恐らく想像を超えているのではないかと。これが案外知られていないように思いますので、以下で解説していきます。
ただし、本書は保険がメインテーマではありませんので、「一言で言うと」くらいの簡単な復習的な説明と、案外知られていない恩恵を中心にお伝えしていきますね。
公的医療保険
公的医療保険をあらためて説明すると、病気やケガの際に頼りになるもので、自己負担
額がだいぶ軽減される制度です。住民票がない、生活保護を受けているなどの事情がない限りは、学生や無職でも入ることができます。
よく月に8万円までで済むとはいいますが、本当でしょうか。自己負担限度額は「年収約770万円までなら8万100円+(医療費 -26万7000円)×1%」となるので、8万円程度で済むのは本当です。平均年収は443万円で、最も高い55〜59歳男性の平均でも687万円なので(国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」より)、ほとんどの方が上限8万円程度となります。年収370万円以下なら、もっと下がります。
「とはいっても、年を取ると病院にお世話になることが増えそうだから不安だ……」と思う方も大丈夫です。『多数回該当』は、過去12ヶ月以内に3回以上限度額に達した方に適用されるもので、4回目からは限度額が下がり44400円になるのです(年収約770万円以下の場合)。
さらに、会社員であれば、例えば次のような手当金もあります。
傷病手当金:会社員が病気やケガで欠勤した時の生活費を補う制度
出産手当金:会社員が出産で会社を休んだ際の生活費を補う制度
雇用保険・労災保険・介護保険
「雇用保険」は、失業者や就労困難者の就職を支援するもの。失業保険の他に、育児休業給付金、教育訓練給付金などが挙げられます。財源は雇用者と雇用主が社会保険として負担するほか、国費(税金)も投入されています。ただし、加入条件に労働時間が含まれるので、パートなどでは加入しない場合もあるので注意してください。
「労災保険」は、勤務中に発生した病気やケガの医療費や、休業しないといけなくなった時の生活費を補ってくれるものです。通勤時の事故にも適用されます。労災保険は事業主が支払っているので、他の社会保険と違い、保険料の全額を事業主が負担します。ですので、個人事業主には当てはまりません。
「介護保険」とは、介護が必要になった65歳以上の高齢者や、40歳以上の特定疾患患者をサポートするためのものです。介護保険料は、40歳になった月から徴収が開始。給料をもらっている人は、健康保険料と一緒に給料から天引きされます。40歳から64歳の方は、第2号被保険者という扱いを受けます。65歳になると自動的に第1号被保険者という扱いに変わります。介護保険は、訪問サービスや入居型施設利用など、要介護認定のレベルに沿ったサービスを受けられます。要介護度や年金を含めた収入によって、負担額はサービス料全体の1割~3割と異なってきます。
年金保険
「年金保険」とはいわゆる「年金」のことで、国民全員が加入する「国民年金」、会社員や公務員が加入する「厚生年金」などがあります。国民年金では、保険料の納付義務があるのは20歳以上60歳未満の40年間(480ヶ月)と定められています。現役時代に払っておくことで、何らかの理由で働けなくなった時に受け取れるものです。
勘違いされがちですが、年金を受け取ることができるのは「老後」だけではありません。
公的年金の給付の種類は老後にもらえる「老齢年金」だけでなく、「障害年金」「遺族年
金」もあります。
「老齢年金」とは、老後を迎えた方に給付されるもので、現在の制度では原則として
65歳に達した時から給付されます。
「障害年金」とは、ケガや病気が原因で障害認定を受けた方に給付されるもの。子どもがいれば、給付額は増えます。
「遺族年金」は、亡くなった方の遺族に対して給付されるものです。
ただし、年金保険料の未納期間があると、もしもの時に受け取れない可能性もあるので、未納期間がある方は手続きをして一刻も早く追納しましょう
民間の保険は、大半の人が損するようにできている
でも、こんな声も聞こえてきそうです。「何かあった時に心配だから」「働けなくなった
場合のために……」「入院した時にお金がもらえたほうがいいんじゃない?」「がん家系だから、がん保険くらいはないと不安」などです。
しかし、はっきりと申し上げます。結論、「生命保険は全て解約!」。百歩譲ったとして
も、「養っている子どもがいる世帯主だけ、掛け捨ての死亡保険に入るだけ」で十分。
そもそも民間の保険は「保険会社が儲かる仕組みになっていること」をお伝えしておき
ます。これは当たり前の話で、儲からないと会社は存続しませんし、ボランティアではないのです。言い換えると、加入者全員をかき集めた場合、加入者側は必ずマイナスになる仕組みです。
人材や店舗など施設にかかる費用を抑えたことで保険料割安という声もあるライフネット生命も「2022年度決算説明資料」にて、粗利率が2020年度は43%、2021年度は44%、2022年度は39%(コロナ禍の影響を排除すれば46%)と発表しています。おおよそ4割の粗利を稼いでいるので、例えば加入する側は1万円を保険会社に入金すると、4000円位の管理費がかかるイメージです。
ちなみに保険商品は、販売手数料などの開示がなされていないものが多いです。特定保
険契約については、代理店に支払う手数料率の顧客への開示が行われているものもありますが、それ以外の保険は、ほとんどの代理店で手数料率の開示が行われていません。
よく考えてみてください。「安心できるから」といって、手数料がよくわからない保険
に加入をして、万が一何かが起こった時にお金が入ってくる、こんなイメージです。そして、必要経費にしては4割ほどの管理費がかかる。そのようなベールに包まれているようなシステムで、本当に安心を買うことができるのでしょうか?
