中学受験に必要な力
中学受験をすると決めた保護者にとって気になるのは「今、中学受験で問われる力」。私立・国立・公立中高一貫、各中学ではどんな入試が行われるか、塾は必要かなど、保護者がいちばん知りたいことを、日本初の「塾ソムリエ」として活躍する西村則康さんにお聞きしました。
【中学受験】に役立つ「親子で読みたい物語」8選 2020年度最多出題数を誇る王道作品〜最新出題まで都市部を中心に中学受験が盛り上がりを見せる昨今、「我が子の受験」について、悩んでいるという保護者の方も多いのではないでしょうか?まずは、「中学受験をする・しない」について、家族みんなでしっかりと話し合うところから始めることが大切です。そのうえで、受験をすると決めた場合、「今、中学受験で問われる力」や「中学受験にまつわる素朴な疑問」などについて、中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表で、「塾ソムリエ」として活躍する西村則康さんにお聞きしました。
2021年度から変わった 中学受験で問われる力とは?
「ここ数年で、中学受験で出題される問題の傾向も大きく変わってきました。これは、大学入試システムが、2021年度から新しく『大学入学共通テスト』に変わったことが理由です」と西村さん。
西村さんによると、出題傾向の変化により、中学受験で重視される力も変わってきたと言います。「大学入試問題と同様に、読解力や分析力などの『情報読み取り力』が重視されるようになってきました。しっかりとした基礎知識に基づき、『因果関係や物事の関連性を理解できているか』を問う問題が増加しています。
かつては、単に暗記した知識を問う問題が主流でしたが、現在は、特に理科や社会の問題においては、『なぜ、そうなるのか?』ということを答えさせるようなものが増えています」
そして、「情報読み取り力」を磨くには、「身体感覚として理解できているかどうか」が関係していると西村さんは言います。「『今、先生が話していることは、あのときに感じたことと同じだ』と、子ども自身が自分の体験と結びつけて考えられるかどうかということが重要です。それができると、『あっ、なるほど!』と納得することができる。
つまり、いろいろなものを見たり、触れたり、聞いたり、動かしたりする経験を、小さなころからたくさんすることが重要です。そうすることで、子ども自身が自分の頭で考えるようになり、『情報読み取り力』も自然と磨かれていきます」
納得できないまま先を急いでも、同じところで何度もつまずいたり、丸暗記でその場をしのぐだけになってしまったりと、悪循環に陥ってしまいかねません。そうならないためにも、親子で一緒に本を読んだり、動物や自然とふれあったり、公園で友達と思いっきり走り回ったりするなど、普段からさまざまな経験をさせてあげることが大切です。
受験できる中学校にはどんな種類があるの? どんな入試が行われるの?
中学入試は、各中学校の教育方針や地域によって異なるため、志望校の具体的な情報を得ることが大切です。
まずは、受験できる中学校の種類を、把握しておきましょう。「中学入試が行われるのは、私立中学校、国立中学校、公立中高一貫校の3種類です」と、プロ家庭教師集団「名門指導会」代表で、日本初の「塾ソムリエ」としても活躍する西村則康さん。それぞれの特徴は以下です。
【私立中学校】
中高一貫教育を行う学校が多く、学校ごとの教育方針がはっきりしていることが特徴。他の中学校にない強みを打ち出している学校も多く、個性がはっきりしています。そのため、事前に、学校がどのような子どもを育成したいと考えているのか、子どもの特性や興味に合うのかなどをきちんと調べ、知っておくことが大切です。
【国立中学校】
小中一貫校がほとんどを占めます。基本的に国立の教育系大学や教育学部の附属であり、大学の教育研究やその大学の教育実習の場として機能しています。授業料がかからないため、学費が抑えられるのが特徴です。進学を重視した教育方針ではないことが多いため、高校受験に関しては各自対策が必要となります。
【公立中高一貫校】
6年間の一貫した教育課程や学習環境の下で学ぶ機会を選択できるようにすることで、子どもたち一人ひとりの個性に応じた教育を進めることができます。その一方で、従来の公立中学校に比べて主要教科の指導時間を増やしたり、補習や補講を実施したりするなど、学習指導も充実しています。
私立中学入試では、筆記試験のほか、一部の学校では、面接や書類選考などが行われます。基本的な学力を問う筆記試験は、受験する学校によって内容が異なりますが、「首都圏にある難関校のほとんどが、国語・算数・理科・社会の4科目方式。最近は、中堅校では国語か算数だけの1科目入試や、英語だけの入試を実施するところが散見されるようになりました」(西村さん)。
一方、公立中高一貫校や国立中学校の一部では、これら学科による学力試験ではなく、適性検査や作文などによって選考を行うところも少なくありません。「適性検査では、国語や算数といった単独の科目からの出題だけでなく、複数の科目を組み合わせ『なぜそのように思うのか?』といった自分の意見を記述させる、『身体感覚として理解できているかどうか』が問われる出題が多くなっている傾向があります」(西村さん)。
志望校合格に「塾」通いが不可欠な理由
ここまでは、受験できる中学校の種類や入試の内容について、簡単に紹介しました。では、中学校を受験する場合、志望校に受かるためには、どのような対策を練ればよいのでしょうか?
「志望校に受かるためには、『塾』通いは不可欠です!」と、西村さんは言います。「小学校では『一つのことを実行すれば答えが出る』という学習が多く、基礎能力を鍛えるにはよいですが、中学受験の入試では、それをさらに発展させた問題が出題されるのが現状です。それに対応するには、やはり『塾』通いは不可欠です」
ですが、「塾」と一言で言っても、小規模塾や大手進学塾、個別指導塾など、さまざまな種類があります。我が子をどこに通わせるのがベストなのか、よく分からないという親も多いでしょう。「本気で中学受験を目指すのなら、大手進学塾を選ぶのが原則です」と西村さん。その理由として、西村さんは、「カリキュラムがしっかりしている」「幅広い志望校に対応している」の2つを上げます。
では、あまたある大手進学塾の中から、我が子にあった「塾」を選ぶには、どんなことに気を付ければよいのでしょうか? 第3回では、「塾選びのポイント」について、西村さんに詳しく教えてもらいました。
取材・文・構成/えのとまり
西村則康(にしむらのりやす)
教育専門家。中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。日本初の「塾ソムリエ」としても活躍。難関中学・高校受験指導を一筋に行う家庭教師のプロフェッショナル。男女御三家、慶應、早稲田、海城、世田谷学園、渋谷教育学園幕張、灘、洛南高附属、東大寺学園、神戸女学院など、東西の難関校に合格させた生徒は3000人以上。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『「受験で勝てる子」の育て方』(日経BP)など多数。