初挑戦でも安心の「ボートハゼ釣り」! 手ぶら&のんびり楽しむ江戸川放水路
「釣りやってみたいけれど、車も道具もないし…」そんな人にぴったりなのが、東京都心から電車で行ける江戸川放水路の「ハゼ釣り」。駅から歩いてボート店に行けるアクセスのよさと、初心者でも釣果を出しやすい環境がそろっており、まさに「電車釣行デビュー理想の地」。…というのは少々大げさかもしれませんが、「電車釣行派」にとって理想的なフィールドです!
「電車で行こう!駅近フィッシング」第2弾の今回は、私が実際に電車で訪れたボートハゼ釣りの体験をもとに、ハゼ釣りの魅力や準備のコツ、安全に楽しむためのポイントなどを紹介します。
江戸川放水路のハゼ釣り
今回訪れたのは千葉県にある「江戸川放水路」。関東の釣り人の間では名の知れた釣りスポットですが、「そもそも放水路って何?」という方のために、江戸川放水路についてかんたんに説明します。
ハゼ釣りのメッカ江戸川放水路
江戸川放水路は、1919年に江戸川の河口部を開削して作られました。名前の通り台風や大雨で江戸川の水位が上がったときに堰(せき)を開け、江戸川の水を海へと放流(放水)する役割を担っています。なので平常時は堰が閉じられていて、江戸川の水は放水路へは流れ込まず、分岐して旧江戸川へと流れていく仕組みです。
出典:写真AC
堰にはもう1つ、「潮止め」としての重要な機能があります。大潮の満潮時、堰がなければ海水が江戸川を逆流し、生活用水や工業用水の原水に塩分が混じってしまうため、それを防ぐ役割も果たしています。そのため、放水路の水は海水に近い塩分濃度となっていて、汽水域(きすいいき)ならではの環境が広がっているのです。
右奥が東京湾。ハゼのほかにキスなども釣れる
江戸川が増水して堰が開かれると、上流から流れてきた栄養豊富な土砂が放水路へと運び込まれます。この土砂が底質を豊かにしハゼが好む環境が自然と整っているため、「ハゼ釣りのメッカ(聖地)」と呼ばれるようになりました。
初心者でも気軽に挑戦できる環境
江戸川放水路は昔からハゼ釣りの人気スポットとして知られ、シーズンになると桟橋やボートから多くの釣り人が竿を出します。釣れるのはおもに「マハゼ」という種類で、体長は10~15cmほど。小型ながらもプルプルッと元気に引くので、釣り初心者さんでも「魚を釣った!」という手応えをしっかり味わえるのが魅力です。
放水路は流れも穏やかで、底は砂地が多いため根掛かりも少ないというのも安心できるポイント。川幅が広く、のびのびと釣りができるうえ、周辺にはレンタルボート店や桟橋釣り場がいくつも並んでいるので、道具を持っていなくても手ぶらで楽しめる環境が整っています。
都心から電車で1時間以内、最寄り駅(東京メトロ東西線の妙典駅)から徒歩圏内というアクセスのよさも魅力で、「釣り=車で遠出」というイメージをくつがえし、身軽に日帰りで楽しめるうってつけの釣り場といえるでしょう。
桟橋釣りとどう違う?ボート釣りの実際
ハゼ釣りなら荷物も少ない!電車釣行にピッタリ
ハゼ釣りは、数ある釣りのなかでも「軽装で行ける」のが大きな魅力。私も実際に、バッカンと小型クーラーボックスで電車に乗り、最寄りの妙典駅から徒歩でボート店に向かいました。
ライフジャケットやタックルも一応持って行きましたが、もちろんすべてレンタル可能! 荷物が多い(大きい)とほかの乗客の邪魔になるかも…と気を使うこともあるので、電車釣行の際はレンタル品を上手く使って、できるだけ身軽に出掛けたいですね。
また、電車釣行なら渋滞や駐車場探しのストレスもなし! 天気がよさそうな休日に「思い立ったら行ける」気軽さもあります。江戸川放水路にあるボート店のほとんどは駅から徒歩20分以内に位置しているので、荷物が少なければ女性1人でも楽に移動ができます。
江戸川放水路
今回お世話になったのは、江戸川放水路のハゼ釣りといえば名前が挙がる「伊藤遊船」さん。こちらの船宿は、桟橋や手漕ぎボートでのハゼ釣りだけでなく、アジやタチウオなどをねらう遊漁船も出しているので、幅広い釣りファンから人気を集めています。私も以前、マダコ釣りでお世話になったことがあります。