保険のシステムは、カジノや宝くじの構造と似ています。宝くじは、ごくわずかな当選
した人にお金がわたる。保険は、大勢の人からお金を集めて、わずかな不幸が起きた時にお金を分配するシステム。つまり、「不幸が起こること」にお金をかけるイメージです。しかもその不幸は、発生する確率が低めのもの。ですので基本的に、大半の人が損をする仕組みになっているのです。
保険は頼るものではなく補完するもの
我々日本人は「安心が買える」を理由に、必要以上に保険に入っている人があまりにも多すぎます。一方で、保険に最低限のお金を使うことができている方は、感情ではなく、万が一何かあった時の損害が大きいかを軸に選択しています。貯蓄だけで足りない「不測の事態」に備えて加入するということです。
ですから、保険に何も入らないのは不安だという方は、貯蓄ではカバーできない「必要最低限」のものに加入するという選択をしましょう。
例えば、自分が亡くなった時の保障が心配な方は、「最低限で期間限定の掛け捨ての死亡保険1本」にするなどです。貯蓄ではカバーできないのは、子育て中で自分が一家の大黒柱の場合です。
不安なことをすべて保険に頼ってしまうと、毎月かかる保険料の負担が大きくなり生活
に支障をきたす、老後資金が用意できなくなるというように、本末転倒の結末を迎えてしまう恐れがあります。
「保険は頼るものではなく、不足する部分を補完してもらうもの」、このような関係を築くのがベターです。
11月17日(日)都内でイベントを開催します!
『新時代 お金のはなし』
あなたは、大切な家族とお金の話をしていますか? お金の話は、後送り先延ばしがいけないその理由、ご存知でしょうか?
日本では、「お金の話をするだなんて下品だ」「お金儲けははしたない」という風潮があり、家庭内ですらざっくばらんにお金の話をあまりしてこない…というようなことがありました。
一方、ようやく日本でも金融教育がスタートをし、資産運用や老後の不安などから、お金の知識の重要さに気づく人も増えてきています。
しかしながら、現状の社会全体の風潮・課題として、「金融教育=投資や資産運用の知識構築」に偏っていることに疑問の声も上がってきています。ただ単に資産を増やすだけでいいの…?社会は良くなっていくの…?
お金は生きていく上では必要不可欠、生活の支えであることは間違いありません。どんどん変化している今の時代、基本的なお金の知識はマストになってきています。
年齢問わず、子どものうちから、何事もスピード感を持って、すぐに決めること、すぐに行動すること。自分で考えること、決める機会を、常に持つこと。
そのうえでも、やっぱりお金の知識は、とても大切。「学校では教えてくれないお金と社会の本質」を理解し、家族や大切な周りの人と一緒にお金や社会について向き合っていける、そんな社会を説いていくお話をします!
●日時
2024年11月17日(日)13:00~15:00
●場所
品川シーズンテラス タワー棟3階 カンファレンスB C
東京都港区港南1丁目2番70号
JR品川駅 港南口より徒歩6分・京浜急行電鉄品川駅 高輪口より徒歩9分
●参加料
大人:3300円
(大人1人につき、子ども1人無料で参加)
子ども:1650円
※小学生以上のお子さまが参加対象となります、ご了承ください
●イベント詳細
『新時代 お金のはなし』