今回は手漕ぎボートでのハゼ釣りということで、マダコ釣りとはまたひと味違うスタイルでの釣り。のんびりと釣りを楽しませてもらいました。
伊藤遊船ポイント移動も思いのまま!ボートならではの強み
桟橋からの釣りも楽しいですが、ボートに乗ると釣りの世界がぐっと広がりますね。潮の流れが穏やかな場所や少し深くなっている場所、杭のそばなど、魚が集まるポイントを自分で探りながら釣りができるのが大きな魅力です。
桟橋だと仕掛が届く範囲に制限がありますが、ボートなら「アタリが減ってきたからポイントを変えよう」といった柔軟な動きができます。
今回使用したボートは手漕ぎタイプなので、オールを使って自分でポイントを探していけます。初心者さんでもすぐに慣れる…と言いたいところですが、人生で初めてオールを握った私にはなかなか手強く、コツをつかむまで少々時間がかかりました(笑)。
初めてのオールに手こずりました(笑)
とはいえ、「桟橋からポイントまで自力で漕ぐ」必要は実はなく、最初のポイントまではスタッフさんがエンジン付きボートでけん引してくれるので心配はご無用! そのあとも、スタッフさんが定期的に巡回してくれるので、お手洗いに行きたいときやポイントを大きく変えたいときなどはお願いすると連れて行ってくれます。
こんな感じでけん引してくれる
スタッフさんが近くにいない場合はオールを立てて掲げると、近くまで来てくれます。また、スマホから直接連絡することもできるので安心です。
さらに、万が一船酔いしてしまった場合も、乗合船と違って自分のタイミングで岸へ戻ることができるので、体調が悪くなったら我慢せず、すぐに釣りを中断できるのも嬉しいところ。こうした柔軟さが、ボート釣りならではの安心ポイントといえます。
初めてのボートハゼ釣り体験
さて、ポイントに着いたらアンカーを下ろして早速釣り開始です! 今回用意した仕掛は、胴突式とテンヤ(式)。状況に合わせて使い分けようと思っていたものの、最初に試したテンヤで順調に釣れたため、そのまま最後までテンヤ1つで通しました。予備のハリが2本付いているので、これ1つで1日楽しむことができました。
左:かんたんハゼ釣り胴突セット(ハヤブサ)、右:かんたんハゼ釣りテンヤセット(ハヤブサ)
エサのイソメは縫い刺し(通し刺し)で垂らしナシ!
受付の際、女将さんから「イソメは小さくね、チョン掛けじゃなくて縫い刺し(通し刺し)、垂らしもナシでね」とアドバイスをもらいました。釣れるハゼが全体的に小さいらしく、垂らしがあるとエサだけ取られてハリまで掛からないそうです。
最初のポイントは水深1mほど。仕掛を底まで落としたら、仕掛が底から少し浮くように竿先をちょっとだけ上げ、エサを横に動かします。そして竿先を静かに下げて「エサが底を這う」イメージで、ハゼの食いを誘いました。
ブルッ! としたアタリがあっても焦りは禁物。ハゼのサイズが小さいと聞いていたのでしっかりハリに掛かるまではじっと我慢です。ブルブルブルッ! とした連続したアタリを感じたところでクイッ! と竿先を上げてアワセます。
約10cm、この日の釣果のなかでは大きい方
すると、10cmくらいのマハゼが釣れました。久しぶりの小気味よいアタリがなんとも気持ちいい! そのあとも、コンスタントにアタリがあるものの、上手く掛けられずに水面でバラしたり、エサだけ持って行かれたりする場面もありましたが、ポイントを変えつつ最終的には70尾くらい持ち帰ることができました。
当日は私以外にも10隻ほどのボートが出ていました。2本の竿を巧みに操っているベテランさんや、大学生3人組といった方々が楽しんでおり、改めて年代問わず誰でも楽しめる釣りなんだと感じたところです。平日だったので子どもはいませんでしたが、小学生でも十分楽しめると思いますよ。
穏やかな波に揺られながら、のんびりと竿を出している時間そのものが心地よい。秋風に吹かれつつ、釣果を競うよりも純粋に釣りを楽しむ…。そんな穏やかで豊かなひとときでした。
フリーアナウンサーの松本秀夫さんも、取材でハゼ釣りを体験していました
知っておきたい!ボートハゼ釣りの注意点
安全対策(天候チェック・熱中症)
ボートに限らず、釣りで最も大切なのは安全対策。江戸川放水路は流れが穏やかで波も小さく、見た目には安心して釣りができそうな場所。しかし、放水路といえども自然の中、油断は禁物です。突然の天候変化で雨や雷に見舞われることもあるので、少しでも不安を感じたら早めに桟橋へ戻る判断が大切になります。
使用するボートは小型で軽いため、風や波の影響を受けやすいものです。とくに風が強くなってくると、気付かないうちに流されてしまうこともあります。
とはいえ、今回お世話になった「伊藤遊船」では、スタッフさんが定期的に巡回しているので、「釣りに夢中になるあまり天候の変化に気づかなかった…」という心配はありません。こうしたサポートがあるのは心強く、初心者さんでも安心してボート釣りを楽しめる理由の1つですね。
また、熱中症対策も忘れてはならない注意の1つ。ボートの上は遮るものがないので、帽子やサングラス、日焼け止めを忘れずに準備しましょう。飲み物も多めに持参し、30分おきくらいに小まめな水分補給を意識すること。釣りに夢中になるとつい休憩を忘れがちですが、こまめに身体を休めることで集中力も持続することができます。
流されない工夫とアンカーの使い方
江戸川放水路は漁をする船の行き来もあるので、「気が付いたら漁船の航路上に流されていた」なんてことにならないよう、風がなくても必ずアンカーを降ろしましょう。ほかのボート客との衝突回避のためにも重要です。
ポイントでは必ずアンカーを降ろそう
アンカーを降ろす際は、周りの荷物がアンカーロープに引っ掛かったりしないよう、予め確認しておくことも大切。風に煽られた仕掛のハリがロープに絡まってしまうと、最悪の場合タックルごとアンカーと一緒に沈んでしまうなんてこともあります。安全で快適に釣りを楽しむためにも、アンカーを降ろすときは慎重に操作しましょう。
骨までサクサク!
かんたん美味しい「ハゼの唐揚げ」
釣りを終えて自宅に戻ったら、いよいよお楽しみの実食タイム! 自分で釣った魚を料理して食べるのも、釣りの醍醐味の1つです。
今回、釣れたハゼは「唐揚げ」にしていただくことにしました。もう少し大きいハゼであれば、開いて天ぷらにするつもりでしたが、小さめが多かったので頭と内臓を取ってカリっと丸揚げにすることに。
ビニール袋に小麦粉とハゼを入れてシャカシャカして、170℃の油で揚げるだけ! 3分ほどじっくり揚げたので骨ごといけちゃいました!
ハゼの唐揚げ。お好みで塩をパラリ
調理のコツとしては、まず、ハゼの下処理の際に表面の汚れやヌメリを落とすことから。このとき便利なのがストッキングタイプの水切りネットなんですが、ネットの中にハゼを入れて軽く揉むだけでOK! 洗っている途中でハゼがシンクの中に散らばることもなく、また、ネットの繊維が柔らかいタワシのような役割をしてくれるので、ヌメリもキレイに落とせます。
そして、ウロコを取るときはペットボトルのキャップが大活躍! アジやキスをさばくときに使うウロコ取りだと、大き過ぎて使いにくく指をケガする恐れもありますが、ペットボトルのキャップなら安全キレイにウロコを取ることができるのでおススメです。
江戸川放水路のボートハゼ釣りは、車がなくても気軽に出かけられる電車で行ける釣りスポット。レンタル品も充実しているので道具がなくても始められますし、釣り方もシンプル。そして何より美味い! 駅から歩いてボートに乗り、東京湾の風を感じながらのんびり魚を釣る…そんな1日を気軽に楽しむことができます。
安全に気を付けながら、気軽な「電車ハゼ釣り」でのんびりした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。